こんなときどうする?(各論)
首・肩のこり
今日は、首・肩についてです。不調を訴える方が非常に多いですが、その背景には、「血」の流れの悪さといった全身の不調があることがほとんどです。甘く見てはいけない症状なのです。
首は、頭という重いものを胴体にのせながら、その運動の自由度から細くくびれており、そしてそれが胴体についたところが肩ともいえます。こうした構造から、いわゆる気や血がここで渋滞のように流れにくい状態になることも多い場所です。つまり、ベースとしての気や血の流れをスムースにすることが重要になってきます。
肩こりの症状に対して代表的なものが葛根湯です。これは頭痛のところでも解説しましたように、同様の病態を示すからです。また筋肉の引きつるような痛みを伴う場合には芍薬甘草湯が有効です。そして、気や血の渋滞があるということは、瘀血症状がベースにあるということですから、桂枝茯苓丸も効果的です。首・肩という局所だけでなく、こうした全身を視野に入れた治療も大切です。
しかし、局所症状が強い場合には、漢方薬単独よりも鍼灸の併用が効果的です。内服薬だけではなかなか効果が出ない方はぜひ鍼灸の併用をお勧めします。
漢方解説 頭痛
巷では、インフルエンザが流行しておりますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。このブログもしばらく開店休業でしたが、またぼちぼち再開していくつもりです。
はじめに、よくある症状について「頭痛」についての漢方の簡単な解説から再開していきます。
頭痛は、東洋医学的な観点からみると、片頭痛は体力の虚弱や冷え性などをベースに発症していることが多く、緊張性頭痛は首や肩のこりや緊張、高血圧に伴うものも多いことから、のぼせや瘀血症状をベースに発症していると考えられます。
こうしたことから、通常、漢方薬としては、片頭痛に対してはゴシュユ湯や五苓散、月経不順などに伴うもには当帰芍薬散などが用いられることが多くなります。
また緊張性頭痛に関しては、首のコリを伴うものには、風邪処方としても有名な葛根湯がよく用いられます。また、体力的に充実しているが、ストレスの関与が強いときなどには大柴胡湯も良い適応になるでしょう。
またストレスの関与がある場合には、一般に柴胡という生薬が含まれる漢方が良く使用されます。更年期障害に伴うものであれば加味逍遥散も良いで適応になります。
以上、頭痛について簡単な解説を終わります。
では、まだ寒い日が続きますが、うがい、手洗いの励行で感染防止に努めてください。
関節痛、こんなときどうする?
関節痛は関節内部の軟骨のすりへりにより痛み炎症を生じるもので、中でも多いのが変形性膝関節症です。一種の老化現象でもありますが、加重により症状悪化を招くため、ダイエットは重要な治療法です。
また、急な痛みのあるときは、症状が寛解するまで、激しい運動は避け、再発防止としては膝部の筋力アップが必要になります。
リウマチ性関節炎は関節内膜の炎症の結果、関節の腫脹、疼痛を生じるもので、免疫異常により発生し、何らかの誘発原因があると考えらています。喫煙、ストレス、食事内容などがこれにあたり、自身の症状の発現と合わせて、これらの誘発原因を避けていくことも重要となります。急性の炎症が激しいときは関節を休ませなくてはなりませんが、その後慢性化する中では次第に運動をしながら、温めることで血行の改善を図ることも重要です。
漢方としては、関節痛は漢方では水滞と考えることから、むくみの有無は重要で、水っぽいむくみがある場合は防已黄耆湯、また、体力的に弱いタイプには桂枝加朮附湯。関節の炎症が強く、体力のあるタイプには越婢加朮湯がよいようです。
ツボとしては足三里、陽陵泉、陰陵泉、三陰交などが代表的。また慢性関節リウマチなどでは全身治療も併用しなければなりません。
サプリメント・栄養の観点からは、軟骨再生を目的にグルコサミンやコンドロイチンなど。カルシウムやビタミンDの摂取も効果的。また抗酸化作用をもつブルーベリーは関節炎の症状緩和に有効とされます。ハーブとしてはデビルズクローのお茶かサプリメントも効果的。(ただし胃潰瘍など消化器症状がある場合は避けること)
アロマセラピーとしては、炎症症状の緩和としては、ジャーマンカモミール、ラヴェンダー。キャリアオイルとともにヨーロッパアカマツ、バジル、ウィンターグリーンなどの患部への塗布も有効です。
腰痛 こんなときどうする?
