2025年08月02日

生体城郭学のまなざし(100名城から医療を考える) 15.足利氏館

15.足利氏館(栃木)

 

室町幕府を開いた足利氏の、揺籃の地。それが、この足利氏館、現在の鑁阿寺(ばんなじ)です。堀と土塁に囲まれた、典型的な方形居館の姿は、武士の時代の夜明けを告げる、力強い息吹を感じさせます。

 

しかし、城めぐりを始めたばかりの頃に訪れた私には、その価値が、よく分かりませんでした。天守も、石垣もない。ただ、静かな寺があるだけ。そう感じたのです。物事の価値は、それ単体で見ていては、理解できません。多くの城を見て、比較し、その中での位置づけを知ることで、初めて、その独自性や、歴史的な意味が、立体的に浮かび上がってきます。

これは、ある一つの治療法だけを、絶対視することの危うさに通じます。例えば、断食療法は、素晴らしい効果を発揮することがありますが、全ての人に、全ての状況で、有効なわけではありません。他の治療法との比較の中で、その適用と限界を、冷静に見極める必要があります。統合医療の視点とは、いわば、この「比較の眼」を、常に持ち続けることなのです。

 

この館のすぐ近くには、日本最古の大学とも言われる、足利学校があります。武力と、知性が、隣接し、互いに影響を与え合いながら、この地の文化を形成してきた。この構造は、非常に示唆に富んでいます。心と身体、理論と実践、右脳と左脳。私たちの内なる世界においても、対立するように見える、この二つの極が、バランス良く統合されてこそ、人間は、そのポテンシャルを、最大限に発揮できるのです。セルフケアとは、自分の中の「武」の力(行動力、決断力)と、「文」の力(知性、内省)を、調和させていく、終わりのないプロセスとも言えるでしょう。

 

帰路に立ち寄った、あしかがフラワーパークの大藤。その、圧倒的な生命エネルギーは、美しさを通り越して、ある種の畏怖の念を抱かせられました。

人間が、いかに、合理的で、整然とした世界を築き上げようとも、その足元には、計り知れない、野生の自然の力が、常に横たわっている。私たちは、その大いなる自然の、ほんの一部でしかない。その謙虚な認識こそが、真の健康への、第一歩なのかもしれません。

病とは、時に、その自然からの、強烈なメッセージでもあるのです。



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