2021年09月21日

ヒポクラテス「疾病について」から感じたこと

 学習メモ的なものですので、ご興味ない方はスルーしてくださいませ。ヒポクラテスの著作(といっても多くは別人なのでしょうが)を読んでのメモ書きです。

 ヒポクラテス全集を見ていて、強く感じるのは、これほどの古典にもかかわらず(当たり前といえば当たり前なのですが)現代西洋医学の根本的な特徴がかなり備わっているということ。つまり病態生理のメカニズム解明への強い志向、結果というより真偽を強く求める性向など、いわゆる東洋医学的な文献との大きな差異を感じます。

 当然、ギリシア医学にもいろいろな派閥があるわけなので一概には言えないのでしょうが、この医学のもつ東洋的な要素は、歴史的にはアラビアの医学(ユナニ医学)へと継承され、それ以外の部分が抽出されて現代西洋の代替医療へと流入したという印象をもちます。

 具体的な治療についての記載においても、細かなハウツーは記載してあるのですが、どこか詳細すぎて一般性が薄れるような反面、強い客観性を持つため、プラグマティックな結果からのフィードバックというよりは、むしろ科学的真理の追究的な印象を持ってしまいます。こうした感じは、まさに科学的であることを至上とする現代医学の姿に見て取れるのではないでしょうか。

 素朴な形での医学の姿を感じられるのではないかと思い、少しずつ古典を読み進めているのですが、かなり大きな差異がすでに感じられるようになってきたことは自分でも意外です。もう少し大きな共通点のようなもの(どちらも医学なので)が感じられるのではないかと予測していただけに、この大きな差というものを、今後どのように表現すべきなのか、結構迷っております。

 こうした差異としては、少し趣が異なるものの、イギリス経験論と大陸合理論や、ギリシャ医学でのコス派とクニドス派の対立、黄帝内経と扁鵲・華佗の相違など、さまざまな局面に表れているように思います。そしておそらくはこの差異が、現代における医療への捉え方の相違にも影響しているのではないかと感じています。


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