2021年09月15日

解剖生理に立ち返る(序)

 昨年の四月にコロナ禍の中で、解剖生理学の基本に立ち返る目的で、三木成夫の『ヒトのからだ』による解剖学の学習会を開催しました。その際の参考資料のような形で、ブログにアップしていた記事を再掲してみようと思います。解剖生理学の復習として、また、ご自分の不調や、医学一般への関心の高ぶりの中で、自学自習のきっかけとなりましたら幸いです。
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 こうした中で、色々な不安や悩みなども多く聞かれるのですが、この機会だからこそじっくりと時間をかけて学びたいという方も多いようです。こうしたご要望も多いので、これまでの学習グループでの内容や講演などの内容を踏まえて、この統合医療領域における学習の指針を示したいと思います。これは医療従事者のみならず、セラピスト系やそれ以外の人体に関心のある方に広く、解剖・生理学習の方向性を示し、独習の参考にして頂ければ幸いです。つまり専門の人も、そうでない一般の人も、これを読んで、人体について概略を知ることが出来る、というものにしたいと思います。

 そうとはいっても、ただ解剖生理の教科書を買ってきてあたまから読むのでは、興味もわきにくいでしょうから、どのようにすれば、統合医療的な視点も入れながら応用範囲の広いものになるか、考えました。その結果、三木成夫の著作を指針として、解剖生理を眺めるのはどうだろうかと思いました。

 細かなことを網羅的に知ることよりも、一つ一つの事柄を記憶に留めやすい形で理解するには、大きな物語(ストーリー)が必要です。そうした流れを持っているのが、いわゆる三木解剖学・生命学だと感じました。試験などでは個々の要素(知識)が重要ですが、自らの健康増進に役立てるには、全体を一つの物語として理解することは重要です。そのためには、進化の視点を盛り込みながら、植物性と動物性という二極の相互作用(陰陽)として説明する三木成夫の視点が最適であると考えました。以下が、その参考文献です。ぜひ自身でもお読みいただくと理解がしやすいと思います。

ヒトのからだ―生物史的考察
三木 成夫
うぶすな書院
1997-07T



 三木はまず、生命の基本構造として一本の管「土管」の構造を示します。そしてそこでの機能を植物性として吸収・循環・排泄の順に解説していきます。ついで、それが逃げる、闘うといった動物性の機能を有するようになります。それを受容・伝達・実施として解説しています。そして進化の最終形として人間は二足歩行し、文化・社会を形成します。そこで問題となってくるのが、動物性器官の植物性器官への介入です。これにより狭心症や脳卒中などの疾患が生じてくると説明しています。
 しかし、これは逆に癒しの方法論として、動物性器官を用いて植物性器官へ介入することが可能であることも意味しています。呼吸法がその代表といってよいでしょう。またこのブログでもたびたび話題にしてきた「ファッシア」は、この両者を接続する重要な要素と考えられます。

 このように統合医療という、通常の医療よりも広範な医療を射程に入れるには、三木成夫の解剖学の視点が最適であると思うのです。

 まずは、解剖生理の概略をみてみましょう。それぞれの「系」では、細かい説明は成書に譲り(つまり細かな事柄の学習は各自のテキストなどで自習してみてください)、膨大な解剖生理の世界で迷子にならないように、大きな道筋としての一つの「物語」を提供してみたいとおもいます。自分の読みやすい解剖生理の教科書と共に、人間の身体を探ってみてください。


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