2016年12月15日

多様な療法との付き合い方(5)

いよいよジャングルカンファレンスについての解説です。どうぞ!

 5.ジャングルカンファレンス

 

 筆者は2008年から自院にて、2か月に1度のペースで補完医療の治療者を中心とした医療従事者を集め、統合医療カンファレンスを開催してきました。そして2015年にはこれを母体に、「一般社団法人統合医療カンファレンス協会」を設立し、広く治療家に呼びかけ、あらゆる医療従事者が自由に参加できる「ジャングルカンファレンス」を定期開催しています。

このカンファレンスは、症例を中心としたいわゆる臨床的な「問題」を、3040名ほどの参加者とともに自由に意見を述べながら考えるという形式です。様々な補完医療の職種から参加されているので、参加者相互に各々の用いる専門用語を解説しながら、つまり一定の「相互了解」を確認しながら意見を交換していくことになります。参加者は毎回異なりますが、内科医・外科医や看護師をはじめ、栄養士・臨床心理士・鍼灸師・整体師・気功師・ヨーガ療法士・アロマセラピスト等、実に多職種となるので相互了解が特に重要となるのです。

通常、医師がイメージするカンファレンスであれば、唯一の正解とも言える「診断」へ帰結するものですが、ここでは多様な職種の参加する多元的な立場で進行するため、唯一の結論へは至らないことも少なくありません。つまり、ここでは結果を得ることを目的としていないことになります。

このカンファレンスでは、多くの医療者が共通して抱くであろう疑問を「問題」として定式化し、様々な意見を併置させた上で参加者が「相互了解」をしていきます。結論が出なければ、臨床上有効ではないとする意見もあるでしょうが、これは一施設における(いわば通常の)カンファレンスではないため、当然その結論に拘束力はありません。つまり各々が自施設において最終的に決断することになるわけですから、無理にその場で結論を出すこともないのです。

では実際にはどのようなものなのか、以下にジャングルカンファレンスにおけるルールとして掲げている注意点をいくつか述べます。

 

・基本的にはあらゆる人の発言がしやすいように、「多元主義」の立場から会を進行します。

・一方で明らかに医療的、倫理的に問題がある場合は、その場で指摘し、方向を修正します。

・発言に際しては「〜〜分野では、〜〜と考えます」「私の考えでは〜〜です」といった形式をとります。

・各々の症例へのコメントとしては、なるべく(どのような所見)があるので、(どういう状態)が考えられる、という発言形式をとるようにします。

・「〜〜だから〜〜だ」という一方的な打ち負かし型にはしないようにします。

・あくまでも各々の臨床実践のためであることを認識し、衒学的な議論に陥らないように注意します。

・臨床に直結するよう、効果を第一に考える思想である「プラグマティズム」を基本姿勢とします3)

 

 以上のような「多元的な構え」を各々が意識しながらカンファレンスが進行します。全体としては参加者の発言が一人に集中しないよう、ファシリテーターが注意しながら発言を促すことも重要です。とりわけ医師が関係する場合、現代医療的視点から問題がないか、というチェック機能は極めて重要になります。

 



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