2017年01月26日

統合医療とEBMとの共通点

 昨年末に出版されたGノートでも「統合医療」特集においても話題されていましたが、統合医療をめぐる誤解の数々は、いわゆる EBMをめぐる誤解と非常に似ている、ということについて。

 この分野に興味のない方にはどうでもよいことではありますが、確かに一見正反対のように見えるこの二つの概念は、実はしっかりと理解すればかなり似たことを言っているというのは事実です。 
 
 統合医療が現代医療を否定しないのと同様に、大規模スタディなどのエビデンスを重視するだけと思われがちなEBMの立場も、経験や勘といった職人的な観点を否定しないというのがオリジナルの考え方なのです。

 しかし、日本では特に(?)データ重視ということと同じような意味でEBMという用語がとらえられているのが普通です。こうした事情は、専門家ですら代替医療と統合医療を混同して用いられていることと非常に似ています。

 こうした事情を踏まえつつ、合理的な思考方法を医療だけでなく広く社会全体に広げた良い本があったので、ご紹介します。EBMというものを誤解している人たちにもぜひ読んでいただきたい内容です。
 またEBMに関心ないかたにとってもビジネス啓蒙書としてとても参考になると思います。 


 
 この本の面白いのはEBM的思考をビジネスに展開することに加えて、究極の結論ないしは意思決定の根本を多職種による「協働 」においている点です。また合理的判断における「目的」の重要性の重視なども、やはり京都大学!、といった感じです。
 というのも、プラグマティズムの思考としての重要性をとく藤井教授や、多元主義の重要性を説いたナシア・ガミーの「現代精神医学原論」を翻訳した村井教授も、みんな京都大学です。
 こうした伝統はやはり、W・ジェイムズに影響を受け独自の哲学を展開した西田幾多郎からの伝統なのでしょう。理論を先行させず、行動を先行させる形式の思考方法を展開する研究者を次々に、分野を問わず輩出していますね。

 この本はEBMから展開する合理的思考の帰結を、「共有価値」においています。ここが最も共感したところ。私の考える統合医療でも、ジャングルカンファレンスを見ていただければお分かりのように、まさにこの「共有価値」に重点を置いております。こうしたところが、二つの立場のとても似たところなのです。
 医療者や治療家同士ばかりではなく 、当事者である患者さんをも巻き込んで(この形態が「ジャングルカフェ」です)協働していく。そうした姿を理想とするものです。これを著者は「シェアド・デシジョン・メイキング」と呼んでいます。
 インフォームド・コンセントの重要性が説かれて久しいですが、今まさにこれを超えていくべき新たな段階に達していることを感じさせられます。

 ジャングルカンファレンスの指し示すものにはこうした未来志向の医療像が内蔵されているのです。



精神医学の実在と虚構
村井俊哉
日本評論社
2014-03-20

現代精神医学原論
ナシア・ガミー
みすず書房
2009-11-14


 ネオプラグマティズムの代表格ローティ についての最近の解説書も、やはり京大教授の冨田先生によるものです。合意形成の基盤としての「連帯」について、そして多元主義を基盤とする統合医療の在り方について、ローティの思想はとても重要なものとなってくると思います。


 
今回は一部関心のある方々へ向けたメモ的な内容なので、ご興味ない方はスルーしてくださいね! 


tougouiryo at 16:14│Comments(0)いわゆるブログ! 

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