解剖生理

この機会に、解剖生理を見直してみませんか? 統合医療的解剖生理のススメ

統合医療オンライン相談を開始予定です。
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 コロナウイルス感染拡大を受けて、様々なイベント・行事が中止、延期となっておりますが、統合医療学会関連の行事や資格認定の講義も同様です。昨年より開始した解剖・生理についての講演も延期となりました。ジャングルカンファレンスなどの定例の行事も、現在、その開催方法を検討中です(ZOOM等を用いた遠隔会議の形式での開催となる方向です)。

 こうした中で、色々な不安や悩みなども多く聞かれるのですが、この機会だからこそじっくりと時間をかけて学びたいという方も多いようです。こうしたご要望も多いので、これまでの学習グループでの内容や講演などの内容を踏まえて、この統合医療領域における学習の指針を示したいと思います。これは医療従事者のみならず、セラピスト系やそれ以外の人体に関心のある方に広く、解剖・生理学習の方向性を示し、独習の参考にして頂ければ幸いです。つまり専門の人も、そうでない一般の人も、これを読んで、人体について概略を知ることが出来る、というものにしたいと思います。

 そうとはいっても、ただ解剖生理の教科書を買ってきてあたまから読むのでは、興味もわきにくいでしょうから、どのようにすれば、統合医療的な視点も入れながら応用範囲の広いものになるか、考えました。その結果、三木成夫の著作を指針として、解剖生理を眺めるのはどうだろうかと思いました。

 細かなことを網羅的に知ることよりも、一つ一つの事柄を記憶に留めやすい形で理解するには、大きな物語(ストーリー)が必要です。そうした流れを持っているのが、いわゆる三木解剖学・生命学だと感じました。試験などでは個々の要素(知識)が重要ですが、自らの健康増進に役立てるには、全体を一つの物語として理解することは重要です。そのためには、進化の視点を盛り込みながら、植物性と動物性という二極の相互作用(陰陽)として説明する三木成夫の視点が最適であると考えました。以下が、その参考文献です。ぜひ自身でもお読みいただくと理解がしやすいと思います。

ヒトのからだ―生物史的考察
三木 成夫
うぶすな書院
1997-07T



 三木はまず、生命の基本構造として一本の管「土管」の構造を示します。そしてそこでの機能を植物性として吸収・循環・排泄の順に解説していきます。ついで、それが逃げる、闘うといった動物性の機能を有するようになります。それを受容・伝達・実施として解説しています。そして進化の最終形として人間は二足歩行し、文化・社会を形成します。そこで問題となってくるのが、動物性器官の植物性器官への介入です。これにより狭心症や脳卒中などの疾患が生じてくると説明しています。
 しかし、これは逆に癒しの方法論として、動物性器官を用いて植物性器官へ介入することが可能であることも意味しています。呼吸法がその代表といってよいでしょう。またこのブログでもたびたび話題にしてきた「ファッシア」は、この両者を接続する重要な要素と考えられます。

 このように統合医療という、通常の医療よりも広範な医療を射程に入れるには、三木成夫の解剖学の視点が最適であると思うのです。

 まずは、今月中に週二回全六回で、解剖生理の概略をみてみましょう。それぞれの「系」では、細かい説明は成書に譲り(つまり細かな事柄の学習は各自のテキストなどで自習してみてください)、膨大な解剖生理の世界で迷子にならないように、大きな道筋としての一つの「物語」を提供してみたいとおもいます。自分の読みやすい解剖生理の教科書と共に、人間の身体を探ってみてください。
 

tougouiryo at 2020年04月08日18:04|この記事のURLComments(0)

To Go 解剖生理学 吸収系(消化器・呼吸器)

今回から統合医療的に解剖生理学をまとめてみたいと思います。施術や東洋医学的な視点からも参考になるような形で、学習の指針を示していきます。自学自習の参考にしてください。

 吸収系はいわゆる、消化器系と呼吸器系であり、各々栄養と呼吸をつかさどる器官で、共に「生命の炎」を燃やすところと考えることが出来る。つまりこれがミトコンドリアでのATP生成の源となる。

