2022年11月20日

ファシア概念の整理メモ

 今年の統合医療学会シンポジウムで「ファシア」についてまとめるので、概念の整理目的のメモです。この分野に関心のある方の参考に記しておきますが、ご興味ない方や一般の方には分かりにくいのでスルーしてくださいませ。(今週の院内勉強会用の資料メモでもあります)

ファシア関連の概念のまとめ

 ファシアを考える際には、様々な階層の話題が交錯し、どのレベルで話をしているか現在地を把握しながらでないと混乱しやすい分野である。

 そのため「筋膜束」という概念で全体像をまずは把握する
 これは4つの主要な層にわけて理解する
筋膜層(脂肪層・浅筋膜):眼窩・鼻腔・口・肛門を除いて全身を覆う
軸性筋膜(脂肪層深部・深筋膜):軸上(背側)筋・軸下(腹側)筋を取り囲む
髄膜筋膜:神経系を取り囲む
内臓筋膜:内臓組織から派生し、胸膜・心膜・腹膜として体腔を取り囲む。身体の正中で頭蓋底から骨盤腔まで延びる縦隔を形成

 上記の内臓筋膜を機能的に分類し、経絡との関連を示唆したものがSteccoらによる、懸垂線(カテナリー)に基づく「器官・筋膜(a-f)配列」である。以下、3配列と経絡の関係である。
内臓配列(内胚葉由来 肺経・胃経・大腸経・脾経)
血管配列(中胚葉由来 心経・小腸経・膀胱経・腎経)
腺配列(外胚葉由来 心包経・三焦経・胆経・肝経)

 次にこれらの「a-f配列」を含む体幹腔を6つの隔膜が分節し、4つの腔(頸部・胸部・腰部・骨盤部)を収容する。6つの膜は以下の通り。(大小の骨盤底が共に骨盤部の最底辺を形成するので腔は4つ)
咽頭・脳底隔膜
胸頸部隔膜
胸腰部隔膜
結腸間膜隔膜
腹膜隔膜(大骨盤底)
骨盤隔膜(小骨盤底)

 各腔内で、特定の機能を遂行する体内の分節内臓器と、これらの臓器を一緒に結合する筋膜を「臓器・筋膜(o-f)単位」とする。これらは4つの分節された腔にそれぞれ3配列があるので、計12単位となる。ここに各内臓が配当され、それに相当する筋膜が治療対象となる。(これは経絡というよりは経別の意義に近いのではないか)

 浅筋膜より上層はいわゆる表層の瘀血を形成する場で、表皮・真皮・皮下組織のうち、皮下組織内に浅筋膜は存在する。浅筋膜が皮下における瘀血の直接的な原因になりうるので、これにより真皮内の毛細血管が(ファシア重積などにより)鬱滞し、三日月湖状態を形成することになる。そして刺絡はこの部位が治療点となるわけである。

 以上が、ボディワークにおける介入ポイントと重なることから、いわゆる「Bファシア」の概略となり、ファシアの主な解剖生理的な議論の場となる。

 ここにホメオパシーや量子学的なより微細な「Eファシア」と、武術における重心や横隔膜、デュアル神経系との関連などで重視される「Mファシア」の概念が追加される。これらは、先述した構造的ファシアに対して、機能的ファシアの分類と言えるだろう。

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 この辺りの議論にご興味のある方は、12月17日㈯開催される日本統合医療学会(オンライン開催)のシンポジウム2「ファシア:東西医学の架け橋」(13時〜15時)にて詳細を発表しますので是非ご参加ください。



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