小さな診療所から
症例を通して「統合医療とは何か」をあらためて考える
統合医療とは何か、ということをあらためて考えさせられることが、ここ最近、私の周囲で生じていることもあり、女性特有の症状の対応例の再録に、大幅に今日の視点からコメントを書き足しました。統合医療とは何かという視点で、お読みいただけましたら幸いです。
50代女性Dさん、冷えのぼせ、動悸、不眠、イライラ感、などの更年期障害を主訴に来院されました。
当院受診前も、同症状にて漢方専門クリニックにて漢方処方(加味逍遙散・当帰芍薬散・抑肝散・酸棗仁湯等)、ならびに鍼灸院にて鍼灸治療を継続していたが、症状の改善が認められないため、当院を来院されました。
(いわゆる代替医療・伝統医療専門の医療機関は単体の方法論へのこだわりも強く、自らの方法論に良くも悪くもこだわる傾向が強いように感じます。ある種の症状には漢方が良くても、ある種の症状には分子栄養的アプローチが有効であることは珍しくありません。補完関係は現代医療との関係のみならず、代替医療・伝統医療の間にも存在することを強く実感しております)
まずは栄養状態のチェック希望でしたので、食事内容の記録表に加え、採血検査にてビタミン・ミネラルの栄養チェックを行いました。
(当院では普段の食事内容を記録して頂くことを基本にしています。メモ程度であってもおおよその傾向は理解できるものです)
結果から、鉄・亜鉛・ビタミンD等の栄養素が少なく、主訴との関連も強く示唆されたため、サプリメントにて補充をおすすめしました。(私自身も東洋医学出身なので気持ちはわかるのですが、やはり現代の多様な症状に的確に対応するには漢方処方だけでは不足であると感じています。こう書くと漢方の勉強が足らないからだとお叱り受けますが<既にこれまでも師匠からたくさん受けておりましたが…>20年近くこの形態の診療を継続して、間違いなく断言できます)
時に困っていた動悸に関しては、循環器専門の他院にて既に精査されていましたが、特に問題なしとのことでしたので、コエンザイムQ10(還元型)を通常量より増量して処方しました。(こうした増量分もかなり経験によって決定しています。一律に決まらないことを攻撃する向きもありますが、やはり現実的には一例一例異なる、としか言いようがないですね…またコエンザイムQ10を減少させる薬剤との併用には大いに注意したいところです)
さらに食事内容でも、タンパク質の摂取が少なかったので、改善するよう指導しましたが、なかなか増量できないということでしたので、プロテインでの摂取をおすすめしました。なお液体タンパクの摂取に伴い、カルシウムの補充は非常に重要です。(ここもご批判の多いところですが、普通に食べれるようなら卵・肉・魚としてのタンパク摂取が優先されるのはいうまでもありません。どうしても食べられないという方向けのプロテインということです)
これらの栄養補充、さらには食事内容の改善に積極的に取り組まれたことにより、冷えのぼせ、動悸、イライラ感が改善され、自覚的にかなり元気も出てきたようでした。とくに動悸に関しては、心臓の病気ではないかと精査してからも心配が続いていたことから、コエンザイムをはじめとした栄養が原因だったこともわかり、たいへん喜ばれていました。
(気血の流れの調整という視点がやはり漢方の中心といえます。これに対してサプリメントは文字通り「補充」。不足量が圧倒的な場合、やはり直接補充が効果的であるのはいうまでもありません。確かに「補気」「補血」の概念はありますが、とりわけ物質としての「血」が不足している場合、当帰芍薬散や四物湯のような補血剤においてもある程度の改善が認められるのは事実ですが、鉄補給がよりスムースに症状改善に導くことは言うまでもないでしょう)
しかし、数回の診療のなかで問診を進めていくと、家庭内、とくに夫への不満が強くあるようで、それによる機嫌の悪さから、症状の悪化が始まったようでした。従来、エアロビなど体を激しく動かす運動が好きで、これによりストレスの発散を行っていましたが、コロナ禍において、発散も十分にできなかったことが今回の症状悪化の主な原因と推測されました。
(やはり症状の基底には精神的な問題が存在することは少なくありません。というよりない方が珍しいでしょう。この辺りはオルゴンエネルギーを仮定したライヒの性格類型や、ユングの2態度と4機能で分けたタイプ論など、リビドーの放散方向なども考慮していくとより深く考察されてくるのかもしれません。こうしたエネルギー的な対応策としてはやはりホメオパシーの有効性を強く感じます)
こうしたベースがあることから、再度、増悪してしまうことも考えられ、加えて、睡眠状態の改善は今一つだったこともあり、ホメオパシーをおすすめしたところ、大変興味あるということだったので、レメディを試してみることになりました。
問診内容と症状の経過などから、レパートリゼーション(レメディ選択)を施行し、ヨーロッパコウイカ由来のSepia30Cを選択し、1日1粒3日間、連続投与しました。
(最近は、他の代替医療との組み合わせでレメディを用いることが少なくないので、ポリクレストの大まかな選択のみで十分な効果を実感しています)
これにより、毎日の気持ちがとても楽になり、家族への対応もイライラせずにできるようになり、体調全部が良くなったような感じと表現されていました。また睡眠状態も著明に改善し、中途覚醒、早朝覚醒がなくなり、熟眠感を得られるようになったとのことでした。(睡眠の評価は極めて重要です。あらゆる効果測定が良くても睡眠における改善がなければ
その根底は未だ未解決ともいえると考えています。それゆえに睡眠状態の問診は詳細に行っております)
更年期女性の諸症状に対しては、漢方や鍼灸といった東洋医学的な方法論が一般的ですが、この例にもあるように栄養(とくに蛋白やミネラル)の不足が、実は大きな原因となっていることも少なくありません。
また、治療者側の東洋医学への愛着が、かえってサプリメントなどの栄養補充アプローチへのアクセスに待ったをかけてしまっているケースも、現代の日本では少なくないように感じます。
(実は統合医療における現状の大きな問題の一つと考えています。一つの療法にほれ込んで「統合医療」に入る方も少なくないので、それが悪いということはないのですが、やはりその他のものを正しく評価し受け入れるという姿勢が、統合医療には求められているように思います)
漢方に関しては20年ほど前に、私が漢方外来を開始した時に感じたような、医師による漢方や東洋医学への偏見などはほぼ消失しているように思いますが、その他の代替医療(例えばホメオパシーなど)に対してはまだまだの状況です。(昔話になりますが、漢方を処方しているというだけで某医局では相当に虐げられたものです…)
とりわけ欧米諸国でのホメオパシーの復権にもかかわらず、わが国では医師の偏見と無理解はまだまだ強いと言わざるを得ません。(私の知る範囲でも、漢方と鍼灸への無理解を嘆きながらもホメオパシーはただのプラセボと断じている方もいるくらいですので…。人というのは手前勝手なものです)
どういう治療法を好むか、各人による考えは様々です。いいものはなんでも使うという発言もあり、まさにその通りなのですが、その治療法を本当に理解しているか、その理解度もまた大きく影響するわけです。
(この辺りはその違いを説明するのが本当に難しく、いわゆる「折衷」と「多元」の根本的な相違点ということになります。いい加減に「何でもいいよ!」ではありません、「吟味して選択する」という責任ある姿勢が大切なのです。こうした姿勢が貫けないとインチキやカルトの罠にはまってしまうのかもしれません。何にもまして統合医療にはバランス感覚が重要であると思っています)
50代女性Dさん、冷えのぼせ、動悸、不眠、イライラ感、などの更年期障害を主訴に来院されました。
当院受診前も、同症状にて漢方専門クリニックにて漢方処方(加味逍遙散・当帰芍薬散・抑肝散・酸棗仁湯等)、ならびに鍼灸院にて鍼灸治療を継続していたが、症状の改善が認められないため、当院を来院されました。
(いわゆる代替医療・伝統医療専門の医療機関は単体の方法論へのこだわりも強く、自らの方法論に良くも悪くもこだわる傾向が強いように感じます。ある種の症状には漢方が良くても、ある種の症状には分子栄養的アプローチが有効であることは珍しくありません。補完関係は現代医療との関係のみならず、代替医療・伝統医療の間にも存在することを強く実感しております)
まずは栄養状態のチェック希望でしたので、食事内容の記録表に加え、採血検査にてビタミン・ミネラルの栄養チェックを行いました。
(当院では普段の食事内容を記録して頂くことを基本にしています。メモ程度であってもおおよその傾向は理解できるものです)
結果から、鉄・亜鉛・ビタミンD等の栄養素が少なく、主訴との関連も強く示唆されたため、サプリメントにて補充をおすすめしました。(私自身も東洋医学出身なので気持ちはわかるのですが、やはり現代の多様な症状に的確に対応するには漢方処方だけでは不足であると感じています。こう書くと漢方の勉強が足らないからだとお叱り受けますが<既にこれまでも師匠からたくさん受けておりましたが…>20年近くこの形態の診療を継続して、間違いなく断言できます)
時に困っていた動悸に関しては、循環器専門の他院にて既に精査されていましたが、特に問題なしとのことでしたので、コエンザイムQ10(還元型)を通常量より増量して処方しました。(こうした増量分もかなり経験によって決定しています。一律に決まらないことを攻撃する向きもありますが、やはり現実的には一例一例異なる、としか言いようがないですね…またコエンザイムQ10を減少させる薬剤との併用には大いに注意したいところです)