 腸管は「鰓腸」といわれる器官から進化したもので、そこから、生命体が上陸し空気中の酸素を取り入れる呼吸を行うために、一部が膨隆して、肺が形成されてきた。つまり腸管から付随するような形で、呼吸を行うために肺が形成されてきたのである。これが消化管である咽頭から、喉頭・気管が分かれる理由である。
 現状の生理的な機能から見ると、消化と呼吸には大きな隔たりがあるが、最終目的のATP生成のための進化と考えると納得できる。

 また吸収系という器官だけでなく、人間においては、二足歩行により解放された「手」による「料理」という機能も忘れてはならない。脳機能の発達をベースにしたこの高度な機能は、「火」や「道具」の使用により、消化機能を補助し、多くのものを消化することを可能にした(頭進)。人間における吸収機能においては、こうした動物的機能もまた非常に重要なものとなる。

 呼吸に関してはATP産生に不可欠な酸素の取入れを行うとともに、腎臓とともに酸塩基平衡を担う。つまり内部環境の調整に大きな役割を果たすのである。加えて、呼吸運動は、無意識に行われ、不随意的であるが、横紋筋支配によるため意識により随意的でもある。これにより、植物的機能への意識の介入が可能になる。つまりこれもまた動物的機能の植物的機能への介入とみることができる。これが呼吸法の意義である。

 消化と呼吸を吸収系として捉えた場合、両者の境界に生じる問題もまた忘れてはならない。つまり口腔においては共通していた食物の道と、空気の道が交差することになるのである。一方では、これが発声を可能にしているのだが、同時に合流時のトラブルといえる「誤嚥」をもたらす構造的弱点にもなった。つまり我々は「声」を得る代償として、誤嚥性肺炎という老齢期におけるリスクを背負うこととなったのである。何事にも得るものがあれば、失うものがある、ということだろうか。


<消化器のポイント>
・消化管概略

消化管は、口腔、咽頭、食道、胃、小腸(十二指腸・空腸・回腸)、大腸(盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸)からなる。

・嚥下
嚥下は、第1相(口腔相)、第2相(咽頭相)、第3相(食道相)にわけられる。

・食道・胃・小腸・大腸の仕組み
食道には3か所の生理的狭窄がある。胃の筋層は、外縦層、中輪層、内斜層の3層からなる。小腸には異物に対する関門の役割としてリンパ小節があり、特に回腸で発達して、これを集合リンパ節(パイエル板)という。大腸は1.5メートルほどの消化管。

・肝・胆・膵・腹部血管(腹部動脈・門脈)
そもそもは消化管の近傍に位置して、栄養の蓄積や消化液の分泌機能をになっていたもの、という視点。そのために、腸管の栄養素を運ぶ門脈は、肝臓へと収束される。

・代謝の仕組み、三大栄養素、栄養
糖質、脂質、タンパク質の小腸での吸収。解糖系、クエン酸回路、電子伝達系といった代謝経路への、グルコース、脂肪酸、グリセロール、アミノ酸の流入。ケトン体の生成。ビタミン、ミネラルの働き。

 
<呼吸器>
・肺のしくみ
気管、気管支、肺胞の構造。肺葉と肺区域。胸膜と胸膜腔。

・内呼吸と外呼吸
肺胞と毛細血管網。ガス交換の仕組み。

・呼吸機能とその調節
横隔膜と肋間筋による呼吸運動。スパイログラム。呼吸中枢(延髄)。化学的調節には脳脊髄液のpHを感受する中枢性化学受容体と、pO2、pCO2、pHの情報を送る頸動脈小体、大動脈小体といった末梢性化学受容体がある。

・発声
声帯の振動により発声。声の高さは喉頭筋(反回神経)の働きによる。


tougouiryo at 2020年04月13日06:00|この記事のURLComments(0)

To Go 解剖生理学 循環系(循環器・血液・免疫・内分泌)

