2025年07月25日

生体城郭学のまなざし(100名城から医療を考える)9.久保田城

9.久保田城(秋田)

 

関ヶ原の合戦の後、常陸国(茨城県)から、はるか北の秋田へと国替えを命じられた佐竹義宣。その彼が、新たな本拠として築いたのが、この久保田城です。故郷を追われ、見知らぬ土地で、ゼロから再出発を強いられた彼の心境は、いかばかりだったでしょうか。この城の佇まいは、そんな佐竹氏の、忍耐と、したたかな現実主義を、色濃く映し出しているように思えます。

 

この城には、二つの興味深い俗説があります。一つは、佐竹氏が水戸から美人を根こそぎ連れてきたため、秋田美人が生まれたという、どこか微笑ましい話。もう一つは、敗者である佐竹氏が、徳川幕府に遠慮して、権威の象徴である石垣をあえて用いず、土塁を中心とした地味な城を築いた、というものです。しかし、後者は、おそらく真実ではありません。実際には、佐竹氏が元々、関東の土塁文化に慣れ親しんでいたこと、そして、土塁の方が、砲撃に対する防御力など、実戦においては石垣より優れている面もあった、というのが真相に近いようです。

この事実は、私たちに、物事の本質を見抜く眼の重要性を教えてくれます。私たちは、つい「石垣=豪華で強い」「土塁=地味で弱い」といった、表面的なイメージや、分かりやすい二元論に囚われがちです。

しかし、本当に大切なのは、見た目の派手さではなく、その状況における本質的な機能性です。これは、セルフケアにおける選択にも通じます。高価なサプリメントや、最新のフィットネスマシン(石垣)に飛びつく前に、まずは、地味ではあるけれど、最も基本的で重要な、質の良い睡眠や、バランスの取れた食事、規則正しい生活リズムといった「土塁」を、しっかりと固めること。その土台なくして、どんな高度な健康法も、その真価を発揮することはできないのです。

 

また、「幕府への遠慮」という、他者の視線を気にした心理的な理由ではなく、「自分たちの得意な工法で、最も合理的な城を築く」という、主体的な理由に、この城の築城思想の根幹があったと捉え直すこと。これは、私たちの生き方にも、大きな勇気を与えてくれます。他人の評価や、社会の「常識」に振り回されるのではなく、自分自身の価値観と、身体の声を信じ、自分にとっての「最適解」を見つけ出していく。それこそが、真に主体的で、健やかな生き方ではないでしょうか。

 

教科書に書かれた「鎖国」や「士農工商」といった言葉も、近年の研究で、その実態が、私たちのイメージとは大きく異なっていたことが分かってきています。

私たちは、常に、与えられた情報を鵜呑みにせず、自らの知性と感性で、その裏にある真実を探求し続ける必要があります。

 

久保田城の、華美ではないが、質実剛健な姿は、私たちに、見せかけの価値に惑わされず、本質を見極めることの大切さを、静かに語りかけているのです。



この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