注意事項
本HPは「統合医療」に関して、その概念および実際を紹介することを目的とするものであり、個別の疾患や診療内容の相談には応じかねます。また、内容に関しても、実際に個人の判断で適応した際のあらゆる責任は負いかねます。実際の診療に関する事項は、医師にご相談の上、施行されることをお勧めします。
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2010年02月06日

「主食を抜けば糖尿病は良くなる」講演会のお知らせ

江部康二先生のご講演のおしらせ

本年3月13日に京都・高雄病院理事長の江部康二先生をお招きして、糖質制限食に関する講演会を開催します。

糖質制限について興味はあるけど本当に大丈夫なの?糖尿病治療に本当に有効なの?など様々な疑問についてお答えしていただきます。ダイエット目的の方にもうってつけです。この機会にぜひご参加ください。


2010年3月13日(土曜日)
18:00〜19:00「統合医療における糖質制限食の可能性」(小池弘人)
19:00〜20:30「主食を抜けば糖尿病は良くなる」(江部康二先生)
場所:ベルサール飯田橋


我ら糖尿人、元気なのには理由(ワケ)がある。 ――現代病を治す糖質制限食










限定50名ですので早めにご予約ください。(お問い合わせは03−3357−0105まで)

2010年02月01日

代替医療各論4

雨が遅くなると、雪に変わってくるそうです。明日の朝は寒いのですかね。電車がおくれなければいいなあ、と今日のうちから心配です。

それでは第4回目 世界の伝統療法についてです。どうぞ。

世界の伝統医学

以前は伝統医学といっても漢方や鍼灸しか思い浮かばなかった方も多かったでしょうが、最近は美容・ダイエットの分野からインドの伝統医学である「アーユルヴェーダ」などが注目されており、今後いろいろなところで目にする機会も増えてくることでしょう。

 それでは、伝統医学とはどのようなものを言うのでしょうか。民間療法的なものもすべて含まれてしまうのでしょうか。一般に伝統医学という場合は、近世以前から用いられていた医療体系で独自の生理体系・病理体系を有した医療と言えるでしょう。具体的には中国伝統医学、インドの伝統医学であるアーユルヴェーダ、アラビアの伝統医学であるユナニ医学といった三大伝統医学をさすことが多く、チベット医学を入れて四大伝統医学とすることもあります。これらの医学は、決して過去の遺物ではなく、現在も世界中の多くの人たちの健康を守る具体的な方法であり、世界保健機構(WHO)でも1978年アルマ・アタ宣言にてプライマリー・ヘルス・ケアの理念を打ち出す中で、各国の伝統医学の重要性を提言しているのです。それではそうした伝統医学の代表例を見ていきましょう。

 

(1)中国伝統医学

 大まかな流れは漢方医学の項で解説したので詳細は省きますが、漢方、鍼灸に加えて、気功やマッサージ(推拿)などの方法論を陰陽・五行論に基づいて体系化したものと言えます。東アジア全般に、それぞれの土地に適応する形で展開し、韓国では「韓医学」、日本では「漢方医学」となって今日に至ります。したがって中国伝統医学と漢方医学とは、厳密には同一のものではないことになります。

 

(2)インドの伝統医学・アーユルヴェーダ

 アーユルヴェーダとは、アーユス(生命)とヴェーダ(科学・真理)の合成語で、言ってみれば「生命科学」とも訳せるものです。伝統医学のなかでは最古の部類といえ、その起源は紀元前6000年頃と言われています。アーユルヴェーダは、生体における様々な反応を、三つの機能「トリ・ドーシャ」で説明する独自の生命観を持っています。トリ・ドーシャはヴァータ、ピッタ、カファ、の3種類に分類されます。ヴァータは、空と風により成り、運動・循環・蠕動のエネルギーにあたります。次にピッタは、火と水により成り、変換・消化・代謝のエネルギーとされます。最後にカファは、水と土により成り、結合・分泌・構造維持のエネルギーとされます。各人の体質は、これら三要素の配分により決定され、そのバランスが健康を左右すると考えるわけです。

