2007年04月10日

世界の伝統医療(5)

 それでは今回はインドの西方の代表的伝統医学をご紹介します。アラビア伝統医学である、ユナニ医学とは「ギリシャ風の医学」を意味し、ヒポクラテスやガレノスに代表されるギリシャ医学を基本に、アーユルヴェーダやメソポタミアの古医学などを包括したものといえます。そうした意味では、東西伝統医療における初の統合医療とも言えるかもしれません。

 またカバーする地域が、イスラム世界において形成されたことから、その精神的側面をイスラム教により補完されているとみることもできるでしょう。今日でも、イスラム世界の健康を担う重要な医学体系で、ユナニ医学の大学もあり、この地域の保健を担う現役の医学体系でもあります。

 また、ユナニ医学には医学にとって、その他にも重要な役割があります。中世においてヨーロッパの伝統医学を継承し、現代西洋医学へとつなげていったという役割です。ヒポクラテスに代表されるギリシア医学は、一足飛びに近代西洋医学へつながるのではなく、間にユナニ医学を経過してヨーロッパへ伝わってきたのです。

 

 ユナニ医学における名医イブン・スィーナによる著書「医学典範」は、実に17世紀に至るまでヨーロッパの医学校で教科書として使用されていたものなのです。これにより現代西洋医学の、専門別診療方式や、臨床・基礎医学の分類法などが形成されたといいます。つまり現代西洋医学の祖にあたるともいえるのです。

 

 私たちは知らなければ、現代西洋医学と伝統医学とを、つい対立する構図のように捉えてしまうことがあります。しかし、このユナニ医学を見ることにより、アーユルヴェーダから現代西洋医学への、途切れることのない流れを知ることができるのです。世界の医学史において、ユナニ医学の重要性はこうしたところにもあるのです。

 

 それでは次回は、4大伝統医学最後のチベット医学へとうつります。ペルシャ、インド、中国の伝統医学を統合したもっとも新しい伝統医療です。

 



tougouiryo at 00:30│Comments(0)統合医療あれこれ 

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