疾患解説:どんな病気で統合医療にかかればいいの?
自律神経失調症の精神からの視点
「自律神経失調症」という言葉は皆さんもよく聞くかもしれません。いわゆる「不定愁訴」と同じように使われることもあり、典型的な疾患に症状が分類されないときに用いられることが多いようです。
そこには重大な疾患がただ見つけられないという理由で潜んでいることもありますが、大方は精神疾患として考えられるのではないだろうか、というのが最近の見解です。
安易に精神疾患というとわが国ではまだまだ偏見も多いので、このような疾患名がつけられるようになったというのが主ないきさつのようです。そうした流れから身体症状であっても「うつ」が潜んでいるという可能性も盛んに言われるようになってきました。(いわゆる「身体症状化」です)こうした中で最近、うつの診断をつけ、薬剤療法へと展開する流れも増えてきたように思います。これにより、症状改善する方もいるのでこれはこれで結構なことであると思います。
ただ、自律神経失調症、不定愁訴を身体疾患のみでなく、精神疾患からも考える、というだけで十分なのでしょうか。統合医療の観点からは、それだけでも足らないように感じます。いわゆる「もうひとつの観点」も必要ではないかと思うのです。伝統医療の観点です。わが国であれば漢方が東洋医学的観点といえます。その他にもホメオパシー的観点なども有用でしょう。つまり代替医療的観点です。
副作用発現の可能性などから、安易な抗うつ薬処方の流れは考えなおさなければいけないこともあるようです。なかなか治らない、いわゆる自律神経失調症の新たなアプローチに統合医療が有効な理由でもあるのです。現代医療的な「身体・精神の構図」だけでなく、もうひとつの視点の重要性がここにもあるのです。
慢性疲労の漢方について思うこと
今回は疲労について考えて見たいと思います。一般の診療においても疲労は成人の約3割に認められる症状で、六ヶ月持続したものを慢性疲労と呼びます。このような状態のときに用いられる漢方薬に「補中益気湯」が有名です。
いわゆる「慢性疲労症候群」はさらに集中力低下やのどの痛み、関節痛などの諸症状が新たに発症したもので、慢性疲労のごく一部にしかあてはまりません。(10%未満といわれています)つまりすべての慢性疲労にあてはまるものではないのです。
一般に疲労は精神の状態に原因があるといわれ、内科疾患が原因のこともすくなくありません。つまり内科的な疾患が改善されるにともなって改善するものも少なくないのです。
そこで慢性疲労に関しての統合医療を考えてみると、いわゆる原疾患を治療することが優先されるのはいうまでもありません。またそれは、いわゆる西洋医学的疾患でなくても、東洋医学的疾患でもいいわけです。つまり「補中益気湯」に限らずとも、東洋医学的診断によって他のものでもいいわけです。つまり血虚が加われば十全大補湯でも四物湯でも可能性があるのです。
このように病名(症状名)が同じでも処方や対処法が異なる例は、統合医療では普通です。だから一人ひとりの症状によって対応策をかえなければいけないというわけです。これが私のクリニックで時間を十分とる理由でもあるのです。
難病・悪性腫瘍への相補的医療として
難病・悪性腫瘍にたいして、様々な医療技術が日進月歩で進展している反面、依然として、現代医療では対応できない、という状態の方々も少なくありません。治療法がない、といわれる方々も少なくないようです。
しかし、本当に「ない」のでしょうか。現代医療的に「ない」、論文などのエビデンスとして「ない」、としても、代替医療として「ない」ということではありません。確かに、科学的、統計的に「ない」としても、本当に何もない、ということではないのです。非常に難しい問題を含んでいるので、一概にいえるものではないですが、統合医療は、こうした領域においても多くの可能性を持った医学といえるでしょう。
これまでの、こころとからだの状態を振り返る中で、様々な治癒へのヒントが含まれていることも少なくありません。そうした意味で、まさにひとりひとり異なる対策が必要になると思います。安易な奇跡の大逆転を望むのではなく、生活習慣改善などの地味な対応を積み重ねることが、実は大きな効果を生むことも少なくありません。これこそが統合医療のあるべき姿であり、大いに期待されている点といえるでしょう。
ダイエット・糖尿病・高血圧・高脂血症・メタボリックシンドローム
いわゆる生活習慣病の代表的な疾患です。病的に肥満している人は、これらへの対応が即、ダイエットにつながるとも言えるでしょう(ちなみにここでいうダイエットはいわゆる美容的痩身ではありません)。
また、最近「メタボリックシンドローム」という言葉を耳にする機会も増えているのではないでしょうか。これは以前、内臓脂肪症候群などとも言われていたものです。いずれにしても、これらの疾患の治療の最重要ポイントは「生活習慣の改善」です。統合医療だからといって、特殊な方法があるわけではありません。むしろ、生活習慣の改善こそが統合医療の眼目ともいえます。