 また、アーユルヴェーダは内科的な面のみならず、外科的な面でも大きく発展しており、12世紀に著されたアーユルヴェーダの教本では、白内障・痔・ヘルニアの治療や美容形成手術、腎臓・胆石摘出手術の技術についての記載まであります。伝統医学を何か、未開の医療のように感じていた方には驚きでしょう。

 

チベットの伝統医学

 チベット伝統医学は、アーユルヴェーダの基礎概念に基づいており、中国医学的な薬草・鍼灸も併用する、伝統医学の中では最も新しいものといえます。つまり、チベットの地理的な影響により、中国伝統医学、アーユルヴェーダ、そして次に述べるユナニ医学が、チベット仏教を精神的基盤として、統合されたものといえるでしょう。また、この医学の特徴的な診断法に「尿診」があります。三大伝統医学の統合として、今後更なる研究が進むことが期待されます。

 

アラビアの伝統医学・ユナニ医学

 ユナニ医学とは「ギリシャ風の医学」を意味し、ヒポクラテスやガレノスに代表されるギリシャ医学を基本に、アーユルヴェーダやメソポタミアの医学などを包括したものといえます。またイスラム世界に形成されたことから、その精神的側面をイスラム教により補完されているとみることもできるでしょう。今日でも、イスラム世界の健康を担う重要な医学体系で、ユナニ医学の大学もあります。

 また、ユナニ医学には医学にとって、その他にも重要な役割があります。中世においてヨーロッパの伝統医学を継承し、現代西洋医学へとつなげていったという役割です。ユナニ医学における名医イブン・スィーナによる著書「医学典範」は、実に17世紀に至るまでヨーロッパの医学校で教科書として使用されていたものなのです。これにより現代西洋医学の、専門別診療方式や、臨床・基礎医学の分類法などが形成されたといいます。

 私たちは知らなければ、現代西洋医学と伝統医学とを、つい対立する構図のように捉えてしまうことがあります。しかし、このユナニ医学を見ることにより、アーユルヴェーダから現代西洋医学への、途切れることのない流れを知ることができるのです。

 


2010年01月28日

代替医療各論3

鍼1本で病気がよくなる鍼1本で病気がよくなる
著者:藤本 蓮風
販売元:PHP研究所
発売日:2009-11-26
おすすめ度:5.0
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今日は少し暖かく感じた一日でした。が、体調崩している方も多いようなきがします。皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

加えておすすめ本を一冊ご紹介しました。実際に1本の鍼で治療される藤本蓮風先生の本です。鍼に興味をもたれた方は是非どうぞ。

それでは第3回目です。鍼灸についての解説をしていきます。

鍼灸

鍼は名前は有名でも、意外と実態を知られていない代替医療の代表とも言えるでしょう。「そんなことはない」とおっしゃる方は、どこかでご自分が体験された方に違いありません。もしくは、家人に利用者がいたのかもしれません。つまり、知っている人にとっては当たり前でも、まったく知らないという人がかなり多いというのが鍼灸の現実だと思います。実際、私のクリニックで鍼をしている人の多くがこれまで、鍼を知ってはいたが、受けたことが無かったという人です。なんとなく怖い、というのがこれまでしなった理由の多くです。

「鍼は注射より痛くないの?」という質問をよく聞きます。鍼の太さは、日本式や中国式などのいわゆる流派や術者によって様々ですが、いわゆる注射針の方が太くなっています。注射が、液体を注入・採取することが目的であることを考えれば、当たり前です。よって一般に注射より痛くないというより、痛みはほとんど感じないというのが通常です。

 

では、注射ならば、血管や皮下組織など刺す場所が解剖学的にはっきりしていますが、鍼の場合はどうでしょうか。ここで一番の議論となることが多い「ツボ(経穴)」「経絡」の登場です。人体の中の気の通り道が経絡で、ツボはその経絡上に位置する点となります。ツボの位置は人形などでも、示されているのだから、解剖学的にわかっているものと思っている方も多いのではないでしょうか。しかし、厳密にはツボは現代医学では解明されていないものなのです。つまり、存在は広く認められているもの、科学的に検証、特定されているわけではないのです。しかし、様々な研究はなされており、生理学的には電気抵抗の違いなどの特徴は解明されています。過去には、ツボや経絡の解剖学的構造を特定した、というような報告がなされたこともありますが、現在は、このときの結果は否定されています。つまり、現代医学でも未だ解決されていない問題の一つなのです。

