2022年01月30日

臨床ファッシア瘀血学 「経別」について・BファシアとEファシア

「臨床ファッシア瘀血学」の連載のはじめの方で、経別・経筋・奇経とファシアに関して論考しましたが、最近、山田新一郎・佐藤源彦著『東洋医学と潜在運動系』を読んで、とりわけ経別への理解が進みましたので、ファシアの総論的なこととあわせて記載してみたいと思います。ファシア瘀血学の第2回で論じた三木解剖学との関連で述べていきます。

 三木はヒトのからだを大きく動物系と植物系にわけ、生命の基盤を成す植物系に対して、現代では如何に動物系の影響が強まっているかを論じています。
 この二つの関連で言うと、内臓との関連の密接な「経別」は植物系、そして通常の経絡(経脈)は動物系に相当すると考えられます。正確には経脈さらには奇経・経筋がこれに相当し、特に動物系という意味では経筋がそのものといえましょう。また奇経についても十二正経を持つ身体が立ち上がり、重力が縦軸に負荷されることで見えてくる、新たな関係としてとらえるとまさに動物系といえるでしょう。

 この『東洋医学と潜在運動系』では、歴史的に臓器との関連の深い経別は、いわゆる現在の経脈の成立する前に存在していたと考えています。
 人体の上下関係からヒントを得た経絡の原型から発展して、四肢と臓器の関連をしめした経別が形成され、さらにその後の知見を加えて(本書では潜在から顕在への時代の流れを受けて)十二正経が主流となったと推測しています。
 そしてその過程で、従来の経別が十二正経の理論に取り込まれたのが、現在の解釈となったというわけです。それゆえに経絡の説明として、若干の強引な理論展開が出てくるわけで、経別の流注の複雑さはここに由来することになります。

 ただ、もともと四肢と頭部との関連で、この流れ(経別)が存在していたとする見方は、非常に理解しやすい考え方だと思います。
 大きな流れでとらえれば、1〜3合は足から頭部への流れ、4〜6合は頭部から手への流れになります(2本の経脈を一組として合としているので、合計6合となります)。
 あわせて「足⇒頭部⇒手」と考えれば、三木がいうところの進化における「頭進」そのものになります。そしてこのハブとなるところが頭部です。内臓と感情との深い関係を考えるとTFT(思考場療法)のタッピング場所との関連も見えてきそうです。
 つまり従来の経絡による解釈だけよりも、この療法の意味するところが明確になるのではないでしょうか。ちなみにこのルートを「エネルギー的」ととらえると、合気系武術などエネルギー的な身体技法的側面との接点が見えてきます。

 そしてこれと逆ルートとも言えるのが経脈の流れとなります。「(胸)⇒手⇒頭部⇒足⇒(腹)」といった流れです。これは「動き」をベースにした「ボディワーク的」と言えるでしょう。関連する領域で言えば、向野先生の「M(経絡)テスト」や、より経筋に近い「アナトミートレイン」などがこれにあたるでしょう。

 ここですこし三木解剖学の話題に戻ると、アリストテレスの「四大」での底辺である「モノ(物質)」を物理的な力であると考えると、ファシアとりわけアナトミートレイン的なファシアがそれに相当すると考えられます。いわばマトリックス(母体)となって植物系、動物系へと展開するわけです。
 ボディワーク系ファシア(以後「Bファシア」)から始まり、植物系である内臓器官、そして中枢のベースである辺縁系(爬虫類)へとつながります。ここまでを経別として考えます。ちなみにBファシアは、張力をベースとして機能しうるので、一個体として身体を見るとき、それは「テンセグリティ」として考えることが出来ます。
 そしてここから新皮質へと発展し、ここに従来型の経別に、感覚・運動系が大幅に上乗せされて経脈となるわけです。(ここで理論の整合性を保つために陽経経別の対向流システムが出てくるのでしょう)
 進化的には爬虫類、哺乳類、さらには霊長類と進化し、壮大な精神的・霊的なシステムが出現してきます。身体のエネルギー殻を想定するエネルギー医学的視点です。エーテル体、アストラル体といった領域です。
 この基本となるエネルギーとして想定されるのが、電子などの量子や、水分子をはじめとした生体においてコヒーレント性を有する分子です。この考え方によるとコラーゲン分子から成るファシアにおいて、電子の流れを形成し、エネルギー医学の基本としてのエネルギー系ファシア(以後「Eファシア」)として捉えることができます。

