2021年02月11日

小さな診療所から(1)改:良導絡・横隔膜マッサージ

 統合医療の実際の様子をお伝えすることは、本ブログの重要な役割と考え少しずつ書いていましたが、診療の意義や解釈、類似症例からのエピソードを加筆して<改>として述べていきます。

 なお、具体的なケースに関しては、年齢性別など複数のエピソードを融合させた典型例ですので、特定の個人のエピソードを示すものではないことをm、改めてお断りさせていただきます。

 60代女性の血液疾患の方です。
 当院の受診歴は2年ほどで、大学病院での診療を受けながらの統合医療併用を希望されて来院されました。化学療法と併用する形で、栄養補充のサプリメントと漢方処方に加えて、体調管理を目的とした鍼灸治療を行っていました。

 化学療法の進展や、健康状態の変化に伴い、様々なアプローチを行ってきましたが、最近は、白血球、血小板の大幅な低下を伴う汎血球減少により、鍼灸などの侵襲的な治療が行えずにいました。ご自分でも何か健康に良いことを、ということで、食べ物などの工夫に加え、腰腹を中心とした身体の温めを丁寧に行っておりました。

 そうした中でも、化学療法との併用、並びに原疾患による体調の変動が激しく、お自分で行っているセルフケアの方法に不安を抱えるようになってきました。当院でも非侵襲的な治療を中心に行っていたので、何か、現状を肯定する方法はないものかと思い、良導絡を奥から引っ張り出してきました。良道絡は、治療法としても有効ですが、この時はもっぱら診断用として使っておりました、(後日、良導絡による通電治療も開始しますが、この時は経絡(良導絡)の様子を知る方法として用いました)

 ファッシアの研究や勉強をするようになって、さらにこの良導絡の意味するところが明確になっていたので、理論的に再評価していたところでもありました。厳密に「ファッシア」ということであればば、良導点は角質に存在しているされるので、深層にあるファッシアをみているわけではないのですが、そこから発生された電気を何らかの形で体表面で診ているということになります。これは、体表面において角質を除去することで良導点が消失するという事実に基づいています。しかし、良導絡への通電は、表面ではなくファッシアや筋層に刺入していることから、必ずしもその走行は角質内に限定したものと考えなくても良いことになります。(この辺りは今後臨床経験を積み上げる必要があると考えています)

 良導点を計測すると、肝経(F2) 胃経(F6)の高値と、腎経の低値ならびに左右の乖離、が測定されました。腹診においても胃部と胸脇部が固く触れる所見で、良導絡の測定結果を示すものとして捉えるができます。ちなみにこうした所見は、腹部への物理的刺激「腹部打鍼」により、刺入することなく金属の接触と共鳴で改善することができます。

 ご家庭で常に温めている部位を中心にお灸などで温め、瘀血が疑われる領域に軽めのカッピングをかけるなどの非侵襲的なアプローチを行い、施術後に再度、測定を行いました。
 これにより、施術前の値が落ち着き、データの左右差の改善も認められ、セルフケアにおける腎への温めの効果も肯定的にとらえることができ、大変喜んでおられました。

 加筆しておくと、この方と別の方ですが、いわゆる肝経の高まりにより胸脇苦満の所見がある方に、肋骨弓を自分でつかみあげるようしてもらい、ゆっくりと深呼吸させる「横隔膜マッサージ」を指導し、さらに同部位が軟らかくなる結果を得ており、胸脇苦満へのより有効な方法であることを確認しております。なおこの効果は他覚的所見の改善のみならず、睡眠の質向上など自覚的にも確認されいるのでセルフケアの方法として、より多くの可能性を秘めていると考えています。

 いろいろな検査機器はありますが、こうしたセルフケアをサポートする役割としてもとても大切なものです。当然こうした電気的な変化は、病態把握にとっても重要な情報ですが、こうした器機を用いずとも「身体智」を用いるキネシオロジーを駆使することも可能です。身体智を用いる方法に関しては、また稿ををあらためてご紹介してみたいと思います。


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