2020年06月30日

なぜ「お城へ To Go」なのか? 歴史から多元的統合を考える

 先週末のオンライン講義の最後の方でお話しした内容を少しご紹介します。
 多元的統合とは、どのような状態なのかということについての説明です。これは実は、なぜ「お城へ To Go」を連載しているのか、という意味にもつながる問なのです。

 オンライン講義で出した例としては、日本の戦国時代、桶狭間の合戦頃の勢力図と小田原征伐の頃の勢力図から、折衷と統合の様子がうかがわれます。つまり群雄割拠の状態が「折衷」によるいわば混乱、小田原征伐により天下統一が成し遂げられることにより「統合」が成立します。これを徳川幕府がゆるい統合として「幕藩体制」を成立させたことで江戸幕府が出来るわけですが、この統治状態がいわば「多元的統合」といった状態です。
 キングダム人気にあやかって、中国の春秋戦国でも説明したのですが、これですと少し分かりにくい。なぜなら、春秋期の折衷はよしとして、戦国の七雄がそろう頃を「多元」とすると、一気に秦が統一国家を形成してしまい、統合というより、なんか一気に「縮退」したような状況になってしまうからです。現に、これはまさに縮退といった方が良い状況で、早々に世は乱れ、項羽と劉邦による楚漢戦争を経て、やっと漢の成立にたどり着きます。



項羽と劉邦(上中下) 合本版
司馬 遼太郎
新潮社
2015-05-01


 これに比べると日本の戦国期は、適度に折衷から多元への移行がなされるように感じるのです。それゆえに多元の要諦である、一つ一つの特徴(いわば顔)をしっかりと認識することこそが、多元の根本理解を可能にすると思うのです。
 特に城は空間的な多元を実現するので、多元的統合の理解にはもってこいだと思うのです。少々強引な理論展開ではありますが、私としては結構真剣で、まんざら冗談ではない関連事項なのです。

 これまでなんとなく、別なもの、といった感じで読まれていた方も、今後はこんなつながりを少しでも感じながら城郭を知っていただけたら幸いです。


戦国大名勢力変遷地図
外川 淳
日本実業出版社
2012-12-22







心理療法の諸システム―多理論統合的分析 第6版
ノークロス,ジョン・C.
金子書房
2010-07-08




tougouiryo at 05:00│Comments(0)いわゆるブログ! 

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