2025年08月06日
生体城郭学のまなざし(100名城から医療を考える)19.川越城
19.川越城(埼玉)
「小江戸」と称される、美しい蔵造りの街並み。その中心に、かつて、北条氏康が、関東の勢力図を塗り替えた「河越夜戦」の舞台、川越城はありました。現存する本丸御殿は、高知城と、ここの二つしかなく、極めて貴重な遺構です。
しかし、私がこの城を訪れた際に、最も強く心に残ったのは、そうした歴史的な事実よりも、城跡全体に漂う、独特の「気配」でした。富士見櫓跡で、写真を撮ろうとカメラを向けても、なぜか、シャッターがスムーズに下りない。ようやく撮れたと思っても、必ずブレてしまう。科学的には説明のつかない、その場の目に見えないエネルギー、いわば「場」の力を、肌で感じた瞬間でした。私は、それ以上の撮影を諦め、ただ、静かにその場に佇むことを選びました。
私たちの身体もまた、レントゲンやMRIには映らない、目に見えないエネルギーの流れによって、その生命活動を維持しています。東洋医学では、それを「気」と呼び、その通り道である「経絡」を整えることで、病を癒してきました。
気功や、鍼灸、アロマテラピーといった、多くの代替医療がアプローチしているのも、この、目には見えない、しかし、確かに存在する生命エネルギーの領域です。
統合医療が、こうした、現代科学の枠組みだけでは捉えきれないアプローチを、真摯に探求するのは、人間を、単なる物質的な存在としてではなく、エネルギー的な側面をもった、ホリスティックな存在として捉えているからです。
わらべうた「とおりゃんせ」の舞台とされる三芳野天神も、この城内にあります。「行きはよいよい、帰りはこわい」。この歌は、城の厳しい検問の様子を、子供の遊び歌の形を借りて、今に伝えていると言われます。
直接的ではない、比喩や、象徴を通して、重要なメッセージが伝えられる。これは、私たちの「夢」の働きにも似ています。夢は、しばしば、奇妙で、非合理的なイメージを通して、私たちの無意識の領域にある、重要な気づきや、未解決の感情を、伝えようとします。
セルフケアとは、こうした、目に見えないもの、言葉にならないものに、耳を澄ます感性を、育むことでもあります。
身体が発する、微細なサイン。心の奥底から聞こえてくる、か細い声。夢が語りかける、象徴的なメッセージ。川越城の、あの不思議な「気配」のように。そうした、非言語的な領域との対話の中にこそ、真の健康への、道筋が隠されているのかもしれません。