2023年06月17日
三木解剖学への誘い(3)循環系
前回の吸収系に引き続き、循環系です。吸収と排出があり、その仲立ちとなるのが循環、身体内部の中心をなすものということになります。
循環系は、そもそもは栄養を吸収する腸管の付属物として血管が現れ、全身に食物や酸素を配るための器官として発達してきました。そして中身である血液は、生命上陸後もその起源となる環境を保持するため、海水に類した組成となっています。内部に母なる「海」を有していると言われるゆえんです。
循環系は、初めは細胞間を不規則に流れていたものが、次第に発達し通路を形成するようになったことに由来するとされます。つまり開放系であったわけです。
それゆえに、造血の場も、腸管からはじまり、脾臓、骨髄、リンパ系組織と、その場を移していくことになります。免疫機能が、その7割を腸管に依存し、腸内のマイクロバイオ―タなどの腸内環境に大きく影響されるのは、まさにこうした事情によるわけです。
結果として造血の場となる骨髄は、脊椎動物の上陸に伴う骨の軽量化により、骨の内部に「空き」が出たことによるとされています。つまりその理由は「たまたま」というわけなのです。真の理由は、神のみぞ知る、なのでしょうが、こうした偶然によって左右されることというのは案外少なくないのかもしれません。
また、動物系器官の発達により、媒介の中心をなす心臓・脳が発達し、結果、血管の分布に無理を生じることになります。つまり、臓器の肥大によって、ロジスティックとしての毛細血管においては、前線への補給路の過度な延長を強いられるため、これが現代病といえる狭心症・脳卒中を招く一因となるわけです。
出産に伴う循環動態の変化は、酸素を肺から取り入れる必要がない状態から肺呼吸への変化であるため、生命の上陸に伴う肺呼吸への進化の様子を推察することができます。つまり個体発生から系統発生(宗族発生)を推測することができるわけです。
人間も動物として動き回る中で、闘争・逃走における止血は重要な機能となります。闘争などで出血した際、速やかな止血ができなければ、命を失うことになります。
こうした重要な「止血」は、緊張状態における交感神経と不可分の関係にあるともいえます。これが現代においては、狩猟や敵対する動物との闘争・逃走が減っているにも関わらず、社会的・精神的ストレスの増大により、結果として、狩猟と同様の過度の交感神経興奮をもたらし、止血システムが実際の出血がないにもかかわらず、いわば誤作動を起こしたようになり、不必要な止血過剰をもたらしてしまうのです。つまり進化の過程における、負の面が疾患を形成すると考えら、進化医学における重要な視点を提供しています。
免疫系においては、当然、異物の入り口である消化管において発達してくることになります。ここに免疫と腸管との密な関係が形成される理由があります。
こうした免疫系は、現代社会における寄生虫の減少などの環境の変化により、その本来あるシステムを誤作動させ、結果としてアレルギーや自己免疫疾患といった疾患につながります。
また近年では免疫システムは、自律神経系との密接な関係が知られるようになり(交感神経系と顆粒球、副交感神経系とリンパ球)、ストレスや精神状態との関連が注目されています。そして、これも植物性機能に対する、動物性機能の過剰な進出(侵略)として捉えることもできます。三木の言う「われとわが身の争い」ということになります。(ちなみにここでポリヴェーガル理論に関して少し補足しておくと、腹側迷走神経複合体は横隔膜より上部、咽頭にかけて有髄神経として分布しているのですが、これもその存在場所および様式から進化的には新たなものと推測できます。つまり上陸後の過酷な生存条件において集団におけるコミュニケーション能力の高まりが、迷走神経の機能分化を推し進めたのではないでしょうか)
循環器は、栄養や酸素の運搬に加え、様々な情報も伝達する機能も有します。これがホルモンを用いた内分泌系といえます。
多彩な機能を持つ内分泌系であるが、極論すると「生殖」と「運動」という植物性・動物性の最終目的に大きく関与するもので、その調節は極めて重要な働きと言えます。つまり神経の電気的なネットワークとは別に、生命に重大な影響を持つ機能の調整を行っている路線、ロジスティックでもあるのです。
