2006年10月06日
統合医療と工学(医工学)の将来
統合医療と工学の今後の関係性について少し述べてみたい。一見何の関係もないような統合医療と工学との関係であるが、現代医療の中で、統合医療が実際に発展していくには、今後、さらに注目されるべき関係ではある。ここでは検査測定ならびに治療という観点から少し私見を述べたい。
統合医療分野における医工学の役割には大きく分けて2つの領域があると考える。一つは狭い意味での治療分野である。様々な機器を用いて、生体への何らかの刺激を与えるものである。温度や磁気などである。機器から個人の身体への作用とも言え、これは通常、保健医療機関で実施されているものを除くあらゆるものが含まれる。なんらかの刺激が加えられればいいのである。
そして、もう一つは検査測定分野で、これは広義の治療分野ともいえる。単なる生体の新知見を学問的価値だけで検査測定するのであれば(つまり学問的に)、これに当たらないが、この場合は測定結果を被検者(患者)にフィードバックするものをここでは想定している。このフィードバックにより、被検者は自分の身体に関する新たな情報を得、これをリソースとして、健康生成の糧とすることができる。つまり、機器から、個人の認知システムを経て、その身体へ作用すると言えよう。簡単にいえば、データを見て反省し、生活習慣を改善する、ということである。生活レベルでのバイオフィードバックともいえなくもない。
例えば、アニマルセラピーにおいて、ペットとのふれあいが良いのは言うまでもない。これに臨床生理学的手法である心拍変動解析を用いて自律神経の観点から評価することで、科学的効果を認識することができれば、その後のセラピーの効果向上が期待される。数字にでるとやる気もでるものである。
またアロマセラピーのトリートメント効果なども同様である。こうした様々な治療(セラピー)はその評価方法を得て、より心身両面より効果を及ぼすと考えられる。また、こうした考えを発展させると、必ずしも代替医療的治療を用いた場合でなくてもいいことになる。各自の適切であると思うライフスタイルの良いモニターにもなるのである。つまり、何か(治療)を与える従来の診療形態を超えて、測定評価する中で、アドバイスのみを与え、適正な健康生成の姿勢へ向かわせることができるわけである。これこそ自発的治癒を目標とする統合医療の目指すところと一致する。
これらに対して、従来の人間ドックや検査測定項目と相違ないのではないか、という反論もあるだろう。その大きな相違点としては、従来の検査はいわゆる「異常」を発見することが主な目的であった。検査における精度の上昇は、いわゆる「診断」の付かない状態を増やすことにもなりかねない。一方、代替医療的介入を評価する場合、それではあまり有効ではない。ここでは、わずかな差異が反映される検査形式が望ましい。その分、厳密性や再現性が若干、犠牲になることもあるかもしれない。しかし、こうしたニーズはテレビの健康番組を例に挙げるまでもなく、きわめて高い。この領域は、また統合医療それ自体とも若干趣をことにすることもあるが、今後見逃せない分野である。こうしたニーズに対して、様々な医工学的手法により、たくさんの視点が提供されるのが望まれるわけである。近年の様々な機器の開発はまさにこうした実際的な指導と表裏一体であり、技術発展・開発のみならず、統合医療的な考えを基盤にした、健康生成的臨床が不可欠である。解釈という視点が統合医療と医工学接点において今後ますます重要になっていくことを指摘しておきたい。