腰痛には、椎間板ヘルニアや変形性脊椎症、骨粗しょう症による圧迫骨折など原因のはっきりしたものもありますが、原因の特定されないものも少なくなく、生活環境やストレスにも大きく影響されます。
東洋医学的には、冷えによる血行不全によるものも多く、ゆったりとした「入浴」は治療において非常に重要なものになります。当クリニックでも重点的に指導するのはこうした理由があります。
また、無理な姿勢による業務や、自分の足に合わない靴(中敷)など日常生活に密着した原因をもつことも少なくありません。こうした日常の見直しも大変重要なことです。
また筋の弱りから腰痛に至ることも少なくないので、腹部ならびに背部の筋力アップを図ることも重要です。とくに腹部には骨格がないので(あたりまえですが…)筋による体格の維持は重要になるのです。
代表的な漢方薬を見ていきましょう。ギックリ腰のような突然の痛みには芍薬甘草湯がいいでしょう。幅広く痛みに対応できる処方です。老化をベースに腰痛には八味地黄丸、桂枝加朮附湯が適するでしょう。また、瘀血をベースにしたものには桂枝茯苓丸、さらに下半身の冷えが強ければ、五積散が適するでしょう。全体としてまとめると、老化をベースにしたものには補腎剤、筋肉などの血行不全をベースにしたものには駆瘀血剤が処方され、腰痛に対処されます。
ツボとしては圧痛点に加えて、腎ユ、大腸ユ、環跳など膀胱経、胆経を中心とした経穴が選ばれます。
サプリメント・栄養の観点としては、老化に関するものとして骨粗しょう症対策がなされます。カルシウムやビタミンDの経口摂取も効果的です。また軟骨再生を目的とするグルコサミン摂取も効果的とされます。
アロマセラピーとしては、キャリアオイルとともにヨーロッパアカマツ、バジル、ウィンターグリーンなどを患部に塗布も効果的です。緊張がベースになっているものにはイランイランなどリラックス系の芳香も試してみたいところです。
ホメオパシーとしては、筋肉や関節に対しては、ルストックス(温めると改善する使いすぎの症状)やルータ(比較的小さな筋肉・関節に。眼精疲労を伴うものにも効果的)が代表的なレメディーとなります。ただし、仕事など、個人の事情に密接に関連したものも多いので、たかが腰痛と言えず、くわしいカウンセリングを要することも実際は少なくありません。セルフケアで思ったほどの効果が上がらない場合は、専門家に相談されることをお勧めします。
腰はまさに体の「要」のところです。日常生活など、無理な点がないか、改めて再確認させるための体の警告と捉えられるかもしれません。そうした根本原因を探る試みもとても大切です。
首・肩のこり
緊張を感じたら、首と肩をすくめて(力んで緊張させて)一気に脱力するようにします。ただ脱力だけ、だとうまく脱力できません。また、知らないうちに首・肩の緊張をしているということに気づくことも対策の第一歩なのです。コリを自覚したら、首を回す体操なども重要です。また、冷えによる全身の血行不全が背景にあることも多く、ゆっくりと湯船で半身浴することも重要です。全身の冷え改善に伴い、症状が軽快することも少なくありません。肩のみのアプローチより、腰から下の冷え対策がむしろ非常に効果的に感じます。
要注意症状としては、なかなか改善せず、かえって悪化するようなとき、痛みが背中や、胸など異なる場所へと放散していくときなどは内臓性の疾患を反映していることもあるので受診、精査をおすすめします。
