読書だより

寄生生物から脳腸相関を考える

 自由意志というものはあるのか。無意識のついて以前書いたところでもご紹介したのが『心を操る寄生生物』です。文字通り、われわれの心を操り、さも自分で決断したかのように思わせているといった、よく考えると非常にショッキングな内容の本です。

心を操る寄生生物 : 感情から文化・社会まで
キャスリン・マコーリフ
インターシフト
2017-04-15


 コオロギを内部から操り、プールへと飛び込ませる「ハリガネムシ」、感染した人を交通事故に合わせる確率を2.7倍に押し上げる「トキソプラズマ」、人を社交的にさせ感染の機会を増やす「インフルエンザウイルス」、認知症のリスクを増加させる「トキソカラ」・・・いくつもの衝撃的な寄生生物の実態が紹介されています。
 そうした内容の一環として、プロバイオティクスについても言及があり、腸内細菌が、腸内環境の変化を通じて、自律神経としての「迷走神経」を介して(求心性に)脳に影響を及ぼすということも詳述されています。プロバイオティクスがアレルギー疾患などさまざまな疾患の治療に有効なことは、目新しいことではないのですが、寄生生物による介入という視点でとらえると何とも不気味にも感じます。また、脳は腸の出先機関として進化した可能性がある、という記載も常識と逆転した視点で、考えさせられます。
 とりわけ、ピロリ菌については、胃潰瘍から悪性腫瘍までの予防的な効果を述べつつも、グレリンの調整を介して肥満をも調整しているというのです。つまりピロリ除菌により食べ過ぎにつながるというわけです。逆流性食道炎の増加など、負の側面も伝えられてはいますが、体重増加への関連はかなりショッキングなものなのではないでしょうか。

 これらの例を見ても明らかなように、これまでの中枢から末梢という片道的な考えだけではなく、あきらかに末梢から中枢というルートの重要性が示唆されているわけです。
 こうした「脳腸相関」の関連から、腹部の打鍼など腹部への治療的介入が、全身に影響することの理論的な基盤とも考えることが出来そうです。
 横隔膜や上腹部への徒手的な圧迫などの理論的基盤だけでなく、アルベックスやいくつかのプロバイオティクスの内臓的のみならず精神的作用機序を説明するのに、寄生生物は重要な視点を提供しているように感じました。

tougouiryo at 2019年10月15日06:00|この記事のURLComments(0)

甲野先生新作DVDです

甲野善紀 技と術理2018 - 呼吸を消す [DVD]
甲野善紀
株式会社夜間飛行
2018-10-08


甲野先生のDVD2019年版が発売予定です。上記は2018年版ですが、2019年版のテーマは「教わることの落とし穴」です。すべての領域の指導者・教育者必見!、とあります!

tougouiryo at 2019年10月12日06:00|この記事のURLComments(0)

クルミドコーヒー

 先月、これまで一度行ってみたかった西国分寺の「クルミドコーヒー」に行ってきました。独特な主張のある建物に入ると、階段を上がった二階に案内され、座るとやはり「クルミ」が置いてありました!
 これまですぐ近くの居酒屋には何度か来たことがあるのですが、これほどまでに近くあるとは知りませんでした。また、駅前は店主のご著書にもある通り、たくさんのチェーン店のコーヒー店が立ち並んでいました。そうした条件のところで一杯650円のコーヒーを自らの主張のもとに提供する、という雰囲気を味わうことができました。
 伺った時間が19時前ということもあり、店内は2〜3組のお客さんのみで静かな雰囲気でした。独特の入り組んだ構造で、静かにコーヒーを味わうという感じがにじみ出ていました。それにしても、特別に立地条件が良いというわけではないこの場所で、自らの考えを展開し、人気店となるというのは本当にすごいですね。いろいろと今後のクリニックやジャングルカンファレンス、そしてこれから展開するジャングルカフェの在りかたを考えさせられました。
 自らの考えはあるものの、なかなか一般的ではない形態のものというのは、理解してもらうのにもかなりの時間を要するものです。特に医療に関しては、(美容などを除けば)ほぼすべてが保険制度下が前提ですから、他分野のものとは比較にならないほど分かりにくいことでしょう。それでも「健康」というものは誰にとっても本来は最も切実なもののはず。「一緒に治る」という中動態で表す我々の目指す医療の在り方を少しでも知って頂けるよう、色々と思考を巡らす日々です。



tougouiryo at 2019年10月07日06:00|この記事のURLComments(0)