さらに食事内容でも、タンパク質の摂取が少なかったので、改善するよう指導しましたが、なかなか増量できないということでしたので、プロテインでの摂取をおすすめしました。なお液体タンパクの摂取に伴い、カルシウムの補充は非常に重要です。(ここもご批判の多いところですが、普通に食べれるようなら卵・肉・魚としてのタンパク摂取が優先されるのはいうまでもありません。どうしても食べられないという方向けのプロテインということです)
これらの栄養補充、さらには食事内容の改善に積極的に取り組まれたことにより、冷えのぼせ、動悸、イライラ感が改善され、自覚的にかなり元気も出てきたようでした。とくに動悸に関しては、心臓の病気ではないかと精査してからも心配が続いていたことから、コエンザイムをはじめとした栄養が原因だったこともわかり、たいへん喜ばれていました。
(気血の流れの調整という視点がやはり漢方の中心といえます。これに対してサプリメントは文字通り「補充」。不足量が圧倒的な場合、やはり直接補充が効果的であるのはいうまでもありません。確かに「補気」「補血」の概念はありますが、とりわけ物質としての「血」が不足している場合、当帰芍薬散や四物湯のような補血剤においてもある程度の改善が認められるのは事実ですが、鉄補給がよりスムースに症状改善に導くことは言うまでもないでしょう)
しかし、数回の診療のなかで問診を進めていくと、家庭内、とくに夫への不満が強くあるようで、それによる機嫌の悪さから、症状の悪化が始まったようでした。従来、エアロビなど体を激しく動かす運動が好きで、これによりストレスの発散を行っていましたが、コロナ禍において、発散も十分にできなかったことが今回の症状悪化の主な原因と推測されました。
(やはり症状の基底には精神的な問題が存在することは少なくありません。というよりない方が珍しいでしょう。この辺りはオルゴンエネルギーを仮定したライヒの性格類型や、ユングの2態度と4機能で分けたタイプ論など、リビドーの放散方向なども考慮していくとより深く考察されてくるのかもしれません。こうしたエネルギー的な対応策としてはやはりホメオパシーの有効性を強く感じます)
こうしたベースがあることから、再度、増悪してしまうことも考えられ、加えて、睡眠状態の改善は今一つだったこともあり、ホメオパシーをおすすめしたところ、大変興味あるということだったので、レメディを試してみることになりました。
問診内容と症状の経過などから、レパートリゼーション(レメディ選択)を施行し、ヨーロッパコウイカ由来のSepia30Cを選択し、1日1粒3日間、連続投与しました。
(最近は、他の代替医療との組み合わせでレメディを用いることが少なくないので、ポリクレストの大まかな選択のみで十分な効果を実感しています)
これにより、毎日の気持ちがとても楽になり、家族への対応もイライラせずにできるようになり、体調全部が良くなったような感じと表現されていました。また睡眠状態も著明に改善し、中途覚醒、早朝覚醒がなくなり、熟眠感を得られるようになったとのことでした。(睡眠の評価は極めて重要です。あらゆる効果測定が良くても睡眠における改善がなければ
その根底は未だ未解決ともいえると考えています。それゆえに睡眠状態の問診は詳細に行っております)
更年期女性の諸症状に対しては、漢方や鍼灸といった東洋医学的な方法論が一般的ですが、この例にもあるように栄養(とくに蛋白やミネラル)の不足が、実は大きな原因となっていることも少なくありません。
また、治療者側の東洋医学への愛着が、かえってサプリメントなどの栄養補充アプローチへのアクセスに待ったをかけてしまっているケースも、現代の日本では少なくないように感じます。
(実は統合医療における現状の大きな問題の一つと考えています。一つの療法にほれ込んで「統合医療」に入る方も少なくないので、それが悪いということはないのですが、やはりその他のものを正しく評価し受け入れるという姿勢が、統合医療には求められているように思います)
漢方に関しては20年ほど前に、私が漢方外来を開始した時に感じたような、医師による漢方や東洋医学への偏見などはほぼ消失しているように思いますが、その他の代替医療(例えばホメオパシーなど)に対してはまだまだの状況です。(昔話になりますが、漢方を処方しているというだけで某医局では相当に虐げられたものです…)
とりわけ欧米諸国でのホメオパシーの復権にもかかわらず、わが国では医師の偏見と無理解はまだまだ強いと言わざるを得ません。(私の知る範囲でも、漢方と鍼灸への無理解を嘆きながらもホメオパシーはただのプラセボと断じている方もいるくらいですので…。人というのは手前勝手なものです)
どういう治療法を好むか、各人による考えは様々です。いいものはなんでも使うという発言もあり、まさにその通りなのですが、その治療法を本当に理解しているか、その理解度もまた大きく影響するわけです。
(この辺りはその違いを説明するのが本当に難しく、いわゆる「折衷」と「多元」の根本的な相違点ということになります。いい加減に「何でもいいよ!」ではありません、「吟味して選択する」という責任ある姿勢が大切なのです。こうした姿勢が貫けないとインチキやカルトの罠にはまってしまうのかもしれません。何にもまして統合医療にはバランス感覚が重要であると思っています)
tougouiryo at 2022年07月18日14:40|この記事のURL│Comments(0)
統合医療臨床の実際 栄養療法とホメオパシーの併用
今回は、統合医療臨床の実際例をご紹介しましょう。
50代女性、冷えのぼせ、動悸、不眠、イライラ感、などの更年期障害を主訴に来院されました。
当院受診前も、同症状にて漢方専門クリニックにて漢方処方(加味逍遙散・当帰芍薬散・抑肝散・酸棗仁湯等)、ならびに鍼灸院にて鍼灸治療を継続していたが、症状の改善が認められないため、当院を来院されました。
まずは栄養状態のチェック希望でしたので、食事内容の記録表に加え、採血検査にてビタミン・ミネラルの栄養チェックを行いました。
結果から、鉄・亜鉛・ビタミンD等の栄養素が少なく、主訴との関連も強く示唆されたため、サプリメントにて補充をおすすめしました。
時に困っていた動悸に関しては、循環器専門の他院にて既に精査されていましたが、特に問題なしとのことでしたので、コエンザイムQ10(還元型)を通常量より増量して処方しました。
さらに食事内容でも、タンパク質の摂取が少なかったので、改善するよう指導しましたが、なかなか増量できないということでしたので、プロテインでの摂取をおすすめしました。
これらの栄養補充、さらには食事内容の改善に積極的に取り組まれたことにより、冷えのぼせ、動悸、イライラ感が改善され、自覚的にかなり元気も出てきたようでした。とくに動悸に関しては、心臓の病気ではないかと精査してからも心配が続いていたことから、コエンザイムをはじめとした栄養が原因だったこともわかり、たいへんよろこばれていました。
しかし、数回の診療のなかで問診を進めていくと、家庭内、とくに夫への不満が強くあるようで、それによる機嫌の悪さから、症状の悪化が始まったようでした。従来、エアロビなど体を激しく動かす運動が好きで、これによりストレスの発散を行っていましたが、コロナ禍において、発散も十分にできなかったことが今回の症状悪化の主な原因と推測されました。
こうしたベースがあることから、再度、増悪してしまうことも考えられ、加えて、睡眠状態の改善は今一つだったこともあり、ホメオパシーをおすすめしたところ、大変興味あるということだったので、レメディを試してみることになりました。
問診内容と症状の経過などから、レパートリゼーションを施行し、ヨーロッパコウイカ由来のSepia30Cを選択し、1日1粒3日間、連続投与しました。
これにより、毎日の気持ちがとても楽になり、家族への対応もイライラせずにできるようになり、体調全部が良くなったような感じと表現されていました。また睡眠状態も著明に改善し、中途覚醒、早朝覚醒がなくなり、熟眠感を得られるようになったとのことでした。
更年期女性の諸症状に対しては、漢方や鍼灸といった東洋医学的な方法論が一般的ですが、この例にもあるように栄養(とくに蛋白やミネラル)の不足が、実は大きな原因となっていることも少なくありません。
また、治療者側の東洋医学への愛着が、かえってサプリメントなどの栄養補充アプローチへのアクセスに待ったをかけてしまっているケースも、現代の日本では少なくないように感じます。(実は統合医療における現状の大きな問題の一つと考えています)
漢方に関しては20年ほど前に、私が漢方外来を開始した時に感じたような、医師による漢方や東洋医学への偏見などはほぼ消失しているように思いますが、その他の代替医療(例えばホメオパシーなど)に対してはまだまだの状況です。
とりわけ欧米諸国でのホメオパシーの復権にもかかわらず、わが国では医師の偏見と無理解はまだまだ強いと言わざるを得ません。
本例をはじめとしていわゆる不定愁訴に対しては、ホメオパシーの著効する例も稀ではないので、そうしたケースも今後、またここでご紹介していきたいと思います。
代替医療というと東洋医学系がどうしてもメインになりますが、それ以外にも多くの方法があることを知っていただきたいと思い、こうした例を紹介しました。
50代女性、冷えのぼせ、動悸、不眠、イライラ感、などの更年期障害を主訴に来院されました。