いかに習慣の改善をするか、実はとても難しいことです。これまでの生活を、ともに振り返り、これからをどのようにしていくか。そうした積極的な姿勢を、様々な代替医療によりサポートしていくのが統合医療の役割といえるでしょう。その意味で、こうした生活習慣病への地道な対応こそが、私は統合医療の中心ではないか、と考えています。自らの健康を積極的に生成する、そうした姿勢で充実した生活を送る人が増えることこそ、統合医療の目的とするところです。そうした方々への適切なアドバイスやお手伝いは、統合医療医の重要な使命と考えています。
実際には、記録により、自らの生活を時系列的に眺める中で、改善点をともに探っていきます。安易に薬ではなく、食べ物・運動・こころの状態、これらが一番のキーポイントなのです。
頚・肩のこり 腰痛
東洋医学の考えに「未病」という考えがあります。これは病気ではない状態ですが、放っておくと病気へ進展してしまうかもしれない、という状態です。肩こり・腰痛は実はこうした未病の状態であることも少なくありません。まずは整形外科的な診断・治療が優先されるべきです。しかし、そこで重大な疾患がないようなら、東洋医学的な不調が隠れている可能性もあります。
肩こり・腰痛といった状態には、マッサージなどの徒手療法系(整体・リフレ・あんま・マッサージ・カイロ等々)や鍼灸などが特に有効なようです。経絡をはじめとした全身の気(エネルギー)の流れの調節という、現代医療とは違った病態の説明がされ、まさに統合医療の強い領域のひとつといえるでしょう。一方で施術者による技術差も大きい領域でもありますので、自分にあった方法を模索する必要があります。自分にあった療法で定期的に体のメンテナンスをしていくことが「未病」へも有効な取り組みになっていくでしょう。いま、症状がある人はその「きっかけ」なのかもしれませんね。
女性特有の症状
女性特有の症状(冷え性、PMS、月経痛、更年期障害)
月経痛、月経不順や更年期障害など女性特有の症状は、婦人科的には自律神経や内分泌の関与によるものと考えられています。また、それにしたがって治療法もありますが、人によってはこれらの症状に悩まされ続ける人も少なくないのが現状です。
一方、東洋医学的にこれらの症状を考えた場合「お血」という病態で説明されます。いわゆる「血」の流れが悪い、という病態です。そこには、東洋医学的な「冷え」の関与も見逃せません。そこでこれらの症状に対しては、いろいろな方法による「体の温め」が大切な治療法となってきます。さらに加えて、漢方による「お血」の改善です。
統合医療の根幹をなす重要な考えは「セルフケア」「養生」です。自らの「冷え」を自覚し、積極的に改善を努力しようとする姿勢があって初めて、こうした症状の解消・緩和がはかれると言えるでしょう。適切な漢方の服用に加えて、様々な統合医療的アプローチが、これからの女性医療の強い味方になると確信しています。
「仕方ない」とあきらめる前に、自ら「血」の流れを改善すべく、一歩踏み出すことも必要ではないでしょうか。それが将来の更なる健康維持につながっていくものです。
自律神経失調症
こうした状態へは従来、漢方薬が活躍してきた場面でもあります。西洋医学的に見れば、自律神経失調であっても、東洋医学的には多彩な「証(東洋医学的診断)」に分類することが可能です。そのために一人一人に適合した漢方処方にて対応することができるわけです。体調不良はあるけれど、検査をしても特に異常なし、といわれている方は一度、試してみる価値はあるでしょう。ただし、一度はちゃんと調べてから、です。たいしたことなさそうな症状の裏に大きな病気が隠れていることもあるわけですから…。
また、漢方に限らず、様々な代替医療の可能性もあります。ビタミン・ミネラルの補給といったサプリメントの摂取や、アロマセラピー、ホメオパシー、さらには何も使わずに呼吸法などを修得して自力で回復、などいろいろな方法が考えられます。どれが一番ということはありません。自分の気になる(気に入った)療法を、詳しく相談に乗ってくれる医師らと話し合いながら、決めていくのがいいでしょう。この体調不良をきっかけに、自分にあった代替医療と出会えることができれば、まんざら、体調を崩したのも悪くなかった、と思えれば最高ですね。
疾患の解説をはじめます!
統合医療から見た疾病のかたち
いろいろな家庭医療の本をみて、それぞれの方が病気に関しての何らかの知識を持たれているでしょう。一昔前とは異なり、病気のことはすべて医者任せというわけにはいかなくなりました。
しかし、それだけがすべての見方なのでしょうか。漢方やホメオパシーなどの各種代替医療からみるとまた、別な見方ができるのも事実です。でも、そうした見方だけで大丈夫なのでしょうか、と不安に思う人も少なくないと思います。
そこで現状としては、その両者のいいところをとった統合医療的な見方が、求められているのではないでしょうか。そうした観点から、やや代替医療側の見方を強調して、その治療の実際も含めて解説していきたいと思います.
自律神経失調からはじまり、ブログをはさみながら少しずつ進めて生きます。参考にしてくださいね。