2020年08月20日

ファッシアとインテグラル理論の「ヒトのからだ」への展開

 「ヒトのからだ」勉強会の前なので、追加情報を記載しておきます。

 メモ的な仮説ですので、興味ある方は、勉強会の折にでも質問してください。三木解剖学からみたヒトのからだと、これまで解説してきた「ファッシア」、精神・意識論としてのウィルバーの「インテグラル理論」との関連を備忘録的に記載します。

 三木の総論において、アリストテレスの四階建ピラミッド(人・動物・植物・四大)が解説されていますが、この中でプシケのあるもの(生物)とないもの(無生物・四大)ということで、西洋では完全に壁によって隔てられているとされています。そして現代医学では、ここでいう生物でさえも次第に「生」が失われ無生物化しつつあると警鐘を鳴らしています。(解剖学が骨学からはじまるのはそのためだと三木は述べています)
 対して東洋では、この壁が取り払われ、同一線上に並べる思想(陰陽五行説)により、すべての要素が「生」を保っているといいます。ここに三木が東洋医学を礼賛する理由があるのでしょうが(晩年の三木は鍼灸師の資格を取ろうとしていたという発言もあります)、これを解剖学的な構造に結び付けることも可能に思います。それが「ファッシア」の概念です。当時の解剖学としては、まさに「除去すべきもの」だったファッシアが、こうした論の流れに登場するというのは三木にとっても意外に感じられるのではないでしょうか。

 動物系は、感覚ー実施という神経を基盤にした、いわば電気信号ベースの情報です。そして植物系は、食物から得られる栄養素、つまり化学物質といえる物質です。では四大のところは何か。まさに物理的な「力」です。つまり、押されたら、その圧力(剪断力、張力)など力学的な力が、その内部に伝わります。これは生物でもそうでなくても、共通です。その意味で、無生物としての生物への影響となります。こうした力学的影響を伝達するのがファッシアであるのはいうまでもありません。つまり「皮膚ーファッシアー内蔵(これは内部臓器に限らず筋肉などいわば「内蔵」されたもの全て)」の伝達路により、外側から内側への情報の流れとなります。これの仮想的なルートが「経絡」となるわけですし、整体やカイロ、あらゆる徒手技法の基本となりうるものです。
 それゆえに三木の言う中心的な役割のものとしては、動物系の神経系、植物系の循環系、さらにその基盤にファッシア系があると位置づけられます。この観点で、三木解剖学を読み返すとまた新たな解釈が可能ですが、ここではとりあえず、ここで議論を止めます。

 そして視点を転じてピラミッドの頂点、つまり人(理性)のところを文字通りに解釈するのではなく、多元的な「インテグラル理論」によって解釈してみます。これにより、社会的な視点との接続、社会の構成員との多元的な関係、などいわゆる社会システムとの理論的な連携がとれる理論に展開できます。ちなみにウィルバー自身、素粒子から人間社会までの一つのシステムとしての捉え方には否定的ですので、それに対しての回答のようなものにもなると思います。
 まあ現段階では思い付きですので、また、機会あるごとに解説してみたいと思います。今回はここまで!


生命の形態学―地層・記憶・リズム
三木 成夫
うぶすな書院
2013-12T



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