当院受診前も、同症状にて漢方専門クリニックにて漢方処方(加味逍遙散・当帰芍薬散・抑肝散・酸棗仁湯等)、ならびに鍼灸院にて鍼灸治療を継続していたが、症状の改善が認められないため、当院を来院されました。
まずは栄養状態のチェック希望でしたので、食事内容の記録表に加え、採血検査にてビタミン・ミネラルの栄養チェックを行いました。
結果から、鉄・亜鉛・ビタミンD等の栄養素が少なく、主訴との関連も強く示唆されたため、サプリメントにて補充をおすすめしました。
時に困っていた動悸に関しては、循環器専門の他院にて既に精査されていましたが、特に問題なしとのことでしたので、コエンザイムQ10(還元型)を通常量より増量して処方しました。
さらに食事内容でも、タンパク質の摂取が少なかったので、改善するよう指導しましたが、なかなか増量できないということでしたので、プロテインでの摂取をおすすめしました。
これらの栄養補充、さらには食事内容の改善に積極的に取り組まれたことにより、冷えのぼせ、動悸、イライラ感が改善され、自覚的にかなり元気も出てきたようでした。とくに動悸に関しては、心臓の病気ではないかと精査してからも心配が続いていたことから、コエンザイムをはじめとした栄養が原因だったこともわかり、たいへんよろこばれていました。
しかし、数回の診療のなかで問診を進めていくと、家庭内、とくに夫への不満が強くあるようで、それによる機嫌の悪さから、症状の悪化が始まったようでした。従来、エアロビなど体を激しく動かす運動が好きで、これによりストレスの発散を行っていましたが、コロナ禍において、発散も十分にできなかったことが今回の症状悪化の主な原因と推測されました。
こうしたベースがあることから、再度、増悪してしまうことも考えられ、加えて、睡眠状態の改善は今一つだったこともあり、ホメオパシーをおすすめしたところ、大変興味あるということだったので、レメディを試してみることになりました。
問診内容と症状の経過などから、レパートリゼーションを施行し、ヨーロッパコウイカ由来のSepia30Cを選択し、1日1粒3日間、連続投与しました。
これにより、毎日の気持ちがとても楽になり、家族への対応もイライラせずにできるようになり、体調全部が良くなったような感じと表現されていました。また睡眠状態も著明に改善し、中途覚醒、早朝覚醒がなくなり、熟眠感を得られるようになったとのことでした。
更年期女性の諸症状に対しては、漢方や鍼灸といった東洋医学的な方法論が一般的ですが、この例にもあるように栄養(とくに蛋白やミネラル)の不足が、実は大きな原因となっていることも少なくありません。
また、治療者側の東洋医学への愛着が、かえってサプリメントなどの栄養補充アプローチへのアクセスに待ったをかけてしまっているケースも、現代の日本では少なくないように感じます。(実は統合医療における現状の大きな問題の一つと考えています)
漢方に関しては20年ほど前に、私が漢方外来を開始した時に感じたような、医師による漢方や東洋医学への偏見などはほぼ消失しているように思いますが、その他の代替医療(例えばホメオパシーなど)に対してはまだまだの状況です。
とりわけ欧米諸国でのホメオパシーの復権にもかかわらず、わが国では医師の偏見と無理解はまだまだ強いと言わざるを得ません。
本例をはじめとしていわゆる不定愁訴に対しては、ホメオパシーの著効する例も稀ではないので、そうしたケースも今後、またここでご紹介していきたいと思います。
代替医療というと東洋医学系がどうしてもメインになりますが、それ以外にも多くの方法があることを知っていただきたいと思い、こうした例を紹介しました。
tougouiryo at 2022年01月24日13:24|この記事のURL│Comments(0)
統合医療診療の実際(3)突発性難聴・耳鳴り・不眠
夏の暑さを背景にして、突発性難聴が発症した人も多いように感じます。そこで、30代女性Bさんの症例をご紹介します。
数日前、突然の耳の聞こえの悪さを自覚し、耳鼻科を受診したところ「突発性難聴」の診断を受けました。聴力検査などの検査を行い、ATP製剤、ビタミンB12、循環改善薬などが処方されましたが、完全に回復という感じではありませんでした。
経過観察での聴力検査において、低音域の若干の改善を認めるものの、「片耳が覆いかぶさったような感じ」が続き、聞こえにくさを強く自覚する状態でした。以前、後鼻漏がひどかったので、当院にて上咽頭治療をしていたことから、なんとか改善しないものかと受診されました。
左耳の強い耳鳴りと、「何かがかぶさったような」聞こえにくさの訴えに対して、全身の緊張を解く目的での鍼を施術してから、左耳に対して、耳介周囲への刺絡と、直接灸を施行。
折からの頭頸部のむくみも強くあったことから、排出される瘀血の量も多く、施術中においても自覚症状の耳鳴りはみるみる改善を認めました。
さらに灸を加えた後には、聞こえ方も著明に改善。状態が大きく変化したことを喜ばれて、施術を終えました。ただこれだけでは、元の状態に戻りかねないので、既に処方されている薬剤の増強を目的として、ビタミンB群を多めにしたマルチビタミンと、ATPの更なる増産をはかってコエンザイムQ10(電子伝達系の最終段階でATP産生を促進します)を飲んでいただくことにしました。(ATP産生という観点から5ALAなども有効であるかもしれません)
また眠りの浅さから易疲労もあったので、サプリメントとしてメラトニンも加え睡眠状態の改善も図りました。
4日後の再診時には、聞こえの悪さ等の自覚はかなり改善され、耳鼻科での検査でも改善を認める結果が出ていたこともあり、大変喜ばれておられました。
以後、1週間後に再度加療し、耳鳴りや聞こえの悪さは全くなく、発症前と何ら変わらない、とのことでしたので終診となりました。
また睡眠に関しても、メラトニンにより中途覚醒が劇的に減少し、起床時の熟眠感を得られ、とても喜ばれておりました。
Bさんのように、夏の暑さのためか、ビタミンB群の劇的な減少と知らずに進行した脱水を背景として突発性難聴の方がこの時期、増えているようです。また睡眠時の発汗により脱水が生じ、起床時に腰痛などの身体の痛みが出たり、易疲労に限らず、色々な不調が発症してきます。
大きな症状の発症の前に、ビタミン摂取を含めた十分な栄養と、充実した睡眠時間の確保に心掛けたいものです。生じた症状をターゲットに治療を開始するばかりではなく、予想しうる不調を予め想定することで、より健康度の高い生活が送れるのではないかと、統合医療の観点からは考えられます。
数日前、突然の耳の聞こえの悪さを自覚し、耳鼻科を受診したところ「突発性難聴」の診断を受けました。聴力検査などの検査を行い、ATP製剤、ビタミンB12、循環改善薬などが処方されましたが、完全に回復という感じではありませんでした。
経過観察での聴力検査において、低音域の若干の改善を認めるものの、「片耳が覆いかぶさったような感じ」が続き、聞こえにくさを強く自覚する状態でした。以前、後鼻漏がひどかったので、当院にて上咽頭治療をしていたことから、なんとか改善しないものかと受診されました。
左耳の強い耳鳴りと、「何かがかぶさったような」聞こえにくさの訴えに対して、全身の緊張を解く目的での鍼を施術してから、左耳に対して、耳介周囲への刺絡と、直接灸を施行。
折からの頭頸部のむくみも強くあったことから、排出される瘀血の量も多く、施術中においても自覚症状の耳鳴りはみるみる改善を認めました。
さらに灸を加えた後には、聞こえ方も著明に改善。状態が大きく変化したことを喜ばれて、施術を終えました。ただこれだけでは、元の状態に戻りかねないので、既に処方されている薬剤の増強を目的として、ビタミンB群を多めにしたマルチビタミンと、ATPの更なる増産をはかってコエンザイムQ10(電子伝達系の最終段階でATP産生を促進します)を飲んでいただくことにしました。(ATP産生という観点から5ALAなども有効であるかもしれません)
また眠りの浅さから易疲労もあったので、サプリメントとしてメラトニンも加え睡眠状態の改善も図りました。
4日後の再診時には、聞こえの悪さ等の自覚はかなり改善され、耳鼻科での検査でも改善を認める結果が出ていたこともあり、大変喜ばれておられました。
以後、1週間後に再度加療し、耳鳴りや聞こえの悪さは全くなく、発症前と何ら変わらない、とのことでしたので終診となりました。
また睡眠に関しても、メラトニンにより中途覚醒が劇的に減少し、起床時の熟眠感を得られ、とても喜ばれておりました。
Bさんのように、夏の暑さのためか、ビタミンB群の劇的な減少と知らずに進行した脱水を背景として突発性難聴の方がこの時期、増えているようです。また睡眠時の発汗により脱水が生じ、起床時に腰痛などの身体の痛みが出たり、易疲労に限らず、色々な不調が発症してきます。
大きな症状の発症の前に、ビタミン摂取を含めた十分な栄養と、充実した睡眠時間の確保に心掛けたいものです。生じた症状をターゲットに治療を開始するばかりではなく、予想しうる不調を予め想定することで、より健康度の高い生活が送れるのではないかと、統合医療の観点からは考えられます。
tougouiryo at 2022年01月05日07:00|この記事のURL│Comments(0)
統合医療診療の実際(2)がん患者さんへの対応
60代女性、乳がんの術後で化学療法中のAさんです。発症前からあまり「肉類」は食べなかったとのことで、ごはん・野菜を中心とした食事だったようです。術後も、肉は体に悪いのではないかと思い、避けていたということでした。
