2016年12月22日
多様な療法との付き合い方(6)
今後も多くの議論を巻き起こすであろう概念ですが、じつは非常に明瞭で、素直に受け取れば難解な概念ではないのです。
これについては今月発刊の「鍼灸OSAKA」 においても論じております。ご興味ある方はこちらもどうぞ。
6.多元的であること
こうしたカンファレンスから治療家との関係性を考慮することは「医療従事者−患者さん」といった従来の軸とはまた異なる、第三極を考慮することにもなります。つまり多職種連携における新基軸ということもできるでしょう。また、これにより地域医療へも新たなアプローチをかけることも可能になります。例えば広く医療に関心をもつ地域の治療家を、現代医療的安全性を担保した形で、地域医療や保健に取り込むことが可能になります。そうした際に医師がリーダーシップをとって彼らをコーディネートする必要があり、ここで示した「多元的な構え」が応用できるのではないでしょうか。
つまり、このカンファレンスは一元的な通常の学術的カンファレンスと異なり、多元的であることから、その目的は結論を得るということより、広く医療従事者にとって学習の場であるとともに、相互了解の上での連携を強めることにもなるのです。これは多職種連携の思想的基盤が多元主義であることから明白です。
ここで注意したいのは、多元的な立場とは、すべてのものは相対的だから正しい答えなど何もないということではありません。ましてや、エビデンス至上主義との混同や、コーディネートの有無等の問題として議論することは全くの誤解・曲解という他ありません。
多元の意味するところは、「真なるもの」といった一元的かつ教条的な発想ではなく(「真」という一元的な発想は常に対立を生じ、実際の連携の妨げになることは言うまでもありません)あらゆる可能性を認めることであり、独我的な発想とは峻別されるべきものであることを忘れてはなりません。
しかし、臨床場面においては常に可能性の強弱があり、現実の医療としてのバランスも重視すべきです。それゆえに、現代医療的に危険性のあるものは排除していかなければならないという一面も含まれるのです。もしすべてを容認するということであれば、あらゆる方法論をコーディネートせずに取り入れてしまう、「折衷」という無節操な立場もありえます。我々は、こうした安易な折衷という立場に陥らぬよう注意しながら、多様な職種と相互了解していかなければならないのです。
つまりここから導かれる多元的な立場は、地域医療における多職種連携に新たな可能性をもたらすでしょうし、また結果、深い患者理解を可能にし、補完医療の負の側面から患者さんを保護することにもつながると考えられます。安易な「正しさ」を振りかざす一元的なこだわりを捨て、現在ある資源を活用し、柔軟な姿勢で時に応じて対応する、これこそが多元であることの特徴でもあるのです。