無意識について少し考える

 本日は久しぶりに甲野先生とお会いします。新しく解説した「身心工房リボン」も少し軌道に乗ってきたところですので、設立メンバー数名とともに立川近辺の居酒屋にて会合です。

 甲野先生にいただいた前野教授との対談本を契機に、前野教授の無意識に関するご著書を読んでみました。


 前野教授の「受動意識仮説」は、哲学における自由意志の問題に対して一石を投ずる問題提示で、とても興味深い考え方だと思います。そしてこの仮説を支持する事象として興味を惹くのが、カリフォルニア大学のリベット教授による実験結果です。それは筋肉を動かす運動神経の指令は、それを意図する脳の活動よりも0.35秒先んじている、というものです。分かり易くいうと、意識で動かそうと「思う」前に、運動の指令がでているという、常識とは反対 順序で事象が進 していることが分かったというのです。
 我々の把握している「意識」だけでは、すべては説明がつかないという衝撃的な結果ですよね。




 意識して考えそして行動する、という当たり前だと思っていたプロセスに疑問が呈されているわけです。自分という確固としたものに対しての疑問ですね。

 これとは少し異なりますが、自分が意図していると思っていたら、そうではなかった、という筋で「寄生生物」にあやつられているという視点もまた衝撃的です。トキソプラズマに感染したネズミは、猫に対して警戒心を抱きにくくなるばかりではなく、人間にも大きく影響している可能性もあり、この感染により男性では規則を破る傾向を強め、疑い深くなり、女性では逆に規則に従い、友好的で社交的になるというのです。まだ当然、仮説としての範囲を超えないとはいうものの、いくつもの実例が示されており、自分の意志、哲学で言う自由意志というものについてゆさぶりをかける内容です。
 様々な要因で、自分の考えが形成されてくる、そこに自分というものはあるのか、考えるほどに混迷していきますね。また、こうした書籍では指摘されませんが、ホメオパシーにおけるマヤズムの問題なんかにも、こうした寄生生物の視点は新展開をもたらしそうです。Medorrhinumや Syphilinumの体質によって引き起こされる衝動的な行動の原因なども何らかの関連がありそうです。この視点からの医学的な考察はまたいつか書いてみたいと思います。

心を操る寄生生物 : 感情から文化・社会まで
キャスリン・マコーリフ
インターシフト
2017-04-15





 自分というものは、どこまで自分なのか。無意識こそが、むしろいろいろなものと接続している。そうしたことを考えると、様々な情報をもたらす、脈診、舌診、腹診といった診察方法から知れる情報の起源の奥深さをあらためて感じます。通常の西洋医学でも同じ部位は見ているのですが、腹部や背部から知れる伝統医学的(統合医療的?)情報の奥深さ、異質さは、全く別次元とでもいえるものなのでしょう。

tougouiryo at 2019年09月26日06:00|この記事のURLComments(0)

Bスポット療法(EAT)関連書籍

 前回、Bスポット療法をご紹介し反響がありましたので、関連書籍のご紹介です。是非、一度お読みください。




 EATにかんする最新情報がわかりやすく解説されています。慢性上咽頭炎はまさに鼻だけの病気ではありません。三木成夫の著書などでも重視されている「鰓」から発生した重要な免疫の拠点です。様々な疾患との関連を考えることができます。大きなムック本もあります。







やや専門家向けですが、堀田先生と相田先生とのご共著です。



tougouiryo at 2019年08月20日06:00|この記事のURLComments(0)

共通言語としての基礎医学

 統合医療を構成するたくさんの代替医療について考えていくことも大切なのですが、やはりこの分野は「共通言語」を持つことが重要であるとかんがえます。
 こうした共通言語となりうるのが、基礎医学だと思います。西洋医学ではないか!と思う人もいるかと思いますが、かつてのような対立構図でとらえるような時代ではないでしょう。
 そうした中で、基礎医学は統合医療における共通言語として、より分かり易くまとめられなければならない時代なのかもしれません。そこで、基礎医学学習のきっかけとなるように、個々でも問題形式で材料を提供していきたいと思います。随時掲載していきたいと思っております。皆さんの学習の一助としていただけたら幸いです。







tougouiryo at 2019年08月16日06:30|この記事のURLComments(0)