化学療法による体調の不良と、現状に対しての不安や医療への不信など、精神的ストレスを強く抱えている状態で受診されました。それでも一時期は相当のストレスだったようで、心理カウンセリングにてかなり改善の方向には進んでいるようでしたが、とにかく心身ともにエネルギーが不足しているといった印象でした。
こうした方には当院では、まず「食事記録」をとって頂きます。どのようなものを毎日食べているかを、詳細にチェックします。
これによりAさんは、肉類をはじめとしたタンパク質の摂取が極めて少ないことが分かりました。であれば、当然、糖質過多もあるわけです。
一般に肉類を以前からあまり食べ慣れていない方にとっては、タンパク質をとれ、といってもなかなか急には摂取できないのが現状です。
しかし、そうした方でも、卵や魚などは、比較的摂取しやすいようです。なかでもアミノ酸スコアを考慮すると、卵はかなり有効です。1日に2〜3個いけるとかなり体調改善が実感されてきます(オムレツなどが食べやすいようです)。
それでも十分なタンパク摂取は難しいという方も少なくありません。こうした場合、液体でのプロテイン摂取をおすすめします。いわゆる「プロテイン」です。最近は、かなり味のバリエーションも多く、各社特徴が様々あるのですが、基本的には、いくつか試してみて、飲めそうなものを選択してもらうというのが良いようです。(もっと栄養状態が悪いようであれば当然「アミノ酸」です。これなら吸収にあたって負担がありません)
無理に食べていたご飯(糖質)の量を少し減らしてでも、タンパク質摂取を心掛けると、体調はめきめき改善することは少なくありません。プロテインで慣れてきたら、卵などの食品でのタンパク摂取にも抵抗がなくなるようです。逆に、こちらにエネルギーがない時はたんぱくを摂取しようという気になりません。つまり、摂取する側の生命エネルギーの強度にしたがって、摂取タンパク量は規定されてしまうわけです。こうした関係を、私はエネルギーバランスの法則と呼んでおります。(法則といっても当然経験則なのですが…)
また、これと同時に、ビタミン・ミネラルの摂取も必要です。当院では十分なサプリメントの摂取も併せておすすめします。これまでの食事内容から、エネルギー代謝に不可欠なビタミンB群の不足が多く認められ、これが十分でないとせっかく摂取したタンパクも有効利用できないわけです(特にビタミンB6)。
こうした栄養の補給により、これまでの化学療法などの治療の続行を躊躇っていた方でも、前向きに治療続行が可能になってきます。
A さんも、こうした食事内容の改善によって力がついてきたということで、現代医療との併用に、日々前向きに取り組まれています。
こうしてAさんは、タンパク質の意図的な増量による、栄養状態の改善により、抑うつ気分が解消され、現状の治療に対しても前向きに取り組めるようになってきました。
表現しがたい全身の不快感や、落ち込みの解消により、今度は、具体的な体の他の不調が現れます。
頸や肩の痛み・コリ、背中の痛み、腰痛など、局所的な症状です。身体としては、言葉で表現することができない状態から、はっきりと表現できる状況へと変化していったとみることができるでしょう。(表現できるようになるだけでも大きな進歩です。一般に医療難民の方は多くが表現困難な状態で、医師患者双方にとっての解決困難さの大本といってもよいでしょう)
こうした症状の時には、当院ではまず鍼灸をお勧めします。特に、当院の特徴としては「刺絡」を用いるというところです。
出血を伴う手技ですので、行われているところも少ない技法で、強い治療と思われて敬遠されている面もありますが、実際はそうではありません。施術に伴う出血量も、いわゆる通常の採血量よりも少ないですし、治療の強さを加減することで、幅広い不調に対応することもできます。
また、この治療の適応でない状態であれば、通常の細い針による鍼灸や、皮膚を刺すことのない「てい鍼」なども併用します。腹部の調整としては、このてい鍼を用いた腹部打鍼を通常、行っています。(さらにはファシア組織の重積やひきつれが原因と考えられる場合はエコー下ハイドロリリースなども行います)
Aさんに対しても、栄養状態の十分な改善を確認してから、痛みやコリの場所に加え、「カッサ」を用いて瘀血のある場所(痧点)をあぶりだして(こすりだして)それらに少量の刺絡を施術します。
これによりコリや痛みの改善のみならず、脊椎近傍の静脈(バトソン静脈叢)の血流改善をはかることで、腹部内臓に出入りする交感神経の異常な刺激を調節することができると考えています。
またそうした神経の走行を伴っての、ファッシア(膜)の異常な緊張も緩和できるので、内臓に良い影響を与えられるという治療です。ちなみに刺絡によってとれる瘀血は、このファシア由来と考えております(ブログ内・「臨床ファシア瘀血学」参照)
こうした治療により、Aさんの首や背部の痛みは改善され、自覚症状が改善されるだけではなく、内臓の状態、ひいては全身の免疫状態をも、改善に導くことも可能になると考えます。
また刺絡は主に背部を中心に治療をしていますが、腹部へのアプローチとしては、てい鍼を用いて調整を行い、身体の前面と後面の両面から、内臓を含めた全身へと栄養を及ぼす治療を行っています。(また瘀血が発生しやすい頸部へのアプローチとしては上咽頭治療EATも並行して行うことがあります)
Aさんは現在も、栄養状態の改善に引き続き、こうした刺絡療法を中心とした鍼灸治療を継続しておられ、化学療法の併用と再発防止に努めていらっしゃいます。
(なお本例は、年齢性別など複数のエピソードを融合させた典型例ですので、特定の個人のエピソードを示すものではないことをお断りさせていただきます)
化学療法による体調の不良と、現状に対しての不安や医療への不信など、精神的ストレスを強く抱えている状態で受診されました。それでも一時期は相当のストレスだったようで、心理カウンセリングにてかなり改善の方向には進んでいるようでしたが、とにかく心身ともにエネルギーが不足しているといった印象でした。
こうした方には当院では、まず「食事記録」をとって頂きます。どのようなものを毎日食べているかを、詳細にチェックします。
これによりAさんは、肉類をはじめとしたタンパク質の摂取が極めて少ないことが分かりました。であれば、当然、糖質過多もあるわけです。
一般に肉類を以前からあまり食べ慣れていない方にとっては、タンパク質をとれ、といってもなかなか急には摂取できないのが現状です。
しかし、そうした方でも、卵や魚などは、比較的摂取しやすいようです。なかでもアミノ酸スコアを考慮すると、卵はかなり有効です。1日に2〜3個いけるとかなり体調改善が実感されてきます(オムレツなどが食べやすいようです)。
それでも十分なタンパク摂取は難しいという方も少なくありません。こうした場合、液体でのプロテイン摂取をおすすめします。いわゆる「プロテイン」です。最近は、かなり味のバリエーションも多く、各社特徴が様々あるのですが、基本的には、いくつか試してみて、飲めそうなものを選択してもらうというのが良いようです。(もっと栄養状態が悪いようであれば当然「アミノ酸」です。これなら吸収にあたって負担がありません)
無理に食べていたご飯(糖質)の量を少し減らしてでも、タンパク質摂取を心掛けると、体調はめきめき改善することは少なくありません。プロテインで慣れてきたら、卵などの食品でのタンパク摂取にも抵抗がなくなるようです。逆に、こちらにエネルギーがない時はたんぱくを摂取しようという気になりません。つまり、摂取する側の生命エネルギーの強度にしたがって、摂取タンパク量は規定されてしまうわけです。こうした関係を、私はエネルギーバランスの法則と呼んでおります。(法則といっても当然経験則なのですが…)
また、これと同時に、ビタミン・ミネラルの摂取も必要です。当院では十分なサプリメントの摂取も併せておすすめします。これまでの食事内容から、エネルギー代謝に不可欠なビタミンB群の不足が多く認められ、これが十分でないとせっかく摂取したタンパクも有効利用できないわけです(特にビタミンB6)。
こうした栄養の補給により、これまでの化学療法などの治療の続行を躊躇っていた方でも、前向きに治療続行が可能になってきます。
A さんも、こうした食事内容の改善によって力がついてきたということで、現代医療との併用に、日々前向きに取り組まれています。
こうしてAさんは、タンパク質の意図的な増量による、栄養状態の改善により、抑うつ気分が解消され、現状の治療に対しても前向きに取り組めるようになってきました。
表現しがたい全身の不快感や、落ち込みの解消により、今度は、具体的な体の他の不調が現れます。
頸や肩の痛み・コリ、背中の痛み、腰痛など、局所的な症状です。身体としては、言葉で表現することができない状態から、はっきりと表現できる状況へと変化していったとみることができるでしょう。(表現できるようになるだけでも大きな進歩です。一般に医療難民の方は多くが表現困難な状態で、医師患者双方にとっての解決困難さの大本といってもよいでしょう)
こうした症状の時には、当院ではまず鍼灸をお勧めします。特に、当院の特徴としては「刺絡」を用いるというところです。
出血を伴う手技ですので、行われているところも少ない技法で、強い治療と思われて敬遠されている面もありますが、実際はそうではありません。施術に伴う出血量も、いわゆる通常の採血量よりも少ないですし、治療の強さを加減することで、幅広い不調に対応することもできます。
また、この治療の適応でない状態であれば、通常の細い針による鍼灸や、皮膚を刺すことのない「てい鍼」なども併用します。腹部の調整としては、このてい鍼を用いた腹部打鍼を通常、行っています。(さらにはファシア組織の重積やひきつれが原因と考えられる場合はエコー下ハイドロリリースなども行います)
