2021年07月25日

統合医療における漢方・鍼灸

 日本での「統合医療」のありかたについて、漢方・鍼灸の視点から少し考えてみたいと思います。

 言うまでもなく今日用いられる「統合医療」という言葉は、近年の代替医療の台頭を背景として欧米で使用されてきた言葉の和訳です。
 こうした動向を知らない一部の方の中には「統合」という日本語にひっかかって、もしくはその前段階の「代替」という言葉にひっかかって、統合とは?代替とは?というような禅問答に持ち込む人も少なくありません。しかし、訳語であることから、あまりそこにこだわっても仕方ないのです。ここでも、その議論はすでに学会などでやりつくされているので避けることにします。

 では「統合医療」という言葉は、本当に欧米由来のみ、なのでしょうか。日本では古くから「漢方」「鍼灸」の歴史があり、保険適応されていることから、現代西洋医学と伝統医学との併用問題は存在していました。
 近隣の中国・韓国はそれぞれ別個の資格を有する医師がいるわけですが、日本では、医師免許をもつ医師のみが両者を併用することが法的に可能である点が大きく異なります。

 こうした状況下で、一部では「漢方こそが正当で、西洋医学が代替なのだ」とか「CAMに漢方は分類されない」といった主張がされ、一方に偏る論調もありましたが、一部では、未来の日本の医学では西洋医学と東洋医学の理想的な共存を思い描く東洋医学関係者も少なからず存在していました。

 こうした流れのなかで早くも1978年に明確に「統合医療」概念を提唱したのが広島県の外科医、小川新先生でした。小川先生は腹診発展に寄与した著名な漢方医でもあり、まさに東西の医学を実践されていた先生でした。私にとっては学生時代ならびに、卒後数年の休みの時には、医院(小川外科)にて臨床を教えていただいた恩師でもあります。

 こうしたわが国での東洋医学関係者の永きに渡る努力が、今日の日本での「統合医療」理解の素地になったことはいうまでもないでしょう。
 われわれは、こうした背景から、欧米の統合医療の動向を理解しつつも、わが国独自の「統合医療」を形成していかなければならないでしょう。私自身も自分のクリニックで、漢方・鍼灸を重視するのはこうした理由からです。もちろん、非常に有力なサプリメントやホメオパシーも大切なのはいうまでもありません。
 しかし、概念ではなく、臨床モデルとしての日本の「統合医療」をしめすにあたり、漢方・鍼灸を主軸にすえることの重要性を感じています。これにより「統合医療」概念のブレが少しは減るのではないでしょうか。





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