2021年04月29日

臨床ファッシア瘀血学(12)縮退・作用マトリックスとの関係

 久々に縮退や三体問題について、長沼先生の直観的理論を復習していたところ、ファッシア瘀血との意外な関連が見えてきたのでメモしておこうと思います。






 まずは物理数学の直観的方法「やや長めの後記」(旧11章)のまとめから。長沼先生の論理展開を追っていきましょう。

 本章では、三体問題の紹介と不思議から、社会における職業集団の相互関係をマトリックスを用いて解説していきます。こうした日常的な事柄は、(ハーモニックコスモス的な)太陽系の惑星の運動とは違い予測不能になること。そしてそこから、これまでの分析的な方法論への根本的な懐疑を述べ、部分の総和が全体には一致しないことを行列計算から証明していきます。

 そしてこの行列を用いた計算が、特殊な条件下では解くことが出来るが、一般的には困難であり、ひいてはいわゆる「非可算」となることを説明していきます。
 それによりいままで、自明のように考えられていた基盤となる前提条件は、実は特殊条件であったことを述べ、近代医学においても同様であることに言及していきます。(この辺りが、かつて東洋医学の数学的基盤として大いに長沼理論に惹きつけられたところでもあります)

 こうした例を挙げる中で、他の要素との「相互関係」の重要性を示し、作用マトリックスとして解説していきます。そしてこの作用マトリックスの内部での状態が、理想的である状態は、実は確率的にきわめて低く、偏在したいわば「寡占」の状態が確率的に生じやすくなることを示します。これが「縮退」という現象である、というわけです。
 つまり、巧妙な相互作用は確率的に駆逐され、次第に狭まった系へと縮退してしまうのです。(詳細は「物理数学の直観的方法」を参照してください。ここでの記載を「あらすじ」として読まれることをお勧めします)

 ここから当然、縮退の持つ問題点などいろいろと展開できるのですが、そこは置いておいて、我々の思考において「縮退」をどのように避ければよいか、という解説の流れになります。そのためのキーワードが、エルンスト・マッハによる「思考経済」です。複数の超専門家の総和ではなく、一個人の中で複数学問をコンパクトに格納させ相互作用を生じさせる、とでもいえるでしょうか。これこそがある種、多様性を担保することの最終目的とでもいえることなのではないか、と私自身は理解しています。


 以上が「やや長めの後記」の概略です。このGW中に甲野先生(本日ウェビナー開催予定です)やハーブの林真一郎先生との対談が予定されているので、自分なりの内容整理でした。

 ここで(やっと)ファッシア瘀血との関連です。作用マトリックスおける相互作用の演算子部分が「ゼロ」であれば、臓器などの相互作用が消え、部分の総和が全体と一致するのですが、ファッシアはこの相互作用を強く引き起こすことが、その重要な意義となります。
 つまり、この相互作用こそがファッシアの意義の本質に近いことになります。(当然「正統な」方々は、ファッシアを演算子としてではなく要素還元して「一臓器」としてしまうのでしょうが)

 では「瘀血」はどのように記載されるでしょうか。それは相互作用を(運動面において)制限、阻害するという点を考慮すると、まさに演算子の「ゼロ」成分と考えれます。これにより作用マトリックスにおける多くの迂回ルートが遮断され(つまり実際の運動制限が行われ)結果として、身体における「縮退」が加速していくということです。刺絡やハイドロリリースなどの治療的アプローチは、まさにこのゼロ成分をなくして、相互作用を復活しようとする介入と考えることができます。(この場合、刺絡などは瘀血やファッシア重積などを解除し、通常の鍼灸は電気的な偏在を解消することが予測されます)つまりファッシア瘀血は、作用マトリックスのゼロ成分として、系全体を「縮退」へと加速させると考えることが出来るわけです。

 他にもこの作用マトリックス理論は、ファッシア瘀血の解釈に展開できるところが多々ありますが、本日はとりあえずここまでにしておきます。結論としては、縮退とファッシア瘀血の概念は、密接に関係しているということです。


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