2022年02月13日

臨床ファッシア瘀血学 経別と経方理論

 前回の臨床ファシア瘀血学の話題で、江部経方医学の機能図と経別との関連を少し示唆しましたが、これについて補足の考察です。  
 経方医学における衛気の流れを示す機能図(俗にUFO図?とも)に基づく話題ですので、経方医学未読の方はスルーしてくださいませ。(何となく雰囲気だけは伝わるようにはします…)

 江部経方医学における人体構造の概観としては、「胃気」が人体におけるシステム全体を維持することが特徴といえます。それをベースに「胸」「隔」「心下」が、各臓腑を外界(外殻)と交通するというのが中心構造となります。
 つまりここでの「胃」は全身に供給される気の中心で、胃の気のバックアップとしての「脾」「肌」といった貯蔵の場を持ちながら、その調節を行っています。(西洋医学的にはさながら心臓の概念に近いのでしょうか)

 ここでファシアとの関連も強い「三焦」を考えてみます。経方医学第1巻では、中医学的な三焦は、血脈以外の気津が循環する場を総称したものであると解説しています。そして経方との関連では「胸」「隔」「心下」と「皮気」「肌気」「脈外の気」「腠理」そして経方独自の概念である「直達路」もこれにあたるとしています。
 つまり全体像としては、機能図すべてが相当することになるのですが、その開始点、中心となるものは胃気を出す「胃」そのものとも解釈できそうです。胃は本来、消化管として認識されていたものですから(古代の解剖においても小腸への連続は自明であったと推測できます)吸収がそのメインの機能です。
 そこにさらに発出としての機能が付加されたわけですから、その放出先と合わせてなんらかの新しい概念が必要とされたのではないでしょうか。それが全体像としての「三焦」ではないかと考えます。
 つまり「胃」には消化器としての側面と、三焦への気の放出器官としての側面とがあることになります。あえて表現するなら、胃(消化)と胃(三焦)、となるでしょうか。
 これを機能図に当てはめる際、心と心包のような関係として適応させてみます。もしくは、胃(消化)と脾、胃(三焦)と三焦、としても良いでしょう。こうすると心下と小腸の間に、消化器としての胃を配置でき、また、胃気の放出源としての胃(三焦)を置くことが出来ます。

 なぜ、このような面倒な概念を導入したかというと、臓腑との関連の深い「経別」の概念をこの機能図に入れ込みたかったからです。
 これにより心下より下の臓腑、二組(経方の機能図において)になっているものは、腎・膀胱(一合)、肝・胆(二合)、胃・脾(三合)と分けられます。これら経別の源流としての陽経は、上から下への流れのため、経別となった後に、胸より上に引き上げるときは「心」の働きを要すると考えられます。それゆえに一から三合の陽経の経別は、すべて心を通過することになります。
 次に、隔の上下に配置が分かれているものをみると、それは経別における四から六合にあたることが分かります。心・小腸(四合)、心包・三焦(五合)、肺・大腸(六合)です。これらの経別は、源流からすぐに心を通過することがわかります。

 四肢から独自のルートで臓腑にいたる経別ですが、こうしてみると一定の法則性が、この機能図においてもあることが理解できます。こうした関連は帰経で考えるよりも自然な臓腑との連続で、湯液と鍼灸との相互作用における重要な接点としても考えられるのではないでしょうか。
 この考え方は図示すると分かり易いのですが、メモとして残す意味でブログとして文章にして解説してみました。

 またこの考え方によると、隔からの気の放出において「肌気」の放出が胃(三焦)から前隔を通してのみ、なされることがわかるので、ファシアの病態説明にも有用に思います。つまり、ファシア、肌気、三焦をひとまとまりとして理解することが出来るわけです。

  ちなみに波動による器機は、ファシアを介して独自の周波数を放出もしくは感受すると考えられます。その場合は、こうした機能図の関連性を飛び越えて、直接的に臓腑に作用すると考えられます。





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