2017年02月23日

17年程前のこと

 先日の日曜日は、渋谷区のIFspaceにて、ジャングルカンファレンスとフューチャーセッションとのコラボ企画を開催しました。
 これまでの通常版のJCとは異なり、初心者の方にもなぜJCなのか、ということが解りやすかったのではないかと思います。
 またいつも木曜日開催ですので、お仕事の都合で参加出来なかった方も、日曜午前でしたので参加できたとのご意見もうかがいました。こうしたご意見をもとに、今後、東京開催でも、日曜日開催をしていこうと考えておりますので、その際は是非ともご参加ください。

 以前にご紹介した長沼伸一郎先生の紹介記事です。一見、医療、とくに統合医療との関連がわかりにくいかと思いますので、今回は少し思い出とともに補足を。

 http://wired.jp/2017/02/13/shinichiro-naganuma/
 


 
 長沼先生は理系学生に向けた画期的な参考書「物理数学の直観的方法」を、なんと26歳の若さで書き上げ、各大学生協で売上一位を叩きだした理系世界の伝説の人でもあります。

 私自身は、理系といっても医学系なので少しずれてはいるので、数学の試験で「直観的方法」にお世話になったわけではないのですが、もうかれこれ15年以上前に大学生協で、この本の「後記」(当時はブルーバックスではなかったので「11章」と呼ばれていました)を 読んだ時の衝撃はいまでも覚えております。

 当時は、ある内分泌疾患における 遺伝子変異を研究して学位を頂き、それを機にこれまでの医局を離れ、保健学科で臨床検査技師を目指す学生さんたちに臨床生理学を中心に教えておりました。これまで遺伝子や病理学的な研究を大学院ではおこなっていたのですが、実際の人間を対象にした生理的な研究に移行したこともあり、どのようなテーマをしたものかと考えあぐねていました。
 当時すでに、統合医療への思いはありましたので、研究職への移行と同時にワイル先生の統合医療プログラムにアクセスして勉強を始めておりました。
 生理学系の教室でしたので 、当時話題になっていたアイゼンバーグ博士によるアンケートを用いた代替医療普及の実態調査のような統計的なアプローチではなく、なにか新しい指標での代替医療の評価はできないものかと考えていました。とりわけ、複雑系解析を用いて代替医療の有効性を示せないものかと模索していました。

 そうした中でであったのが、この「後記」だったのです。この小文は、衝撃的でした。ある意味、複雑系研究の限界を喝破し、 いまでもとかく「部分の集合は全体ではない」と理念では簡単に述べられる難問をいともたやすく数式で説明して見せているのです。さらには、東洋医学の存在意義や、西洋医学との体系的な差異が数学的にさらりと解説されていたのです。いまでもこれほど明確な解説は他では見当たりません。

 これはもう自分に向けて書いてくれたとしか思えず(笑) 即、購入し、熟読の後(それでも半分も理解できませんでしたが)長沼先生にお手紙を書きました。その後、何度か手紙のやり取りの中で、今では当たり前でもあるEBM(とりわけ大規模スタディ)についての功罪、とりわけ医学領域において見逃されやすい盲点を解説していただきました。(この原稿は今でも長沼先生のパスファインダーチームのホームページから読むことができると思います)

 またこの「後記」の白眉が「縮退」についての解説でした。物事が均衡せずに、縮退していくという構図が実に刺激的でした。当初は長沼先生は人体ではこうした縮退は起きないのではないかと考えていたようなのですが、救命救急の場面などでの生理現象では解りやすく生じている現象であるし、冷えなどの慢性的な状況でも、これによって 説明できることがたくさんあります。
 こうした縮退をめぐる思索のヒントを頂いたことで、後に「武術と医術」や「ふくらはぎ習慣」の内容へと展開することが できました。

 行列の計算を忘れていると難しい面もありますが、そうしたところを飛ばしても、概略を理解することは可能です。このリンクの記事を読んで、興味を持たれた方は是非とも「物理数学の直観的方法」の「やや長めの後記」をお読みください。 ここには私自身の臨床における身体観や、現在展開している医療の多元主義のバックボーンがすべて展開されているといっても過言ではありません。
「後記」だけでも、代金の価値は十分すぎるほどだと思います。



tougouiryo at 09:00│Comments(0)いわゆるブログ! 

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