今回から統合医療的に解剖生理学をまとめてみたいと思います。施術や東洋医学的な視点からも参考になるような形で、学習の指針を示していきます。自学自習の参考にしてください。

 循環系は、そもそもは栄養を吸収する腸管の付属物として血管が現れ、全身に食物や酸素を配るための器官として発達した。その中身である血液は、上陸後もその起源となる環境を保持するため海水に類した組成となっている。

 循環系は、初めは細胞間を不規則に流れていたものが、次第に発達し通路を形成するようになったことに由来すると考えられる。それゆえに、造血の場も、腸管からはじまり、脾臓、骨髄、リンパ系組織と、その場を移していった。免疫機能が、腸内フローラなど腸内環境に大きく影響されるのは、こうした由来に関係する。

 結果として造血の場となる骨髄は、脊椎動物の上陸に伴う骨の軽量化により、結果として「空き」が出たことが理由とされる。そして理由は「たまたま」とされる。

 動物系器官の発達により、心臓・脳が発達し、結果、血管の分布に無理を生じることになり(前線への補給路の過度な延長)、現代病といえる狭心症・脳卒中を招くことになる。
 また出産に伴う循環動態の変化(酸素を肺から取り入れる必要がない状態からの変化)から、上陸に伴う肺呼吸への進化の様子を推察することが出来る。

 また、人間も動物として動き回る中で、闘争・逃走における止血は重要な機能である。闘争などで出血した際、速やかな止血はその生死にかかわる。止血は緊張状態における交感神経と不可分の関係にあるといえる。現代において、動物的な闘争・逃走が減っているにも関わらず、社会的・精神的ストレスの増大により過度の交感神経興奮をもたらし、止血システムがいわば誤作動を起こしたようになり、不必要な止血過剰の負の面が疾患を形成すると考えられるのである。

 免疫系においては、異物の入り口である消化管において発達してくる。ここに免疫と腸管との密な関係が形成される。こうした免疫系は、現代社会における寄生虫の減少などの環境の変化により、そのシステムを誤作動させアレルギーや自己免疫疾患といった暴走につながるのである。また近年では、自律神経との密接な関係が知られるようになり(交感神経系と顆粒球、副交感神経系とリンパ球)、ストレスや精神状態との関連が注目されている。そして、これも植物性機能に対する、動物性機能の進出として捉えることが出来るのである。

 循環器による栄養や酸素の運搬に加え、様々な情報も伝達する。これがホルモンを用いた内分泌系である。多彩な機能を持つ内分泌系であるが、極論すると「生殖」と「運動」という植物性・動物性の最終目的に大きく関与するといえよう。つまり生命に重大な影響を持つ機能の調整を行っている。


<循環器>
・心臓の構造と血液循環の概略
心臓の位置と外形。心臓の内腔と栄養血管。心電図波形の意義。

・動脈・静脈・リンパ
動脈・静脈の構造。側副血行と終動脈。リンパ管の循環。

胎児循環(アランチウス管・卵円孔・ボタロ管)
胎児血液循環の概略(胎盤、臍動脈から臍静脈)。


<血液>
血液成分(赤・白・板)
血球三系統の成熟過程。血液構成成分。血漿、血清、血球、血餅。

止血
一次止血(血小板血栓)、二次止血(血液凝固)、線維素溶解現象(線溶)


<免疫>
自然免疫、獲得免疫(液性・細胞性)
免疫系の概略。

アレルギー、自己免疫疾患
アレルギー型と代表疾患。自己免疫の代表的疾患。


<内分泌>
各種内分泌器官とホルモン
代表的なホルモンの機能(視床下部・下垂体・甲状腺・副甲状腺・副腎等)

その他の内分泌器官としての消化管・腎・心臓
(一般に消化管ホルモンは分泌口より口側では抑制、肛門側では促進)



tougouiryo at 2020年04月16日06:00|この記事のURLComments(0)

To Go 解剖生理学 排出系(泌尿器・生殖器)

今回から統合医療的に解剖生理学をまとめてみたいと思います。施術や東洋医学的な視点からも参考になるような形で、学習の指針を示していきます。自学自習の参考にしてください。

