2016年12月13日
多様な療法との付き合い方(3)
今回は、統合医療というと、CAMを行うことと同じことだと考える方(いわゆる学会の専門家であっても)が依然として多い中で、そこには否定的な側面もあるのだという議論です。
3.統合医療は補完医療に対して否定的側面も有する
このように述べると、補完医療を加えて地域連携を考慮することの必要性はなんとなく理解されるかもしれません。しかし、やはりエビデンスの確立していない(つまり一部の医師にとってはインチキとも思える)補完医療を、医療という枠で考慮する必要が本当にあるのだろうか、と思われるでしょう。
そこで統合医療という概念に再度立ち戻って考えてみます。統合医療とは前述したように、現代医療に加えて補完医療を扱う概念ですが、それは必ずしも(補完医療に対して)肯定的側面からのみではありません。時にその危険性を指摘して、当該の療法の中止を促すといった患者さんの保護を目的とした側面も有します。いわば否定的側面もあるのです。
つまり医師として補完医療一般について一定の知識をもつことにより、その危険性を知ることも出来ると考えるわけです。逆に全くの無知・無関心であれば「私は知らないからご自由にどうぞ」といった態度表明とともに、結果として患者さんを危険にさらすことにもなりかねません。そうした意味でもある一定の関心をもって(当然、批判的精神をもって)広く補完医療に向き合うことの大切さもあるということなのです。
そしてこうした真摯な姿勢に基づいて、明らかに危険性があると判断される場合、又は経済的なデメリットなども考慮して、中止の方向へと進むことも重要なのです。つまり極言すれば、この否定的側面の強調こそ現代医療における「統合医療」といった概念の必要性と言っても過言ではないのです。そのためにも一定の補完療法に関する理解が必要であり、その基底をなすのが、広義の多職種連携ともいえるのです。
それではこうした多様な療法とのつきあい方のポイントは何なのでしょうか。米国における統合医療の拠点の一つであるアリゾナ大学における臨床の在り方から考えてみましょう。