Aさんに対しても、栄養状態の十分な改善を確認してから、痛みやコリの場所に加え、「カッサ」を用いて瘀血のある場所(痧点)をあぶりだして(こすりだして)それらに少量の刺絡を施術します。
これによりコリや痛みの改善のみならず、脊椎近傍の静脈(バトソン静脈叢)の血流改善をはかることで、腹部内臓に出入りする交感神経の異常な刺激を調節することができると考えています。
またそうした神経の走行を伴っての、ファッシア(膜)の異常な緊張も緩和できるので、内臓に良い影響を与えられるという治療です。ちなみに刺絡によってとれる瘀血は、このファシア由来と考えております(ブログ内・「臨床ファシア瘀血学」参照)
こうした治療により、Aさんの首や背部の痛みは改善され、自覚症状が改善されるだけではなく、内臓の状態、ひいては全身の免疫状態をも、改善に導くことも可能になると考えます。
また刺絡は主に背部を中心に治療をしていますが、腹部へのアプローチとしては、てい鍼を用いて調整を行い、身体の前面と後面の両面から、内臓を含めた全身へと栄養を及ぼす治療を行っています。(また瘀血が発生しやすい頸部へのアプローチとしては上咽頭治療EATも並行して行うことがあります)
Aさんは現在も、栄養状態の改善に引き続き、こうした刺絡療法を中心とした鍼灸治療を継続しておられ、化学療法の併用と再発防止に努めていらっしゃいます。
(なお本例は、年齢性別など複数のエピソードを融合させた典型例ですので、特定の個人のエピソードを示すものではないことをお断りさせていただきます)
tougouiryo at 2022年01月04日07:00|この記事のURL│Comments(0)
統合医療診療の実際
本年は、統合医療の診療における実例を求められることが多いので、ここでもご紹介しましょう。
60代女性の血液疾患の方。
当院の受診歴は2年ほどで、大学病院での診療を受けながらの統合医療併用を希望されて来院されました。化学療法と併用する形で、栄養補充のサプリメントと漢方処方に加えて、体調管理を目的とした鍼灸治療を行っていました。
化学療法の進展や、健康状態の変化に伴い、様々なアプローチを行ってきましたが、最近は、白血球、血小板の大幅な低下を伴う汎血球減少により、鍼灸などの侵襲的な治療が行えずにいました。ご自分でも何か健康に良いことを、ということで、食べ物などの工夫に加え、腰腹を中心とした身体の温めを丁寧に行っておりました。
そうした中でも、化学療法との併用、並びに原疾患による体調の変動が激しく、お自分で行っているセルフケアの方法に不安を抱えるようになってきました。当院でも非侵襲的な治療を中心に行っていたので、何か、現状を肯定する方法はないものかと思い、久しぶりに良導絡を奥から引っ張り出してきました。治療法としても有効ですが、経絡(良導絡)の様子を知るには簡便で、とても良い方法です。
ファッシアの研究や勉強をするようになって、さらにこの良導絡の意味するところが明確になっていたので、理論的に再評価していたところでもありました。(まあ厳密にファッシアということであれば他にもっと良い計測方法はあるのでしょうが、昭和の定番「良導絡」はやはり不滅です)
計測すると肝経(F2) 胃経(F6)の高値と、腎経の低値ならびに左右の乖離が測定されました。腹診においても胃部と胸脇部が固く触れる所見で、刺さない鍼である打鍼により軟化するものの、良導絡の測定結果を示すものとして捉えるができます。
ご家庭で常に温めているところを中心にお灸などで温め、瘀血が疑われところに軽めのカッピングをかけるなどの非侵襲的なアプローチを行い、施術後に再度、測定を行いました。
これにより、施術前の値が落ち着きデータの左右差の改善も認められ、セルフケアにおける腎への温めの効果も肯定的にとらえることができ、大変喜んでおられました。
いろいろな検査機器はありますが、こうしたセルフケアをサポートする役割もとても大切なものです。当然こうした電気的な変化は病態把握にとっても重要な情報ですが、日々の治療やセルフケアの再評価としても、見直す良い機会にもなりました。
(なお本例は、年齢性別など複数のエピソードを融合させた典型例ですので、特定の個人のエピソードを示すものではないことをお断りさせていただきます)
60代女性の血液疾患の方。
当院の受診歴は2年ほどで、大学病院での診療を受けながらの統合医療併用を希望されて来院されました。化学療法と併用する形で、栄養補充のサプリメントと漢方処方に加えて、体調管理を目的とした鍼灸治療を行っていました。
化学療法の進展や、健康状態の変化に伴い、様々なアプローチを行ってきましたが、最近は、白血球、血小板の大幅な低下を伴う汎血球減少により、鍼灸などの侵襲的な治療が行えずにいました。ご自分でも何か健康に良いことを、ということで、食べ物などの工夫に加え、腰腹を中心とした身体の温めを丁寧に行っておりました。
そうした中でも、化学療法との併用、並びに原疾患による体調の変動が激しく、お自分で行っているセルフケアの方法に不安を抱えるようになってきました。当院でも非侵襲的な治療を中心に行っていたので、何か、現状を肯定する方法はないものかと思い、久しぶりに良導絡を奥から引っ張り出してきました。治療法としても有効ですが、経絡(良導絡)の様子を知るには簡便で、とても良い方法です。
ファッシアの研究や勉強をするようになって、さらにこの良導絡の意味するところが明確になっていたので、理論的に再評価していたところでもありました。(まあ厳密にファッシアということであれば他にもっと良い計測方法はあるのでしょうが、昭和の定番「良導絡」はやはり不滅です)
計測すると肝経(F2) 胃経(F6)の高値と、腎経の低値ならびに左右の乖離が測定されました。腹診においても胃部と胸脇部が固く触れる所見で、刺さない鍼である打鍼により軟化するものの、良導絡の測定結果を示すものとして捉えるができます。
ご家庭で常に温めているところを中心にお灸などで温め、瘀血が疑われところに軽めのカッピングをかけるなどの非侵襲的なアプローチを行い、施術後に再度、測定を行いました。
これにより、施術前の値が落ち着きデータの左右差の改善も認められ、セルフケアにおける腎への温めの効果も肯定的にとらえることができ、大変喜んでおられました。
いろいろな検査機器はありますが、こうしたセルフケアをサポートする役割もとても大切なものです。当然こうした電気的な変化は病態把握にとっても重要な情報ですが、日々の治療やセルフケアの再評価としても、見直す良い機会にもなりました。
(なお本例は、年齢性別など複数のエピソードを融合させた典型例ですので、特定の個人のエピソードを示すものではないことをお断りさせていただきます)
tougouiryo at 2022年01月03日09:50|この記事のURL│Comments(0)
更年期症状:小さな診療所から(6)改
今回は女性特有の症状を考えていきましょう。治療法の選択にも、各人それぞれのクセがあるようです。
50代女性Dさん、冷えのぼせ、動悸、不眠、イライラ感、などの更年期障害を主訴に来院されました。当院受診前も、同症状にて漢方専門クリニックにて漢方処方(加味逍遙散・当帰芍薬散・抑肝散・酸棗仁湯等)、ならびに鍼灸院にて鍼灸治療を継続していたが、症状の改善が認められないため、当院を来院されました。
まずは栄養状態のチェック希望でしたので、食事内容の記録表に加え、採血検査にてビタミン・ミネラルの栄養チェックを行いました。(当院では普段の食事内容を記録して頂くことを基本にしています)
結果から、鉄・亜鉛・ビタミンD等の栄養素が少なく、主訴との関連も強く示唆されたため、サプリメントにて補充をおすすめしました。
時に困っていた動悸に関しては、循環器専門の他院にて既に精査されていましたが、特に問題なしとのことでしたので、コエンザイムQ10(還元型)を通常量より増量して処方しました。
さらに食事内容でも、タンパク質の摂取が少なかったので、改善するよう指導しましたが、なかなか増量できないということでしたので、プロテインでの摂取をおすすめしました。なお液体タンパクの摂取に伴い、カルシウムの補充は非常に重要です。
これらの栄養補充、さらには食事内容の改善に積極的に取り組まれたことにより、冷えのぼせ、動悸、イライラ感が改善され、自覚的にかなり元気も出てきたようでした。とくに動悸に関しては、心臓の病気ではないかと精査してからも心配が続いていたことから、コエンザイムをはじめとした栄養が原因だったこともわかり、たいへんよろこばれていました。
しかし、数回の診療のなかで問診を進めていくと、家庭内、とくに夫への不満が強くあるようで、それによる機嫌の悪さから、症状の悪化が始まったようでした。従来、エアロビなど体を激しく動かす運動が好きで、これによりストレスの発散を行っていましたが、コロナ禍において、発散も十分にできなかったことが今回の症状悪化の主な原因と推測されました。
こうしたベースがあることから、再度、増悪してしまうことも考えられ、加えて、睡眠状態の改善は今一つだったこともあり、ホメオパシーをおすすめしたところ、大変興味あるということだったので、レメディを試してみることになりました。
問診内容と症状の経過などから、レパートリゼーション(レメディ選択)を施行し、ヨーロッパコウイカ由来のSepia30Cを選択し、1日1粒3日間、連続投与しました。