 直腸からの排出に加え、尿の排泄器官である膀胱もまたその直腸から発生したものとされる。また生殖器も発生学的に尿精管から発生している。つまり生殖器もまた排出系として考えることができるのである。そしてこれらは全て総排泄口を起源としているのであるから、すべて排出系としてまとめて扱うことが出来る。

 また関連する治療方法論として考えると、取り入れること(栄養吸収)をメインにする西洋医学系に対して、汗・吐・下といった出すこと(排出)を中心にした方法論は東洋医学系である、と三木成夫は指摘している(東西の医療論というより近代における差異のようにも思うが)。

 腎臓の進化学的な役割としては、上陸に伴う陸上の乾燥に対して、ナトリウム保持により水分保持を可能にした。つまり、糸球体にて一度ろ過した水分を、尿細管で再吸収することにより水分の喪失を防いだ。これはヘンレの係蹄において、尿細管外部のナトリウム濃度を高めることで高浸透圧の状態とし、水を再吸収していることによる。そのため脱水に陥ることなく、陸生が可能になった(乾燥した砂漠においても生存可能となった)。加えて、腎臓は肺とともに、酸塩基平衡を司り、内部環境の酸性度を調整していることも重要である。

 排出系として生殖器を考えたとき、進化過程での体外受精から対内受精への移行は大きな変化であった。また中枢神経は進化に伴って「頭進」するのに対して、精巣は下降する(逆行している)ことも特徴的である。また出産にあたっては、進化の過程で直立したことにより、体軸に対して縦に重力を受けるため、人間は流産が多くなった。しかし、その代わりに自由になった両腕によって、抱いて哺乳することが可能になった。このために母子のつながりは、乳房を介して生まれ落ちてからも長く持続することになった、と三木は指摘している。

<泌尿器>
・腎臓の構造
腎臓の皮質と髄質(糸球体・尿細管等のネフロンとの関連)

・糸球体・尿細管・集合管
糸球体濾過値、尿細管における再吸収(近位・遠位尿細管、集合管)、尿生成の仕組み

・腎機能に関連するホルモン
RAA系(血圧上昇・体液量増加)、ADH(尿量減少)、ANP(ナトリウム排出促進・尿量増加)

・膀胱、前立腺
排尿と尿道の構造(男女の差異)


<生殖器>
・卵胞周期
卵胞の発育と卵巣周期

・月経周期
月経周期におけるホルモン変動(下垂体からのLH・FSH、卵胞からのエストロゲン、黄体からのプロゲステロン)

・妊娠・分娩・産褥

・男性・女性の生殖器



tougouiryo at 2020年04月20日06:00|この記事のURLComments(0)

To Go 解剖生理学 受容系(感覚器)

 今回からは動物性器官となります。植物性器官と比べると、臨床生理的な事柄はぐっと減りますが、植物性器官への動物性の介入という視点で言うと、まさに三木生命学の重要テーマとも言えるものです。動物性器官は、受容系・伝達系・実施系からなり、いわゆる神経・運動をカバーする極めて臨床的な領域といえるでしょう。


 
感覚器としては、近接感覚(味覚・皮膚感覚)と遠隔感覚(嗅覚・視覚・聴覚)がある。味覚はのどから出た「手」と考えると近接であるし、遠隔の三感覚は全て体の先端にあたる顔に位置して情報を受容している。このほかに内部感覚の自己受容器として、平衡器、筋肉感覚器があり、外界に対しての身体の情報を感受している。

 体の先端にある「顔」は植物と動物の両方を象徴している部位であり、内外の変化を知ることができるため、ここに遠隔の感覚器は集中している。
 様々な機器の発達により、嗅覚や聴覚などへの依存が減り、感受性もそれに伴い低下する中で、現代文明での視覚への依存は極めて強い。人で特に発達した視覚は、目の発達による視覚の重視により、細かなものを見るようになり、文字の発明によって文化の形成が加速された。しかしその一方で、こうした目の酷使が多くの人間に、現代病とも言える近視をもたらす結果となるのである。