三木成夫の本

 解剖生理学の概略を説明する必要があり、いろいろと参考図書を見ていましたが、やはり、総論でもあり、物語のような流れもあり、それでいて分かり易いのが、三木成夫本ですね。
 補完代替医療系の方にはかなり有名ですが、ここでも改めてご紹介しておきましょう。
 発生や進化をベースに、本来なら知りうることのない「なぜそうなのか」という疑問に答えられる唯一の解剖生理学とも言えるものです。
 代表的なテキスト的な書籍を挙げておきます。


ヒトのからだ―生物史的考察
三木 成夫
うぶすな書院
1997-07





tougouiryo at 2019年08月15日22:04|この記事のURLComments(0)

第二の脳「腸」

 第二の心臓「ふくらはぎ」ということで、ずいぶんと話題にさせていただきました(笑)が、末梢を軸にものを考えるという視点が広がったのは意味あることだと思います。






 そして現在は第二の脳ということで「腸」が話題です。脳ということですから、正確には腸管神経ということになるのでしょうが、腸そのものとしても双方向性の密接な連絡を有しているのです。例えば、うつ病と密接に関係するセロトニンは、その95%は腸内の特殊な細胞に含有されていることが分かっているそうです。そして、その腸はそこに住む腸内細菌と密接に関係する、つまりお腹の状態が精神にも関係するというのが当たり前の考え方になっているというわけ。

 というわけで、以下、第二の脳とそこに棲む腸内細菌という多様性との関係について考える本です。





土と内臓 (微生物がつくる世界)
デイビッド・モントゴメリー
築地書館
2016-11-12


tougouiryo at 2019年08月12日22:50|この記事のURLComments(0)

虫の知らせ

面白いです。病気の捉え方として、斬新で今でも考えさせられます。絵がリアルですごいです!

『針聞書』 虫の知らせ
笠井 昌昭
ジェイ・キャスト
2007-11-01





そういえば、チコちゃんでも「腹のムシ」やってましたね〜

フィギュアもあるみたいです・・・









tougouiryo at 2019年08月09日06:00|この記事のURLComments(0)

学ぶことは危険な行為

 自己学習や、研究会などで学んでいると、時に全く違った考えをしないと理解できないことがあり、それを機に全く違った視点を持つことが出来ることがある。
 一見そうしたことは、とても良いことだけのような気がするが、結構そうでもないのかもしれない。それを機にこれまでの周囲とは違った考え方となり、変な軋轢を生むこともあるだろう。

 最近、東大の安富歩教授による『超訳 論語』を読んでいてそれを強く感じた。ここには、これまでの論語の雰囲気とは全く違う訳がまさに超訳されている。論語冒頭の学而第一の訳。

「何かを学ぶことは危険な行為だ。なぜならそれは、自分の感覚を売り渡すことになるから」とある。

 確かに思い当たる節もある。では学ぶことはよくないのか。そうではなかろう。学習内容を自分のとするために努力を重ねていけば、いつかそれは自分のものになる。そして自らの感覚も取り戻せる。これが「習う」ということなのだそうだ。確かにこの「習う」という解釈は画期的で新鮮である。

いま、当院でも月に一度、塾と称して学習会を行っている。ただ学ぶだけでなく、これに参加することでクリニック関係者のつながりが強まっていると感じる。学習は確かに、自らを変容させる。そしてその過程の中で有機的なつながりが醸造されるように思う。

 一つの治療方法に自信を持つことは、良いことだが、そこから一歩も出ずに、そこに固執するセラピストも少なくない。これは医療従事者全般に対しても言えることだろう。

 学習することにより、つながりを強めていくということについて、おいおいここでも考えていこうと思う。なによりジャングルカンファレンス自体がそういう効能があることは肌身で感じていることだから。


超訳 論語
安冨 歩
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2012-12-14


tougouiryo at 2019年08月08日06:00|この記事のURLComments(0)