漢方による対処としては、肩こりの初期症状としては葛根湯が一般的です。筋肉の引きつりによる痛みがある場合には芍薬甘草湯も効果的。全身の血行不全状態を反映していることも多く、瘀血状態とみて、桂枝茯苓丸が有効なことがすくなくありません。ただし局所症状が強いときは、漢方単独よりも、鍼灸との併用が効果的だとおもいます。ツボとしては、押して痛みのあるツボ(阿是穴)に加えて、風池、肩井などが代表的といえるでしょう。
サプリメント・栄養:疲労物質の蓄積を防ぐ意味でビタミンB1、血行改善を目的にビタミンEなどの摂取は欠かせません。具体的にはビタミンBのコンプレックスが有効なことが多いです。
アロマセラピーとしては、ラヴェンダーやゼラニウムの吸入や、ベースのキャリアオイルに数滴まぜて指圧やマッサージがいいでしょう。また精神的ないらつきや高血圧を伴う場合にはイランイランも効果的です。リラクゼーション系のオイルを好みで使い分けるのがポイントです。
ホメオパシーとしては、筋肉や関節に対しては、ルストックス(温めると改善する使いすぎの症状)やルータ(比較的小さな筋肉・関節に。眼精疲労を伴うものにも効果的)が代表的です。精神的な関与もあわせて考えていければよりよい処方へつながりやすいでしょう。
非常に、メジャーな症状でしたがいかがでしょうか。ある意味、現代に特徴的な症状で、精神的な問題とも密接なことが多いのが特徴です。いずれにせよ、これまでの矛盾に目を向けることが対策の近道といえそうです。
頭痛、こんなときどうする?
通常、頭痛というと、緊張性頭痛と偏頭痛がその多くをしめる。緊張性では、首などの緊張をベースにしており、リラクゼーションが重要な要素となります。とりわけ、副交感神経活性化を計るための入浴、温め、などが大切になるわけです。
また、女性に多い、偏頭痛ではアルコールやチョコレートの摂取を控えることも重要です。また、偏頭痛には誘発要因が関与することが多く、自分で頭痛日誌(どのようなときにどのくらい痛むか)などをつけ、どのような要因が誘発しているのかを知ることも重要です。心配事や天候の変化、ある種の食品であることも多い、といわれ、その原因を自分で知ることは予防においても大切です。
次に漢方について解説します。偏頭痛では女性に多く、虚弱や冷えがベースにあることから、当帰芍薬散、呉茱萸湯など有効です。また、緊張性頭痛であれば、筋肉の緊張やストレスがベースにあることから、葛根湯、大柴胡湯などが有効となるでしょう。ツボとしては、百会・合谷・風池・臨泣への指圧などがセルフケアとしては手軽にできるでしょう。
サプリメント・栄養の観点としては、マグネシウムとカルシウムやビタミンB2の摂取も有効。ハーブとしてはフィーバーフューが効果的とされます。これには予防効果もあるようです。
アロマセラピーとしては、リラックス系のものを中心に、ラヴェンダー・ペパーミント・ローマンカモミールがよいでしょう。ペパーミントやラヴェンダーを数的いれたたらいで搾った布で額を冷やすのも効果的です。
ホメオパシーでは、アコナイト(寒さなどの突然の刺激による痛み)・ベラドンナ(拍動性の痛み)などを使い分けてみるのもよいでしょう。体質が症状に密接に関与しているので、詳しい専門家による問診があれば、より良いことはいうまでもありません。
こうした自然療法のすばらしさもさることながら、現代医学的な観点もわすれてはいけません。例えば、今までに経験しないような頭痛、外傷に伴うもの、神経症状を伴うものなどは、すみやかに医療機関の受診をするようにしてください。(ここに記載されたものはすべての人に有効とはかぎりません。専門家の指導のもとで行われることをおすすめします)