これにより、毎日の気持ちがとても楽になり、家族への対応もイライラせずにできるようになり、体調全部が良くなったような感じと表現されていました。また睡眠状態も著明に改善し、中途覚醒、早朝覚醒がなくなり、熟眠感を得られるようになったとのことでした。
更年期女性の諸症状に対しては、漢方や鍼灸といった東洋医学的な方法論が一般的ですが、この例にもあるように栄養(とくに蛋白やミネラル)の不足が、実は大きな原因となっていることも少なくありません。
また、治療者側の東洋医学への愛着が、かえってサプリメントなどの栄養補充アプローチへのアクセスに待ったをかけてしまっているケースも、現代の日本では少なくないように感じます。(実は統合医療における現状の大きな問題の一つと考えています)
漢方に関しては20年ほど前に、私が漢方外来を開始した時に感じたような、医師による漢方や東洋医学への偏見などはほぼ消失しているように思いますが、その他の代替医療(例えばホメオパシーなど)に対してはまだまだの状況です。
とりわけ欧米諸国でのホメオパシーの復権にもかかわらず、わが国では医師の偏見と無理解はまだまだ強いと言わざるを得ません。
どういう治療法を好むか、各人による考えは様々です。いいものはなんでも使うという発言もあり、誠にその通りなのですが、その治療法を本当に理解しているか、その理解度もまた大きく影響するわけです。
7月27日まで当院は休診となります。なお、7月28日より予約受付再開します。診療も28日からですのでお間違いなく。
50代女性Dさん、冷えのぼせ、動悸、不眠、イライラ感、などの更年期障害を主訴に来院されました。当院受診前も、同症状にて漢方専門クリニックにて漢方処方(加味逍遙散・当帰芍薬散・抑肝散・酸棗仁湯等)、ならびに鍼灸院にて鍼灸治療を継続していたが、症状の改善が認められないため、当院を来院されました。
まずは栄養状態のチェック希望でしたので、食事内容の記録表に加え、採血検査にてビタミン・ミネラルの栄養チェックを行いました。(当院では普段の食事内容を記録して頂くことを基本にしています)
結果から、鉄・亜鉛・ビタミンD等の栄養素が少なく、主訴との関連も強く示唆されたため、サプリメントにて補充をおすすめしました。
時に困っていた動悸に関しては、循環器専門の他院にて既に精査されていましたが、特に問題なしとのことでしたので、コエンザイムQ10(還元型)を通常量より増量して処方しました。
さらに食事内容でも、タンパク質の摂取が少なかったので、改善するよう指導しましたが、なかなか増量できないということでしたので、プロテインでの摂取をおすすめしました。なお液体タンパクの摂取に伴い、カルシウムの補充は非常に重要です。
これらの栄養補充、さらには食事内容の改善に積極的に取り組まれたことにより、冷えのぼせ、動悸、イライラ感が改善され、自覚的にかなり元気も出てきたようでした。とくに動悸に関しては、心臓の病気ではないかと精査してからも心配が続いていたことから、コエンザイムをはじめとした栄養が原因だったこともわかり、たいへんよろこばれていました。
しかし、数回の診療のなかで問診を進めていくと、家庭内、とくに夫への不満が強くあるようで、それによる機嫌の悪さから、症状の悪化が始まったようでした。従来、エアロビなど体を激しく動かす運動が好きで、これによりストレスの発散を行っていましたが、コロナ禍において、発散も十分にできなかったことが今回の症状悪化の主な原因と推測されました。
こうしたベースがあることから、再度、増悪してしまうことも考えられ、加えて、睡眠状態の改善は今一つだったこともあり、ホメオパシーをおすすめしたところ、大変興味あるということだったので、レメディを試してみることになりました。
問診内容と症状の経過などから、レパートリゼーション(レメディ選択)を施行し、ヨーロッパコウイカ由来のSepia30Cを選択し、1日1粒3日間、連続投与しました。
これにより、毎日の気持ちがとても楽になり、家族への対応もイライラせずにできるようになり、体調全部が良くなったような感じと表現されていました。また睡眠状態も著明に改善し、中途覚醒、早朝覚醒がなくなり、熟眠感を得られるようになったとのことでした。
更年期女性の諸症状に対しては、漢方や鍼灸といった東洋医学的な方法論が一般的ですが、この例にもあるように栄養(とくに蛋白やミネラル)の不足が、実は大きな原因となっていることも少なくありません。
また、治療者側の東洋医学への愛着が、かえってサプリメントなどの栄養補充アプローチへのアクセスに待ったをかけてしまっているケースも、現代の日本では少なくないように感じます。(実は統合医療における現状の大きな問題の一つと考えています)
漢方に関しては20年ほど前に、私が漢方外来を開始した時に感じたような、医師による漢方や東洋医学への偏見などはほぼ消失しているように思いますが、その他の代替医療(例えばホメオパシーなど)に対してはまだまだの状況です。
とりわけ欧米諸国でのホメオパシーの復権にもかかわらず、わが国では医師の偏見と無理解はまだまだ強いと言わざるを得ません。
どういう治療法を好むか、各人による考えは様々です。いいものはなんでも使うという発言もあり、誠にその通りなのですが、その治療法を本当に理解しているか、その理解度もまた大きく影響するわけです。
弘人, 小池
中央アート出版社
2009-08T
7月27日まで当院は休診となります。なお、7月28日より予約受付再開します。診療も28日からですのでお間違いなく。
tougouiryo at 2021年07月23日08:00|この記事のURL│Comments(0)
睡眠障害 不眠:小さな診療所から(5)改
いよいよオリンピックウィークですね。当院(小池統合医療クリニック)は連休重ねて27日㈫まで休診となります。お間違えなく。ちなみに、28日水曜日から通常診療となります。受付も28日からの開始となります。
いろいろなテーマに飛ぶブログではありますが、連休でもありますので、かつての症例などの紹介を実例から少しご紹介していきましょう。
急速な気分の落ち込みと、眠りの浅さからくる易疲労とで、日ごろの仕事がつらくなり、現在、休職も考えている40代男性Cさんに関して。
東洋医学が体に優しいのではないかと思い、漢方専門薬局で「酸棗仁湯」の処方をもらったものの、あまり効果を感じられず、困っていたところ職場の同僚に勧められて来院されました。
Cさんは、甘いものが好きで、食事もご飯などの主食が中心。脂っこいものや肉などは体に悪いと考え、なるべく野菜を多く食べるような食事内容(とくに根菜類を強く勧められていました)でした。お酒も好きで、特に日本酒を好んでいました。
そこで現状を把握するための血液検査では、たんぱく質の摂取が極めて少なく、糖質過多のため、脂肪肝など内臓脂肪の蓄積を示す結果となりました。
食事記録用紙をもとに、タンパク質を多めに摂取するような食事内容に変更し、代わりに、糖質の制限を心掛けるようにしました。
加えて、ビタミンB群、亜鉛などを強化してマルチビタミンと合わせて摂取していただきました。主訴である「睡眠」に関しては、牛乳を飲むことに加え、メラトニンを処方し、就前に時折服用していた「補中益気湯」などの補剤を夜間は中止していただき、朝の服用に変更しました。(ある種の「元気が出る」と説明される漢方で、不眠になっている例は意外と多いと感じています)
これにより、夜中に3,4回は起きていたのが、1回に減り、熟眠感を得るとともに、朝の目覚めの心地よさを実感するようになってきました。さらに1週間ほどすると体力的にも気分的にも充実した感じが得られ、当初の主訴は1か月もするとほとんどなくなって、以前のように元気に仕事をすることが出来るようになりました。
睡眠障害のパターンはひとそれぞれ。絶対の良い方法というよりは、各人の不眠の状態に基づいた対処法で、栄養摂取の状況と合わせて修正していくことがベストです。
大きな疾患に発展する前に、気が付いた不調からビタミン・ミネラルにより丁寧に体を修正していくという視点が大切です。
本ブログにおける具体的なケース紹介に関しては、年齢や性別など複数のエピソードを融合させた典型例としての例示ですので、特定の個人のエピソードを示すものではないことをお断りさせていただきます。
また、治療法や具体的方策の詳細などの実施に当たっては、専門家ならびに専門の医療機関等のもとで行って下さい。
いろいろなテーマに飛ぶブログではありますが、連休でもありますので、かつての症例などの紹介を実例から少しご紹介していきましょう。
急速な気分の落ち込みと、眠りの浅さからくる易疲労とで、日ごろの仕事がつらくなり、現在、休職も考えている40代男性Cさんに関して。
東洋医学が体に優しいのではないかと思い、漢方専門薬局で「酸棗仁湯」の処方をもらったものの、あまり効果を感じられず、困っていたところ職場の同僚に勧められて来院されました。
Cさんは、甘いものが好きで、食事もご飯などの主食が中心。脂っこいものや肉などは体に悪いと考え、なるべく野菜を多く食べるような食事内容(とくに根菜類を強く勧められていました)でした。お酒も好きで、特に日本酒を好んでいました。
そこで現状を把握するための血液検査では、たんぱく質の摂取が極めて少なく、糖質過多のため、脂肪肝など内臓脂肪の蓄積を示す結果となりました。
食事記録用紙をもとに、タンパク質を多めに摂取するような食事内容に変更し、代わりに、糖質の制限を心掛けるようにしました。