 情報の入り口ともいえる感覚器は、その情報の伝達系である神経系の発達へとつながっている。
 原初的な触覚と味覚を司る脊髄・延髄の上に、付け加わるようにして嗅覚・視覚・聴覚(遠隔感覚)がのり、それが大脳の発達につながる。そしてこれが近接感覚による運動と統合され、感覚過程(精神)と観得過程(心情)が生れてくるのである。

<感覚器>
・感覚の種類
特殊感覚(視覚・聴覚・嗅覚・平衡覚・味覚)、体性感覚(表在感覚(皮膚感覚)・深部感覚(固有感覚))、内臓感覚(内臓痛も含む)

・視覚
視覚伝導路、眼球運動、眼球に関する反射(対光反射・輻輳反射・角膜反射・瞬目反射)

・聴覚
耳の構造、聴覚伝導路

・平衡覚
内耳の構造、直線的加速と回転加速度

・嗅覚
嗅覚伝導路

・味覚
味蕾と五味、味覚伝導路

・皮膚感覚
痛覚・温度覚・触覚・圧覚、皮膚の感覚受容器<自由神経終末(痛・触)・メルケル小体(触)・マイスネル小体(触)・ファーターパチニ小体(圧)等)



tougouiryo at 2020年04月23日06:00|この記事のURLComments(0)

To Go 解剖生理学 伝達系(神経)

 受容系と運動系とを伝達する、神経細胞の「鎖」である。この鎖の末端で、外界からの刺激を受けるところが受容系であり、伝わった刺激を運動へと変換するのが実施系とすると、その中間にある媒体が神経系(伝達系)ということになる。

 大きく分けると、受容系からの刺激を知覚性の末梢神経が伝達し、情報の介在・処理を行う中枢神経を経由して、運動性の末梢神経を介して実施系の筋肉へと伝わっていく。
 受容系から実施系への介在となる神経細胞が次々と連鎖して、進化の過程で変化し構造化したものが中枢神経系である。

 中枢神経は、感覚器との関連で、前・中・後脳が形成され(鼻ー前脳、眼ー中脳、耳ー後脳)それよりも後方の部分である脊髄と区別され、人間の中枢神経の原型を成す。感覚系からの情報は、統合され感覚中枢と運動中枢が形成されるが、これらの場所が進化の過程で、後脳(原始魚類)→中脳(高等魚類・鳥類)→前脳(哺乳類)と、次第に「頭進」し、前脳が極度に発達して大脳半球が形成される。

 中枢神経は脊髄から発生し、そこから延びる脊髄神経は内臓や体壁の動脈に絡みつきながら末梢に至る。進化により首や手足の発達とともに、これらは「神経叢」を形成しながら皮膚や筋肉へと延びていくのである。

 続く「延髄」は、鰓脳として発生し、鰓弓神経(三叉・顔面・舌咽・迷走神経)が出入りする。これらは植物性運動のみならず、表現運動においても重要な働きを有する。また植物性過程の後半部は仙髄に中枢があり、骨盤内臓神経により排尿や排便などを司り、延髄と極性の関係を持つ。

 延髄の背側部には、平衡をとり運動を円滑に行うために「小脳」が発達する。これは延髄の動物性知覚部ともいえる。小脳(耳脳)は、胴体に関連した旧小脳が、四足に関連した小脳半球・新小脳に挟まれて小脳虫部を形成している。また随意運動を行う人類では小脳と大脳との連結が強まり、「橋」が発達してくる。延髄と小脳を併せて「後脳」という。

 続く「中脳」は視覚器に関連し眼脳といえる。魚類と鳥類では視索が中脳半球に収束しているが、哺乳類になると視索の大部分は「間脳」に終わり、中脳半球は上丘へと退化し、聴覚を中継する下丘とともに四丘体を形成する。また中脳被蓋には運動に関連した「赤核」や「黒質」が現れ、大脳からの伝導路(大脳脚)が大きく発達することになる。