 

では科学的に証明されていないから、存在しないものなのでしょうか。一概にそうとは言えません。実際に、このツボや経絡を用いた鍼は効果があることは、エビデンスとしても示されていますし、わが国における鍼灸治療の広がりをみれば、効果があることは明らかです。特に鍼のエビデンスについては、蓄積されつつある状況で、偽の鍼や、その他の治療法との比較において有効性の認められたものとしては、腰痛・背部痛、歯痛、頭痛、変形性膝関節症など整形外科的疾患が挙げられます。また、リウマチ性疾患や薬物依存、線維筋痛症、ターミナルケアにおける疼痛などにおいても、さらなる検討が必要とされながらも有望視されています。

鍼というと、経絡の考えに基づいた民間療法のように考えていた方には、EBMの観点からの評価は意外に感じられたのではないでしょうか。またさらには「灸」もあわせて、鍼灸はいわゆる筋・骨格を中心にした整形外科的症状のみならず、内科的な疾患まで効果を及ぼすことも理解されるかと思います。また鍼灸には、これまでの体質を改善する変調効果もあるといわれています。鍼灸治療を継続する中で、少しずつ不調になりにくい体調になっていくという効果です。またお灸は、温熱効果もあわせてセルフケアには欠かせない治療法で、鍼との相性も非常に良い方法といえます。上手にセルフケアに取り入れている方も多いのではないでしょうか。


2010年01月26日

代替医療各論2

それでは代替医療各論の2回目です。

2回目のテーマは「漢方薬」について。すでにご存知の方も多いかと思いますが意外と誤解されている方も多いかもしれません・・・どうぞ。

漢方薬

 皆さんは、漢方薬と聞いて、どのようなものをイメージするでしょうか。「苦い、おいしくない」「風邪のとき葛根湯なら飲んだことがある」「粉の薬」といったイメージでしょうか。味に関しては、確かに自然の薬草由来のものですから苦いものもありますし、おいしくないこともあるでしょう。また、飲んだことのあるものとしては、やはり葛根湯が一番多いのではないでしょうか。そして飲んだ葛根湯は「粉の薬」だったのではないでしょうか。これは「エキス剤」と呼ばれているもので、漢方生薬そのものではなく、それらを煎じた液体をフリーズドライしたようなものです。分かりやすくコーヒーでいえば、インスタントコーヒーのようなものです。つまり、自然の生薬を細かく刻んでできた粉ではなく、それを煎じて乾燥させて加工したものだったのです。そのため加工物の違いにより、顆粒状のものから粉末状のものまで、見た目が異なるのです。医療用漢方として病院などで処方されるものが、エキス剤なので、今や漢方といえば粉薬というイメージになったのでしょう。

 

 それでは、そもそも漢方薬とはどういうものなのでしょうか。それは、いくつかの生薬を小さく刻んだものを混ぜ、土鍋に入れて、とろ火で煎じた液体が、主なものです。これを湯液と呼びます。湯液を実際に煎じてみると分かるのですが、手間もかかりますし、部屋中に匂いも広がります。こうしたことから敬遠する人がいるのも事実で、エキス剤が一般にうける理由もここにあるでしょう。しかし、考えようによってはこれも悪いことばかりではありません。まず、匂いが広がることに関しては、いわゆる生薬の芳香成分に包まれるわけであり、一種のアロマセラピーともいえるわけです。また、手間についても、自分の癒しのために、それだけの時間を作るということ自体、自らの治ろうとする力を引き出すことにもなるからです。

 

