2020年11月26日

勉強会用資料:実施系のまとめ(四肢筋肉のまとめ)

 明日の勉強会の資料です。三木成夫の実施系について学ぶ際の補足です。四肢について補足しておきますが、体幹も復習しておいて下さい。
 実習編として、筋肉へのマインドフルネス(ボディスキャン)を紹介する予定です。

 運動系は、骨格系と筋肉系に大別される。このうち骨格系は脳脊髄を保護する脳頭蓋と脊柱からなる。そこから四肢に続く骨は、脊柱に続く部分(上肢帯・下肢帯)と、その先の部分(上腕骨・前腕骨・手骨、大腿骨・下腿骨・足骨)に分かれる。

 動物の上陸により、推進運動の役割を胴体の筋肉から、2対のくびれから生じる手足にゆずり、それらが胴体を持ち上げるようになる。こうしてできた上肢の筋肉は、胴体全面から起こるのに対して、下肢の筋肉は骨盤からしか起こらないのが特徴である。
 二対のくびれから生じた四肢は、二足歩行により上下、つまり手足になる。ここで、二足歩行になったにもかかわらず、当初の設計図はそのままで進化を続行する。(これまでの情報にはとらわれず「今」の情報に基づいて、進化が続行される。これがマルコフ連鎖で、進化には欠かせない視点)

 脊髄神経後枝の支配をうける背側筋群は、骨盤から頭蓋まで一気に走行する。これに対し前枝の支配である腹側筋群は、首・胸・腹・骨盤においてその姿を変える。つまり、顔、口、喉の筋肉は「鰓」の機能を転換した植物性機能の筋肉となり、胸壁の筋は酸素を取り込む呼吸運動を行い、腹壁の筋は腹圧を作って排出運動を担うことになる。
 またしっぽの退化とともに骨盤底に移動し、骨盤内臓を下支えする骨盤隔膜を形成する。また頭頸部の筋肉は眼球を動かす筋肉、舌を動かす筋肉、首を動かす筋肉となりその下端が胸の底まで下がり、「横隔膜」を形成する。

 上肢と下肢は上陸に伴い「ひれ」から発達したものである。上肢の主要な筋をその機能から見ていく。様々な表現を可能にする運動ができる構造になっている。(機能によるまとめは『美術解剖学ノート』を参照)
 ちなみに上肢と下肢を相対させながら理解すると分かり易い(ワニのように四足になった感じで相対させると良い)

肘を膝と考え、尺骨を脛骨として比較すると・・・

三角筋 ⇔ 大殿筋・大腿筋膜張筋
上腕三頭筋 ⇔ 大腿四頭筋
上腕二頭筋 ⇔ 大腿二頭筋
総指伸筋 ⇔ 長趾伸筋
尺側・橈側手根屈筋・浅指屈筋 ⇔ 腓腹筋・ヒラメ筋


 それでは、四肢の筋肉全体を概観してみよう。

腕全体を引き上げる筋肉(三角筋・烏口腕筋)
腕全体を曲げる筋肉(上腕筋・上腕二頭筋・腕橈骨筋)
腕全体を広げる筋肉(上腕三頭筋)
腕全体を回転させる筋肉(棘上筋・棘下筋・小円筋・大円筋・肩甲下筋)

 特に前腕部の筋肉は覚えにくいので、機能と併せて触りながら覚えると覚えやすい。前腕を回旋させ、手首を曲げる、そらせる。曲げる(屈筋)のは内側上顆から、反らす(伸筋)は、外側上顆から起始する。
 手指を曲げる、伸ばす(広げる)。手指を曲げるのは前腕骨の屈側、広げるのは、伸側となる。とくに親指とそれ以外の指に分けて考えると覚えやすい。

前腕を回旋させる筋肉(円回内筋・方形回内筋・回外筋)
・・・
(屈筋)内側
上顆から
指を曲げる筋肉(深指屈筋・長母指屈筋・浅指屈筋)
手首を曲げる筋肉(尺側手根屈筋・長掌筋・橈側手根屈筋)
・・・
(伸筋)外側
上顆から
親指以外の指を広げる筋肉(総指伸筋・小指伸筋・示指伸筋)・親指を広げる筋肉(長母指伸筋・短母指伸筋・長拇指外転筋)
手首をそらせる筋肉(長橈側手根伸筋・短橈側手根伸筋・尺側手根伸筋)

まとめると
「手」の屈筋は内側、伸筋は外側から起始する

それでは、次は脚を動きと絡めて概観する。

脚全体を内転させる筋肉(内転筋群:大内転筋・薄筋・短内転筋・長内転筋・恥骨筋)
脚全体を広げる(蹴り上げる)筋肉(大腿四頭筋)
あぐらをかくための筋肉(縫工筋)
脚を外側に持ち上げる(直立を維持する)筋肉(大腿筋膜張筋・大殿筋)
脚全体を曲げる筋肉(ハムストリング:大腿二頭筋・半膜様筋・半腱様筋)
かかとを引き上げる筋肉(下腿三頭筋)

足の甲や指を引き上げる筋肉(前脛骨筋・腓骨筋群・趾伸筋群:長拇趾伸筋・長趾伸筋)
趾を曲げる(長拇趾屈筋・長趾屈筋・後脛骨筋)
まとめると
趾伸筋は「足の甲」を通り、趾屈筋は「内顆」をくぐる


ソッカの美術解剖学ノート
ジョンヒョン, ソク
オーム社
2018-11-29




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