2025年08月04日
生体城郭学のまなざし(100名城から医療を考える) 17.金山城
17.金山城(群馬)
私が100名城スタンプの存在を知り、この壮大な巡礼の旅へと足を踏み入れるきっかけとなった、記念すべき城。それが、この金山城です。新田氏の血を引く岩松氏によって築かれ、その後、家臣であった由良(ゆら)氏が下克上によって城主となり、上杉、武田、北条といった強大な勢力の狭間で、巧みに生き抜いた、したたかな歴史を持つ山城です。
この城を訪れた者を、まず驚かせるのは、発掘調査に基づいて、極めて大々的に復元された石垣群です。特に、大手虎口周辺の、まるで鏡のように平らに積まれた「鏡石」を配した石積みは、圧巻の迫力を持っています。
しかし、城めぐりの経験を積んだ今、改めてこの風景を前にすると、ある種の「違和感」が拭えません。同時代の、周辺の他の山城と比較して、この金山城の復元は、あまりに先進的で、豪華すぎるのではないか。まるで、少し背伸びをした、理想の姿のように見えるのです。
この「違和感」は、現代の健康ブームにおける、ある種の現象と私の中で重なります。メディアで喧伝される「スーパーフード」や、理想的な体型を誇るインフルエンサー。それらは確かに魅力的ですが、私たちの日常や、個々の体質とは、どこか乖離していることがあります。理想の姿(復元された金山城)を追い求めるあまり、自分自身の、ありのままの姿(本来の山城の姿)から、目を背けてしまう。
しかし、真の健康への道は、外にある理想を模倣することではなく、自分自身の内なる声に耳を澄まし、自分にとっての最適解を見つけ出す、地道なプロセスの中にあります。
同時に、ただし、とも思うのです。もし、私が最初に出会った城が、崩れた土塁と、鬱蒼とした森だけの、地味な山城跡だったら、果たして、これほどまでに城の魅力に引き込まれただろうか、と。金山城の、この、ある意味で「やりすぎ」とも言える、分かりやすい華やかさがあったからこそ、初心者の私は、城郭という世界の、奥深い魅力への扉を開くことができたのです。
これは、統合医療への入り口も同様かもしれません。最初は、キャッチーなデトックス法や、特定のサプリメントといった、分かりやすいアプローチから入った人が、次第に、より本質的な、生活習慣全体の改善や、心のあり方といった、ホリスティックな健康観へと、学びを深めていく。金山城は、私にとって、そんな「導入」の役割を果たしてくれた、恩人のような城なのです。
物事の価値は、一元的ではありません。玄人好みの、渋い魅力もあれば、素人を惹きつける、華やかな魅力もある。その両方の価値を認め、それぞれの役割を尊重すること。その多角的な視点こそが、世界を、より豊かに、そして、より正確に捉えるための鍵となるのでしょう。