2006年07月24日

サプリメント総論

 代替医療の中でもとりわけ、現在われわれ日本人になじみあるものといえば、サプリメントであろう。サプリメントとは本来、補充するという意味で、日常の体に必要な成分を補完するもの、ということになる。いわゆる一般に健康補助食品、栄養補助食品と称されるものである。したがって、あくまでもしっかりとした食事が前提としてあり、それを補助するという役割になるわけである。

よって、サプリメントのみに依存する食事では、健康上大きな問題となりうる。だからこそサプリメントとの良い関係が、これまでになく求められていると言えよう。そのためには、他のサプリメントや医薬品との相互作用にも注意する必要がある。サプリメントには医薬品と同じまたは類似する成分が含まれることもあり、相互作用を及ぼす可能性は十分に考えられる。相互作用において報告例があるものをいくつかあげると、セントジョーンズワートによるジゴキシン、ワ―ファリン、テオフィリンなどの薬物の減弱効果、イチョウ葉エキス服用による抗血小板薬、抗血液凝固薬内服時の出血傾向亢進の可能性など、重要なものも少なくない。

 サプリメントは、広く代替医療の範疇に入るものであるが、代替医療利用率は米国においては国民の50%近くにおよび、その費用は総医療費の50%を超えると言われる。ここまでの影響を持つに至った背景は、現代の健康意識の高さと無関係ではないと考えられ、これがサプリメントの急速な成長の背景にある。しかし、そればかりが原因とは言えない。米国においてサプリメントは1994DSHEADietary Supplement Health and Education Act)法により「ハーブ、ビタミン、ミネラル、アミノ酸等の栄養素を1種類以上含む食事を補助する製品」として定義された。そしてこのDSHEA法により効能効果の表示が可能になったのである。結果、米国において2兆円を超える市場を形成するに至った。しかしこの法律には、安全性についての販売責任が会社側にないなどの問題点も指摘されている。

こうした米国での流れを受けて、わが国においても今日の広がりに至ったわけだが、これをただ闇雲に否定するという立場は好ましくない。一人一人のセルフケア意識を高め、健康生成のサポートをしていくには、サプリメントは重要な役割を持つものだからである。ただし、医療従事者として、テレビの健康情報番組などの様々な情報を無批判に受け入れることは避けなければならない。しかし、こうした情報が氾濫する背景には、前述したように国民の健康意識の高まりがあることを無視してはならない。だからこそ我々医療者は、その高まりを萎えさせることなく、健康生成を積極的にサポートする方向へ導く必要がある。

こうしたことはサプリメントについてのみならず、代替医療全般に対しても言えることである。本来の治療を妨げる場合、明らかに医学的に不適切である場合、経済的に支障になっている場合などを除いては、必ずしも十分なエビデンスがなくても、あからさまな否定はせず、容認することも必要であろう。現代医療とサプリメントをはじめとした代替医療との理想的な関係の形成から、さらなる「統合医療」の発展に期待したい。