 前脳は鼻に関連し鼻脳ともいえ、嗅脳と嗅球からなる。これが爬虫類において著明に変化し、嗅覚以外の全ての感覚が一つの場に集合し、「新皮質」が形成される。これが哺乳類では左右に膨大し、ここから脊髄まで一気に下がる随意運動の経路である錐体路が完成する。一方で嗅脳としてあった古皮質は、新皮質の陰で見えなくなり、「大脳辺縁系」として植物性過程の中枢となる。

 以上が三木成夫の解説を軸にした神経系の発達段階であり、文字のみであると分かりにくいが、複雑な構造を有する中枢神経系を理解するには、こうした進化の視点からアトラスなどを併用しながら理解するのが最もわかりやすいだろうと思う。
 

<神経>
神経線維と伝達物質
神経線維(Aαβγδ、B、C)、代表的神経伝達物質(アセチルコリン、ノルアドレナリン、セロトニン、ドパミン、ヒスタミン、グルタミン酸、GABA、サブスタンスP)

中枢神経
大脳半球、大脳皮質、大脳髄質、大脳基底核、間脳、中脳、橋、延髄、脳幹網様体、小脳、脊髄

伝導路
遠心性:錐体路(皮質脊髄路・皮質延髄路)、錐体外路(網様体脊髄路・前庭脊髄路・赤核脊髄路・視蓋脊髄路)
求心性:温痛覚(外側脊髄視床路)振動覚・位置覚(意識型深部感覚)、小脳系(非意識型深部感覚・脊髄小脳路)

脳血液循環
大脳の動脈分布、脳底動脈とウィリス動脈輪、脳の静脈分布、

末梢神経
脳神経:三大感覚(機Ν供Ν次法運動神経相当(掘Ν検Ν此Ⅻ)、鰓器官(后Ν察Ν宗Ν勝Ⅺ)
末梢神経:前根・後根とベル・マジャンディの法則、前枝・後枝とデルマトーム、脊髄神経叢
自律神経:交感神経、副交感神経、内臓痛覚、内臓感覚(頸動脈洞・頸動脈小体を含む)、腸管神経系


tougouiryo at 2020年04月27日06:00|この記事のURLComments(0)

To Go 解剖生理学 実施系(運動器)

 単なる推進運動から、手足を用いた複雑な表現運動へと変化していくというのが運動系(実施系)の進化の流れである。受容系から伝達系を経て、いよいよこの実施系により動き出すことになる。

 運動系は、骨格系と筋肉系に大別される。このうち骨格系は脳脊髄を保護する脳頭蓋と脊柱からなる。そこから四肢に続く骨は、脊柱に続く部分(上肢帯・下肢帯)と、その先の部分(上腕骨・前腕骨・手骨、大腿骨・下腿骨・足骨)に分かれる。

 動物の上陸により、推進運動の役割を胴体の筋肉から、2対のくびれから生じる手足にゆずり、それらが胴体を持ち上げるようになる。こうしてできた上肢の筋肉は、胴体全面から起このに対して、下肢の筋肉は骨盤からしか起こらないのが特徴である。

 脊髄神経後枝の支配をうける背側筋群は、骨盤から頭蓋まで一気に走行する。これに対し前枝の支配である腹側筋群は、首・胸・腹・骨盤においてその姿を変える。つまり、顔、口、喉の筋肉は「鰓」の機能を転換した植物性機能の筋肉となり、胸壁の筋は酸素を取り込む呼吸運動を行い、腹壁の筋は腹圧を作って排出運動を担うことになる。またしっぽの退化とともに骨盤底に移動し、骨盤内臓を下支えする骨盤隔膜を形成する。また頭頸部の筋肉は眼球を動かす筋肉、舌を動かす筋肉、首を動かす筋肉となりその下端が胸の底まで下がり、「横隔膜」を形成する。

 上肢と下肢は上陸に伴いひれから発達したものである。上肢の主要な筋をその機能から見ていく。様々な表現を可能にする運動ができる構造になっている。(機能によるまとめは『美術解剖学ノート』を参照)