 BファシアとEファシアという造語を、わざわざ導入した理由は、ファシア概念の混乱にあります。(近年の流れとしてはBファシアのみが正統化されつつあることを懸念しています)
 生体マトリックス的な総合的考え方では、当然BとEの両方が考慮されるべきなので、どちらかを無視したり、混乱するということは避けなければなりません。『東洋医学と潜在運動系』では、顕在運動系と潜在運動系として、その混乱を戒めています。

 これらを総合して三木解剖学に接続すると「物質的なBファシア(唯顕)⇒植物系(潜主顕従)⇒動物系(顕主潜従)⇒Eファシア(唯潜)」といった関係が記せます。一周廻ってBとEが、ファシアで合流というわけです。
 ここにファシア概念の二重性も見て取ることが出来ます。これは、電子の波動性と粒子性の二重性とも重なりそうです。(ここにさらに量子の「意志」説をいれると面白いのですが話題が拡散するのでここまで)

 また植物系と動物系の対比で考えられることは、経別と経脈との自律神経へのアナロジーです。
 頭部との密接な関連から経別は、副交感神経とりわけ迷走神経との類似が推測されます。そして経脈は、交感神経との関連性、これはとりわけ長田先生の無血刺絡理論で展開されるデルマトームとの関連から示唆されます。
 この対比は、診察法においても見て取られ、夢分流に代表される腹部臓器を投影した腹診では経別と密接な臓器の様子を知り、背部(背候診)においては、明確なデルマトームは交感神経との関連そのもの(関連痛のメカニズム参照)ですから、表裏でこれも対称的となります。
 ちなみに皮膚と神経との関連では、経脈における内臓への影響は「体性自律神経反射」として説明されています。この反射で説明されるのがファシア連関のA−F、O−Fによる内臓への影響で、経絡理論的には経脈から派生した「絡脈」による内臓への接続です。かつてはこれを経別と解釈していたのですが、違って経別はもっと本幹的なものと考えるようになりました。このあたりは迷走神経の多彩な機能が関連してくるので「ポリヴェーガル理論」の援用を要します。つまり、ポリヴェーガル理論によってTFTなどが、トラウマ治療に効果を発揮する仕組みが説明できるのではないでしょうか。

 別な話題としては、江部経方理論の臓腑の機能図において、各臓器に直接影響しうるラインもまた経別となります。つまり臓腑へ直接的に、エネルギーを送るラインとして考えられます。
 ただその場合、頭部との密接な関連がやや説明困難ではありますが、これも合流しながら「胃の気」として江部先生の言うところの頭部への「直達路」を通っていくのかもしれません。直達路自体が経別の遺残(もしくは「影」)と考えることも出来そうです。なお経方理論の機能図は、体表構造(皮・肌・肉)と内部臓器との関連を総括している図でもあるので、統合医療的諸分野の総括図として非常に有効です。(私個人としては解剖図、生化学代謝図と並び、補完医療的要素のまとめとして統合医療臨床における重要な概念図であると考えています)

 今回は「経別」の特殊性と、そこから導かれる「Bファシア」「Eファシア」の概念について考えてみました。これらはさらに発展して考えると、メタトロンやAWGなどの波動系器機の理論的基礎としても解釈が可能です。つまり統合医療的な統括概念として、極めて重要なものと考えられます。
 波動系器機との関連は、また後日、考察してみたいテーマです。今回はココマデ。

 以下は今回参考にした書籍です。内容としては概論半分、ワークの具体的方法半分、といった感じです。








この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