 それでは、実際の効能としてはエキス剤と湯薬の、どちらに軍配が上がるのでしょうか。処方する医師・薬剤師の立場からではなく、処方される患者さんの側から考えてみます。まず、簡便性からみれば圧倒的にエキス剤といえます。次に飲みやすさですが、一般的に、粉として服用した場合はエキス剤が飲みやすいといえそうです。しかし湯薬の場合、液体であり、味をおいしく感じられれば、かえってこちらの方が飲みやすいという方も少なくありません。またエキス剤を溶かした場合、溶け残りが出ることもあり、飲みやすさという観点では、一概にどちらが良いということはなさそうです。また、旅行などの携帯を考えた場合、湯液では旅先で煎じなければならないのですから、エキス剤が便利であるのは言うまでもありません。

では、最も重要な効能についてはどうでしょうか。エキス剤の大きな利点の一つに、エキスを構成する生薬の品質などの条件が一定しているという点があげられます。つまり、実際に煎じる湯液の場合には、自然のものである生薬の品質、保管状態など様々な要因が絡んできます。つまり同じ名前の処方であっても常に同じ効能を期待できるとは限らないのです。この点が近年のエビデンス重視の医療の中では、漢方のエビデンス構築の観点で、エキス剤の重要な点といえるでしょう。

 

それでは、エビデンス重視の中で、すべてエキス剤になってしまっていいのでしょうか。現代の医療を考えるとき、エビデンスの重視もさることながら、一方でオーダーメード医療も重視されています。つまり、一人一人の体質は異なっているわけですから、薬も個人の体質によってオーダーメードであるべきだ、という考えです。こうしたオーダーメードをより具体化できるのが、湯液なのです。煎じる前の生薬の分量を調節(これを「加減」といいます)することができるからです。例えば、便秘気味の体質に対して漢方薬を飲んでいるとして、便秘に効果のある生薬である大黄が1gではあまり効果的ではないが、3gだと非常に効果的だ、という人がいるとします。しかし、ある人にとっては大黄3gでは、おなかも痛くなるし、かえって便がゆるくなるという人もいて、この人には1gが適量であるかもしれません。このように、ある処方の範囲内で加減をすることができるのが湯液の利点といえるのです。

 

では、オーダーメードの観点から、湯液は良い所ばかりなのでしょうか。そうとばかりはいえません。効果的な生薬の加減ができる反面、使用する生薬の品質に効果が左右されるという面もあるのです。つまり、良質の生薬を使用すれば高い効果を得られるし、そうでないものであれば、期待される効果を得られないかもしれないのです。つまり処方する医師・薬剤師の生薬を選ぶ鑑定能力にかかっているのです。だから、漢方の湯液であれば、なんでもよく効くというわけにはいきません。そのためには、信頼できる、漢方に詳しい医師・薬剤師に処方してもらわなければなりません。ハーブやアロマセラピーの精油を用いるときも同様ですが、天然の植物由来のものを使うときは、やはりその選択に我々は細心の注意を払うべきなのです。

 

化学物質である現代薬と比べ、代替医療領域である天然の植物などを用いた漢方薬やハーブは、その効果が一定しないという批判をされます。しかし、それはオーダーメード性と裏腹の要因でもあり、うまく利用することができれば、利点にもなりうるのです。つまり代替医療は一般に「考える自覚的な利用者」にやさしいのです。漢方が効く、効かないという前に、効く漢方(を処方してくれる医師・薬剤師)を、しっかりとした選択眼をもって探すことも重要なのです。

 


2010年01月23日

代替医療各論1

これから代替医療についての解説をすこしづつしていこうかと思います。
これまで看護雑誌などに連載したものを少し書き換えてあります。
全部まとめて読まれたい方は、HPの「医療従事者の方へ」のところからPDFに入れますのでそちらもどうぞ。

お知らせ:3月13日の糖質制限食の講座の申し込みを開始しました。クリニックへ直接お電話での予約となっております。お早めにどうぞ。詳しいお知らせはHPをご覧ください。