腕全体を引き上げる筋肉(三角筋・烏口腕筋)
腕全体を曲げる筋肉(上腕筋・上腕二頭筋・腕橈骨筋)
腕全体を広げる筋肉(上腕三頭筋)
腕全体を回転させる筋肉(棘上筋・棘下筋・小円筋・大円筋・肩甲下筋)

 特に前腕部の筋肉は覚えにくいので、機能と併せて触りながら覚えると覚えやすい。前腕を回旋させ、手首を曲げる、そらせる。曲げるのは内側上顆から、反らすは、外側上顆から起始する。手指を曲げる、伸ばす(広げる)。手指を曲げるのは前腕骨の屈側、広げるのは、伸側だが親指とそれ以外の指に分けて考えると覚えやすい。

前腕を回旋させる筋肉(円回内筋・方形回内筋・回外筋)
指を曲げる筋肉(深指屈筋・長母指屈筋・浅指屈筋)
手首を曲げる筋肉(尺側手根屈筋・長掌筋・橈側手根屈筋)
親指以外の指を広げる筋肉(総指伸筋・小指伸筋・示指伸筋)
親指を広げる筋肉(長母指伸筋・短母指伸筋・長拇指外転筋)
手首をそらせる筋肉(長橈側手根伸筋・短橈側手根伸筋・尺側手根伸筋

 下肢は、上肢と比較して見ると理解しやすい。肘を膝と考え、尺骨を脛骨として比較して見ると以下のようになる。

三角筋 ⇔ 大殿筋・大腿筋膜張筋
上腕三頭筋 ⇔ 大腿四頭筋
上腕二頭筋 ⇔ 大腿二頭筋
総指伸筋 ⇔ 長趾伸筋
橈側手根屈筋・浅指屈筋 ⇔ 腓腹筋・ヒラメ筋

 それでは主な下肢の筋肉を機能と併せて見ていく。

脚全体を内転させる筋肉(内転筋群:大内転筋・薄筋・短内転筋・長内転筋・恥骨筋)
脚全体を広げる(蹴り上げる)筋肉(大腿四頭筋)
あぐらをかくための筋肉(縫工筋)
脚を外側に持ち上げる(直立を維持する)筋肉(大腿筋膜張筋・大殿筋)
脚全体を曲げる筋肉(ハムストリング:大腿二頭筋・半膜様筋・半腱様筋)
かかとを引き上げる筋肉(下腿三頭筋)
足の甲や指を引き上げる筋肉(前脛骨筋・腓骨筋群・趾伸筋群:長拇趾伸筋・長趾伸筋)



(補)動物系から植物系へのフィードバック (身体のマトリックスとしてのファッシア)

 運動器は以上だが、運動に伴うファッシアの連動が、内臓系をはじめとして全身至る所に影響を及ぼす。また反対に、ファッシアにより運動自体が制限されることもある。そしてこのファッシアを通して、植物性器官へも影響を及ぼすと考えることができる。つまり、ファッシアに張力がかかった状態が経絡現象として考えられるし、ファッシアの張力を身体の捻じれ等により発生させ、身体のみならず精神面までも影響を及ぼすのがヨーガととらえることもできる。各種整体の理論的基礎もここにあると考えることが出来る。いわば解剖学的器官の「補集合」とも言えるファッシアは、それゆえに代替医療の諸概念を説明しうる概念と考えられるのである。

 『アナトミートレイン』によるホリスティックネットワークの考えによれば、神経の時間的記憶、体液の情動的記憶に対して、ファッシアを成すコラーゲン線維は信念体系との関連が指摘されている。ファッシアは空間的構造を成すものであり、それゆえに身体の空間認識に重要な役割を持つとも考えられる。メルロ・ポンティの現象学の基盤にもなりうるのではないだろうか。

 このファシアにより我々の視点は、再度、動物性から植物系器官へと回帰することができる。つまり動物性器官と植物性器官との円環構造を形成することができたのである。

tougouiryo at 2020年04月30日06:00|この記事のURLComments(0)