加えて、ビタミンB群、亜鉛などを強化してマルチビタミンと合わせて摂取していただきました。主訴である「睡眠」に関しては、牛乳を飲むことに加え、メラトニンを処方し、就前に時折服用していた「補中益気湯」などの補剤を夜間は中止していただき、朝の服用に変更しました。(ある種の「元気が出る」と説明される漢方で、不眠になっている例は意外と多いと感じています)
これにより、夜中に3,4回は起きていたのが、1回に減り、熟眠感を得るとともに、朝の目覚めの心地よさを実感するようになってきました。さらに1週間ほどすると体力的にも気分的にも充実した感じが得られ、当初の主訴は1か月もするとほとんどなくなって、以前のように元気に仕事をすることが出来るようになりました。
睡眠障害のパターンはひとそれぞれ。絶対の良い方法というよりは、各人の不眠の状態に基づいた対処法で、栄養摂取の状況と合わせて修正していくことがベストです。
大きな疾患に発展する前に、気が付いた不調からビタミン・ミネラルにより丁寧に体を修正していくという視点が大切です。
本ブログにおける具体的なケース紹介に関しては、年齢や性別など複数のエピソードを融合させた典型例としての例示ですので、特定の個人のエピソードを示すものではないことをお断りさせていただきます。
また、治療法や具体的方策の詳細などの実施に当たっては、専門家ならびに専門の医療機関等のもとで行って下さい。
tougouiryo at 2021年07月22日08:00|この記事のURL│Comments(0)
小さな診療所から(4)改:突発性難聴 瘀血刺絡 睡眠障害 脱水
本日のジャングルカンファレンスはオンラインでの開催となります。参加希望の方はこちらからお申込みください。
それでは今回は「難聴」をテーマに頭部おける「瘀血」の症状を考えてみたいと思います。
昨年はたまたまなのか、新型コロナの影響なのか分かりませんが、当院ではずいぶんと突発性難聴の方の相談が多かったように感じました。
ストレスなど様々な原因で発症する突発性難聴に関して、30代女性Bさんの症例をご紹介します。
Bさんは夏の暑さの中、突然の耳の聞こえの悪さを自覚し、耳鼻科を受診したところ「突発性難聴」の診断を受けました。
聴力検査などの検査を行い、ATP製剤、ビタミンB12、循環改善薬などが処方されましたが、完全に回復という感じではありませんでした。
耳鼻科における経過観察での聴力検査において、低音域の若干の改善を認めるものの、「片耳が覆いかぶさったような感じ」が続き、聞こえにくさを強く自覚する状態でした。以前、後鼻漏がひどかったので、当院にて上咽頭治療をしていたことから、なんとか現状から少しでも改善しないものかと受診されました。
左耳の強い耳鳴りと、「何かがかぶさったような」聞こえにくさの訴えに対して、全身の緊張を解く目的での鍼を施術してから、左耳に対して、耳介周囲への刺絡と、直接灸を施行。折からの頭頸部のむくみも強くあったことから、排出される瘀血の量も多く、施術中においても自覚症状の耳鳴りはみるみる改善を認めました。(こうした反応から、多くの疾患同様に突発性難聴においても頭部の「瘀血」が関係していることが示唆されます。たとえ体表からのわずかな穿刺であっても、陰圧によって皮下のファッシア瘀血に影響し、そこでのグロブリンを中心とした炎症性物質を減量・除去することが、症状改善の機序として推測されます)
さらに灸を加えた後には、聞こえ方も著明に改善。大きく変化したことを喜ばれて施術を終えました。ただこれだけでは、元の状態に戻りかねないので、既に処方されている薬剤の増強を目的として、ビタミンB群を多めにしたマルチビタミンと、ATPの更なる増産をはかってコエンザイムQ10(電子伝達系の最終段階でATP産生を促進します)を飲んでいただくことにしました。(鍼灸としての効果にこだわる治療家には受け入れがたい面もあるかと思いますが、刺絡による瘀血除去後、お灸や灸頭鍼が相性が良いようにサプリによる病態改善を目的にした補充は不可欠に感じています。つまり悪いものを除去し、良いもので置換するというイメージです)
また眠りの浅さから易疲労もあったので、メラトニンも加え睡眠状態の改善も図りました。当院ではこの一年、米国の医療機関用のサプリにてメラトニンを導入していますが、その効果はかなりなものと感じています。かなり強力な抗酸化物質としても位置付けられていますが、熟眠感をもたらす自覚症状の変化は、通常の眠剤にはない効果だと思います。(本例ではメラトニンを用いていますが、身心の疲労状況によっては酸棗仁湯なども有効です。症例の体調や環境によって加味しています)
4日後の再診時には、聞こえの悪さ等の自覚はかなり改善され、耳鼻科での検査でも改善を認める結果が出ていたこともあり、大変喜ばれておられました。
以後、1週間後に再度加療し、耳鳴りや聞こえの悪さは全くなく、発症前と何ら変わらない、とのことでしたので終診となりました。
また睡眠に関しても、メラトニンにより中途覚醒が劇的に減少し、起床時の熟眠感を得られ、とても喜ばれておりました。
Bさんのように、夏の暑さのためか、ビタミンB群の劇的な減少と、自覚しないままに進行した脱水を背景として突発性難聴の方が多いように感じます。当然、発症したら早急に耳鼻科受診をお勧めしますが、通常の加療のみではなく栄養補給や鍼灸治療の併用が大変良いように思います。(こうした統合医療的な併用は、なかなか一般のドクターには理解されにくい状況ではありますが、この後、患者意識の高まりの中で広まっていくことが予想されます)
また夏の暑さにより、睡眠時の発汗から脱水が生じ、起床時に腰痛などの身体の痛みが出たり、易疲労に限らず、色々な不調が発症してきます。暑い朝の起床時に限定して、体の痛みやこわばりのような症状があるときは、ファシア部の脱水症状が起因しているように思います。(こうした時は急に起き上がらず、布団の上を何度かゴロゴロと転がってから少しずつ四肢を動かしながら起きると良いです)
本例のような突発性難聴に限らず、大きな症状が発症する前に、ビタミン摂取を含めた十分な栄養と、充実した睡眠時間の確保に心掛けたいものです。
加えて起床時のファシアのこわばりにも気を付けたいものです。
それでは今回は「難聴」をテーマに頭部おける「瘀血」の症状を考えてみたいと思います。
昨年はたまたまなのか、新型コロナの影響なのか分かりませんが、当院ではずいぶんと突発性難聴の方の相談が多かったように感じました。
ストレスなど様々な原因で発症する突発性難聴に関して、30代女性Bさんの症例をご紹介します。
Bさんは夏の暑さの中、突然の耳の聞こえの悪さを自覚し、耳鼻科を受診したところ「突発性難聴」の診断を受けました。
聴力検査などの検査を行い、ATP製剤、ビタミンB12、循環改善薬などが処方されましたが、完全に回復という感じではありませんでした。
耳鼻科における経過観察での聴力検査において、低音域の若干の改善を認めるものの、「片耳が覆いかぶさったような感じ」が続き、聞こえにくさを強く自覚する状態でした。以前、後鼻漏がひどかったので、当院にて上咽頭治療をしていたことから、なんとか現状から少しでも改善しないものかと受診されました。
左耳の強い耳鳴りと、「何かがかぶさったような」聞こえにくさの訴えに対して、全身の緊張を解く目的での鍼を施術してから、左耳に対して、耳介周囲への刺絡と、直接灸を施行。折からの頭頸部のむくみも強くあったことから、排出される瘀血の量も多く、施術中においても自覚症状の耳鳴りはみるみる改善を認めました。(こうした反応から、多くの疾患同様に突発性難聴においても頭部の「瘀血」が関係していることが示唆されます。たとえ体表からのわずかな穿刺であっても、陰圧によって皮下のファッシア瘀血に影響し、そこでのグロブリンを中心とした炎症性物質を減量・除去することが、症状改善の機序として推測されます)
さらに灸を加えた後には、聞こえ方も著明に改善。大きく変化したことを喜ばれて施術を終えました。ただこれだけでは、元の状態に戻りかねないので、既に処方されている薬剤の増強を目的として、ビタミンB群を多めにしたマルチビタミンと、ATPの更なる増産をはかってコエンザイムQ10(電子伝達系の最終段階でATP産生を促進します)を飲んでいただくことにしました。(鍼灸としての効果にこだわる治療家には受け入れがたい面もあるかと思いますが、刺絡による瘀血除去後、お灸や灸頭鍼が相性が良いようにサプリによる病態改善を目的にした補充は不可欠に感じています。つまり悪いものを除去し、良いもので置換するというイメージです)
また眠りの浅さから易疲労もあったので、メラトニンも加え睡眠状態の改善も図りました。当院ではこの一年、米国の医療機関用のサプリにてメラトニンを導入していますが、その効果はかなりなものと感じています。かなり強力な抗酸化物質としても位置付けられていますが、熟眠感をもたらす自覚症状の変化は、通常の眠剤にはない効果だと思います。(本例ではメラトニンを用いていますが、身心の疲労状況によっては酸棗仁湯なども有効です。症例の体調や環境によって加味しています)
4日後の再診時には、聞こえの悪さ等の自覚はかなり改善され、耳鼻科での検査でも改善を認める結果が出ていたこともあり、大変喜ばれておられました。
以後、1週間後に再度加療し、耳鳴りや聞こえの悪さは全くなく、発症前と何ら変わらない、とのことでしたので終診となりました。
また睡眠に関しても、メラトニンにより中途覚醒が劇的に減少し、起床時の熟眠感を得られ、とても喜ばれておりました。
