2021年11月30日

統合医療プログラムの紹介の続き!

前回の各論教育に引き続き、臨床教育についてのご紹介からです!

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統合医療臨床(クリニック及びカンファレンス)の紹介

 Fellowは前述した内容の学習に加え、週3回の外来診療が義務付けられる。アリゾナ大学の附属病院であるUniversity Medical CenterにおいてPIMクリニックとして診療部門が開設されている。
 診療形態は、予約制で自主的な受診や他科及び地域開業医からのコンサルテーションが一般的である。ただし受診希望者は多く、数ヶ月待ちが一般的である。診察の形態としては、詳細な問診と身体所見を初診時にとり、主に
1年目のFellowはそれを次に述べるカンファレンスにかける。2年目のFellowは順番でその司会進行役となる。診察後には全ての患者に対して、ワイル博士自身が総括的コメントをする。再診時には、カンファレンスにもとづいて個々の患者に対して様々な処方、指導がなされる。
 時に、代替療法家に紹介されるが、
23ヵ月後の再々診時において、それらの介入が適切であったか医師の目から再検討される。つまり、ただ振り分けるだけでなく、不適切もしくは不変であれば、再度、方針が検討されることもある。訪れる患者は、ストレスにはじまり末期がん患者まで実に多彩である。このあたりの事情はわが国における統合医療診療の事情と似ているかもしれない。

 毎週月曜日にUniversity Service Centerで行われるカンファレンスは、こうした初診時のプランを決定する場であり、Fellowをはじめとしたプログラムの教育関係者に加え、様々な治療家(インターネット教育もあわせて担当していることが多い)が招かれる。その領域を列挙すると、自然療法、中国医学、オステオパシー、ホメオパシー、エネルギー医学、催眠療法、ガイドイメージ法等である。それぞれの専門家が自らの立場で、疾患の捉え方や治療法をコメントしていく。それらをFellowが最終的にまとめ、患者に伝えるわけである。この過程でFellowはそれぞれの代替療法家のコメントからその実際を学ぶことになる。さらに個人的に興味のある療法に関しては、専門家のもとでさらに詳しく学ぶこともある。

 また研究的側面として、クリニックに、臨床研究を目的として、患者のカルテをフォローし解析する専門家がいたことも印象的であった。

 

Associate Fellow

次にインターネットによる教育を主体とするAssociate Fellow(現在のプログラムにおいては「フェロー」に統一されているようである)に関して解説する。米国のみならず、世界各国から参加できるAssociate Fellowは、日本人の在校生と修了生の総数は2005年現在で8名である。この数は米国を除くと第1位である。全プログラムは2年間で、その間に3回のResidential Weekがあり、アリゾナ大学のあるツーソンを訪れ、約1週間滞在して学習する。必要なテキストは購入が指示され、その他、参考文献などはインターネットからダウンロードする仕組みになっている。

Residential Weekについてここで少し紹介する。これまでの開催場所はアリゾナ大学のあるツーソン市街から離れたホテルWestward Look Resortにて行われている。1回目のResidential Weekは入学式を兼ね、実際のインターネットを通じた操作の説明や、統合医療の基本理念や哲学といった総論的な内容が多い。
 ついで
2回目は、すでに1年経過していることもあり、鍼灸や催眠などの実技を伴う講義が多い。講義の種類も豊富で、複数の科目が同時開講され、選択形式になっている。3回目は2年経過後で、最終日には卒業式も行われる。講義内容もより実践性の高いものが多く、卒業生による開業モデルの提示など具体的なビジネスモデルの講義が充実している。合わせて、それまでインターネット上でグループを組んで行ってきた卒業研究の発表もある。実際に顔を合わせるのは、3回だけであるが、常にインターネットでお互いが会話しているような感覚があり、卒業時には別れがたい親しみを感じた。
 そうした意味でも、全ての総括としての卒業式は感慨深く感じた。卒業時には修了書とともに、ワイル博士から一人一人手渡される「杖」は、これからの統合医療の荒波に倒れずに進んでいけるように、との願いがこめられており、今でも思い出深いものとなっている。

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 以上です。統合医療という概念を確立しようとしたワイル先生の心意気のようなものを感じるプログラムであるとあらためて、この記事を読み返して強く感じました。




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