循環系は、そもそもは栄養を吸収する腸管の付属物として血管が現れ、全身に食物や酸素を配るための器官として発達してきました。そして中身である血液は、生命上陸後もその起源となる環境を保持するため、海水に類した組成となっています。内部に母なる「海」を有していると言われるゆえんです。
循環系は、初めは細胞間を不規則に流れていたものが、次第に発達し通路を形成するようになったことに由来するとされます。つまり開放系であったわけです。
それゆえに、造血の場も、腸管からはじまり、脾臓、骨髄、リンパ系組織と、その場を移していくことになります。免疫機能が、その7割を腸管に依存し、腸内のマイクロバイオ―タなどの腸内環境に大きく影響されるのは、まさにこうした事情によるわけです。
結果として造血の場となる骨髄は、脊椎動物の上陸に伴う骨の軽量化により、骨の内部に「空き」が出たことによるとされています。つまりその理由は「たまたま」というわけなのです。真の理由は、神のみぞ知る、なのでしょうが、こうした偶然によって左右されることというのは案外少なくないのかもしれません。
また、動物系器官の発達により、媒介の中心をなす心臓・脳が発達し、結果、血管の分布に無理を生じることになります。つまり、臓器の肥大によって、ロジスティックとしての毛細血管においては、前線への補給路の過度な延長を強いられるため、これが現代病といえる狭心症・脳卒中を招く一因となるわけです。
出産に伴う循環動態の変化は、酸素を肺から取り入れる必要がない状態から肺呼吸への変化であるため、生命の上陸に伴う肺呼吸への進化の様子を推察することができます。つまり個体発生から系統発生(宗族発生)を推測することができるわけです。
人間も動物として動き回る中で、闘争・逃走における止血は重要な機能となります。闘争などで出血した際、速やかな止血ができなければ、命を失うことになります。
こうした重要な「止血」は、緊張状態における交感神経と不可分の関係にあるともいえます。これが現代においては、狩猟や敵対する動物との闘争・逃走が減っているにも関わらず、社会的・精神的ストレスの増大により、結果として、狩猟と同様の過度の交感神経興奮をもたらし、止血システムが実際の出血がないにもかかわらず、いわば誤作動を起こしたようになり、不必要な止血過剰をもたらしてしまうのです。つまり進化の過程における、負の面が疾患を形成すると考えら、進化医学における重要な視点を提供しています。
免疫系においては、当然、異物の入り口である消化管において発達してくることになります。ここに免疫と腸管との密な関係が形成される理由があります。
こうした免疫系は、現代社会における寄生虫の減少などの環境の変化により、その本来あるシステムを誤作動させ、結果としてアレルギーや自己免疫疾患といった疾患につながります。
また近年では免疫システムは、自律神経系との密接な関係が知られるようになり(交感神経系と顆粒球、副交感神経系とリンパ球)、ストレスや精神状態との関連が注目されています。そして、これも植物性機能に対する、動物性機能の過剰な進出(侵略)として捉えることもできます。三木の言う「われとわが身の争い」ということになります。(ちなみにここでポリヴェーガル理論に関して少し補足しておくと、腹側迷走神経複合体は横隔膜より上部、咽頭にかけて有髄神経として分布しているのですが、これもその存在場所および様式から進化的には新たなものと推測できます。つまり上陸後の過酷な生存条件において集団におけるコミュニケーション能力の高まりが、迷走神経の機能分化を推し進めたのではないでしょうか)
循環器は、栄養や酸素の運搬に加え、様々な情報も伝達する機能も有します。これがホルモンを用いた内分泌系といえます。
多彩な機能を持つ内分泌系であるが、極論すると「生殖」と「運動」という植物性・動物性の最終目的に大きく関与するもので、その調節は極めて重要な働きと言えます。つまり神経の電気的なネットワークとは別に、生命に重大な影響を持つ機能の調整を行っている路線、ロジスティックでもあるのです。