まずは漢方についての解説をしていきます。

漢方医学理論

 世界には様々な伝統医学が多数存在します。それらはそれぞれに独自の理論をもった医学ですが、伝統医学としての共通点も持っています。例えば生体を考えるにあたり、どのような要素から成り立っているのか、という点です。わが国における漢方医学の解説書の多くには「気」「血」「水」の三要素からなると書かれています。また、中国医学(中医学)系では「気」「血」「津液」です。実態として理解しやすい「血」「水」などの液体はいいとして、現代医学から理解されにくい概念が「気」ではないでしょうか。そしてこれこそが、洋の東西を問わず、伝統医学に共通する概念ともいえるのです。「プラーナ」「バイタルフォース」などといったものが同様の概念といえるでしょう。つまりこれらの伝統医学は、その根本に何らかの生命エネルギーを仮定しているのです。病気の根本原因(病原菌や遺伝子異常等)は何か、と問う現代医療と、これらの伝統医療とが大きく異なって見える最大の要因は、この生命エネルギーを体系として考慮しているか否かが大きな理由でしょう。そう考えると、様々な種類の伝統医学は存在しますが、それらには共通する点があると言えそうです。つまり、漢方理論を理解することは、ただ単に東洋の「日本」における漢方理論を理解するだけではなく、伝統医療の基本を理解することにもなるわけです。

 それでは、わが国における一般的な東洋医学である漢方医学の理論をみていくことにしましょう。まず、生体を含めた自然界一般を二つの概念である「陰陽」に分けて考えます。ここで重要なのは、「陰」と「陽」のどちらが良い悪い、または上下という関係ではない、ということです。相互的な関係なのです。天(陽)に対して地(陰)があり、男(陽)に対して女(陰)があるわけです。優劣ではありません。生体の構成要素についてもエネルギーである気(陽)に対して液体成分(陰)があります。そしてこの液体成分のうち、赤色の液体を「血」と呼び、無色の液体を「水」と呼ぶわけです。これが生体を構成する三要素になるわけです。

 これら「気」「血」「水」の三要素すべてが、最適な量で、良い流れを保ち、偏りなく存在している状態を健康というわけです。そして、量が不足していたり、流れが悪かったり、偏って存在していたりした場合、それを生薬によって是正しようとすれば漢方薬であり、鍼や熱などの刺激で是正しようとすれば鍼灸となるわけです。そしてこれら三要素が機能する場が「五臓」です。

 五臓とは、肝・心・脾・肺・腎の五つの内臓を示しています。しかしいわゆる解剖学的な臓器とは完全に一致する概念ではありません。精神的な働きまでも含んでいるのです。例えば、肝であれば怒り、心であれば喜び、脾であれば悩み、肺であれば悲しみ、腎であれば恐れ、といった具合です。すべて脳の機能ではないか、といって批判する人もいるかもしれません。また、古い時代の産物なのだから訂正すべきではないか、という乱暴な意見も出るかもしれません。しかし、こうした捉え方こそ東洋医学の心身一如の基礎となるものであり、こうした考え方なくして、しっかりとした漢方薬処方や鍼灸治療は不可能なのです。時にこうした伝統医学的発想に目を向けることも、我々医療従事者にとっては大切なことなのかもしれません。

 次は、身体全体として病気になったときに、どのような反応をするかを、一種のステージとしてみる「六病位」の見方について説明します。文字通り生体の反応を6つの病期にわけたもので、発熱を認める3つの「陽病期」と、元気のなくなる3つの「陰病期」とに大別されます。6つの各ステージは必ずしも順序どおりに進展するものではなく、「陽病期」を経過せずに「陰病期」から開始することもあります。また急性疾患のみならず、慢性疾患においてもこの考え方は適応されます。それでは、この概念の特徴は何なのでしょうか。一言で言うと、病気と生体との関連において、現代西洋医学では原因を含む「病気」の側に着目します。どのような細菌やウイルスに感染したのか、という視点です。これに対して六病位の視点は、原因は何であっても、それに対して反応している「生体」の側に着目しています。とくに原因については言及していないのです。こうした考えは近年、病因論に対抗して注目されている健康生成論の考えにも一脈通じるものがあります。病気との関係においてどのようであろうとも、生体の健康な側面に着目していこうとする健康生成論的視点と共通点をもつということは、病因を特定する検査技術のない時代に生まれた伝統医療としては当然のことといえるのかもしれません。