2025年09月07日

生体城郭学のまなざし(100名城から医療を考える) 31.新発田城(新潟)

越後の、豊かな穀倉地帯に、その独特の姿を見せる、新発田城。この城の最大の特徴は、「三方入母屋造(さんぽういりもやづくり)」と呼ばれる、T字型の屋根を持つ、御三階櫓です。見る角度によって、正面が変わる、この不思議なデザイン。

敵の方向感覚を狂わせるための、軍事的な意図があった、という説もあれば、単に、城主の美的な遊び心だった、という説もあります。

私は、後者に、より惹かれます。全ての物事を、機能や効率だけで、割り切ってしまうのではなく、そこには必ず非合理的な「遊び」の要素が、必要なのではないか。オランダの歴史家、ホイジンガは、人間を「ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)」と、定義しました。文化や芸術、そして科学さえも、元を辿れば、人間の根源的な、「遊び」の欲求から生まれてきたのだと。

 

健康や、セルフケアも、あまりにストイックで、禁欲的なものになってしまうと、長続きしません。「あれを食べてはいけない」「これをしなければならない」。

そんな、義務感や、強迫観念は、かえってストレスを生み、心身の自由なエネルギーの流れを、滞らせてしまいます。時には、ジャンクフードを思い切り食べたり、一日中ゴロゴロしたり。そんな、一見、不健康な「遊び」が、心のバランスを取り戻し、明日への活力を、生み出す処方箋となることもあるのです。

新発田城の、ユニークな天守は、私たちにもっと人生を楽しんでいい、もっと遊んでいい、と、語りかけているかのようです。

 

歴史的に、この新発田藩は、幕末、周辺の藩が奥羽越列藩同盟を結成する中、ただ一藩、新政府側につきました。

共同体の中で、大多数とは異なる道を歩むこと。その孤独と勇気。それは、主流の西洋医学に疑問を感じ、統合医療や代替医療という、まだ少数派の道を選ぶ患者さんや、医療者の姿と重なります。

しかし、いつの時代も、新しい価値観はそうした孤独な探求者の、勇気から生まれてきました。

一つの集団に同調する安心感も大切です。しかし、時にはそこから、一歩踏み出し、自分自身の、内なる声に従う勇気を持つこと。

新発田城は、その両方の大切さを私たちに、教えてくれます。集団の中で、調和しながらも、個としての、ユニークな「遊び」を忘れない。それこそが、成熟した個人のあり方なのかもしれません。



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