Bさんのように、夏の暑さのためか、ビタミンB群の劇的な減少と、自覚しないままに進行した脱水を背景として突発性難聴の方が多いように感じます。当然、発症したら早急に耳鼻科受診をお勧めしますが、通常の加療のみではなく栄養補給や鍼灸治療の併用が大変良いように思います。(こうした統合医療的な併用は、なかなか一般のドクターには理解されにくい状況ではありますが、この後、患者意識の高まりの中で広まっていくことが予想されます)
また夏の暑さにより、睡眠時の発汗から脱水が生じ、起床時に腰痛などの身体の痛みが出たり、易疲労に限らず、色々な不調が発症してきます。暑い朝の起床時に限定して、体の痛みやこわばりのような症状があるときは、ファシア部の脱水症状が起因しているように思います。(こうした時は急に起き上がらず、布団の上を何度かゴロゴロと転がってから少しずつ四肢を動かしながら起きると良いです)
本例のような突発性難聴に限らず、大きな症状が発症する前に、ビタミン摂取を含めた十分な栄養と、充実した睡眠時間の確保に心掛けたいものです。
加えて起床時のファシアのこわばりにも気を付けたいものです。
tougouiryo at 2021年03月11日08:23|この記事のURL│Comments(0)
小さな診療所から(3)改:刺絡療法・バトソン静脈叢うっ血・腹部打鍼
乳がん術後、化学療法中の様々な不調に関してのケースを見ていきましょう。
60代女性、Aさんです。
タンパク質の意図的な増量により、栄養状態が改善され、抑うつ気分が解消、現状の治療に対しても前向きに取り組めるようになってきました。
表現しがたい全身の不快感や、落ち込みの解消により、今度は、具体的な体の不調が現れます。頸や肩の痛み・コリ、背中の痛み、腰痛など、局所的な症状です。
身体としては、言葉で表現することができない、つらい状態から、はっきりと表現できる状況へと変化していったとみることができるでしょう。
こうした症状の時には、当院ではまず鍼灸をお勧めしています。
特に、当院の特徴としては「刺絡」を用いるというところです。鍼灸・刺絡に関しては、当院では医師である私自身が施術しています。
刺絡は出血を伴う手技ですので、行われているところも少ないのが現状です。一部、強い治療と思われて敬遠されている面もありますが、実際はそうではありません。
治療に伴う出血量も、いわゆる通常の採血量よりも少ないですし、治療の強さを加減することで、幅広い不調に対応することもできます。また安保・福田理論によると、自律神経と免疫の調整が可能で、がんの統合医療として大きな役割を有します。
また、この刺絡治療の適応でない状態であれば、通常の細い針による鍼灸や、皮膚を刺すことのない「てい鍼」なども併用します。
とりわけ、あまり刺絡向きではない腹部の調整としては、このてい鍼を用いた腹部打鍼を通常、行っています。
Aさんに対しても、栄養状態の十分な改善を確認してから、痛みやコリの場所に加え、「カッサ」を用いて瘀血のある場所(痧点)をあぶりだして(こすりだして)それらに少量の刺絡を施術します。
これによりコリや痛みの改善のみならず、脊椎近傍の静脈(バトソン静脈叢)の血流改善をはかることで、腹部内臓に出入りする交感神経の異常な刺激を調節することができると考えています。これは静脈弁を有しないバトソン静脈叢でのうっ血が、背部のうっ血に関与するという考えにより、自律神経の調整(交感神経異常興奮の抑制)を行うというものです。
またそうした神経の走行を伴っての、ファッシアの異常な緊張も緩和できるので、内臓に良い影響を与えられるという治療です。その他、局所的な瘀血も改善されるため、全身の血流改善に幅広く寄与する治療でもあります。(この辺りの詳細な理論は、現在このブログ内で「臨床ファッシア瘀血学」として週に1〜2回で連載しておりますので、お読みいただければ幸いです)
こうした刺絡治療により、Aさんの首や背部の痛みは改善され、自覚症状が改善されるだけではなく、内臓の状態、ひいては全身の免疫状態をも、改善に導くことも可能になると考えます。これはがん治療に限定されるものではなく、その他、関節リウマチなど膠原病や、アトピー性皮膚炎の体質改善にも応用しております。
また刺絡は主に背部を中心に治療をしていますが、腹部へのアプローチとしては、てい鍼を用いて調整を行い、身体の前面と後面の両面から、内臓を含めた全身へと栄養を及ぼす治療を行っています。これは自律神経や血管が、背部から腹部へと回り込む解剖学的知見を応用し、背中を強いアプローチ、腹部をソフトなアプローチとしていることによります。(東洋医学的に陰陽で説明することも可能です)
Aさんは現在も、栄養状態の改善に引き続き、こうした刺絡療法を中心とした鍼灸治療を継続しておられ、化学療法の併用と再発防止に努めていらっしゃいます。
難病治療への刺絡療法は、当院の特徴的治療法とも言えるもので、これまでなかなか改善の見られない症状でお困りの方は、是非一度ご相談ください。(特にへバーデン結節など難治性の関節痛の方にも、漢方薬との併用で、疼痛改善が可能です。こうした症状のケースについても、稿をあらためてご紹介していきたいと思います)
小池統合医療クリニック、お問い合わせはこちらまで
60代女性、Aさんです。
タンパク質の意図的な増量により、栄養状態が改善され、抑うつ気分が解消、現状の治療に対しても前向きに取り組めるようになってきました。
表現しがたい全身の不快感や、落ち込みの解消により、今度は、具体的な体の不調が現れます。頸や肩の痛み・コリ、背中の痛み、腰痛など、局所的な症状です。
身体としては、言葉で表現することができない、つらい状態から、はっきりと表現できる状況へと変化していったとみることができるでしょう。
こうした症状の時には、当院ではまず鍼灸をお勧めしています。
特に、当院の特徴としては「刺絡」を用いるというところです。鍼灸・刺絡に関しては、当院では医師である私自身が施術しています。
刺絡は出血を伴う手技ですので、行われているところも少ないのが現状です。一部、強い治療と思われて敬遠されている面もありますが、実際はそうではありません。
治療に伴う出血量も、いわゆる通常の採血量よりも少ないですし、治療の強さを加減することで、幅広い不調に対応することもできます。また安保・福田理論によると、自律神経と免疫の調整が可能で、がんの統合医療として大きな役割を有します。
また、この刺絡治療の適応でない状態であれば、通常の細い針による鍼灸や、皮膚を刺すことのない「てい鍼」なども併用します。
とりわけ、あまり刺絡向きではない腹部の調整としては、このてい鍼を用いた腹部打鍼を通常、行っています。
Aさんに対しても、栄養状態の十分な改善を確認してから、痛みやコリの場所に加え、「カッサ」を用いて瘀血のある場所(痧点)をあぶりだして(こすりだして)それらに少量の刺絡を施術します。
これによりコリや痛みの改善のみならず、脊椎近傍の静脈(バトソン静脈叢)の血流改善をはかることで、腹部内臓に出入りする交感神経の異常な刺激を調節することができると考えています。これは静脈弁を有しないバトソン静脈叢でのうっ血が、背部のうっ血に関与するという考えにより、自律神経の調整(交感神経異常興奮の抑制)を行うというものです。
またそうした神経の走行を伴っての、ファッシアの異常な緊張も緩和できるので、内臓に良い影響を与えられるという治療です。その他、局所的な瘀血も改善されるため、全身の血流改善に幅広く寄与する治療でもあります。(この辺りの詳細な理論は、現在このブログ内で「臨床ファッシア瘀血学」として週に1〜2回で連載しておりますので、お読みいただければ幸いです)
こうした刺絡治療により、Aさんの首や背部の痛みは改善され、自覚症状が改善されるだけではなく、内臓の状態、ひいては全身の免疫状態をも、改善に導くことも可能になると考えます。これはがん治療に限定されるものではなく、その他、関節リウマチなど膠原病や、アトピー性皮膚炎の体質改善にも応用しております。
また刺絡は主に背部を中心に治療をしていますが、腹部へのアプローチとしては、てい鍼を用いて調整を行い、身体の前面と後面の両面から、内臓を含めた全身へと栄養を及ぼす治療を行っています。これは自律神経や血管が、背部から腹部へと回り込む解剖学的知見を応用し、背中を強いアプローチ、腹部をソフトなアプローチとしていることによります。(東洋医学的に陰陽で説明することも可能です)
Aさんは現在も、栄養状態の改善に引き続き、こうした刺絡療法を中心とした鍼灸治療を継続しておられ、化学療法の併用と再発防止に努めていらっしゃいます。
難病治療への刺絡療法は、当院の特徴的治療法とも言えるもので、これまでなかなか改善の見られない症状でお困りの方は、是非一度ご相談ください。(特にへバーデン結節など難治性の関節痛の方にも、漢方薬との併用で、疼痛改善が可能です。こうした症状のケースについても、稿をあらためてご紹介していきたいと思います)
小池統合医療クリニック、お問い合わせはこちらまで
tougouiryo at 2021年02月17日00:00|この記事のURL│Comments(0)
小さな診療所から(2)改:がん統合医療 栄養療法 免疫療法
60代女性、乳がんの術後で化学療法中のAさんです。
乳がん発症前から、あまり「肉類」は食べなかったとのことで、ごはん・野菜を中心とした食事だったようです。術後も、肉は体に悪いのではないかと思い、避けていたということでした。
化学療法による体調の不良と、現状に対しての不安や医療への不信など、精神的ストレスを強く抱えている状態で受診されました。
それでも一時期は相当のストレスだったようで、心理カウンセリングにてかなり改善の方向には進んでいるようでしたが、とにかく心身ともにエネルギーが不足しているといった印象でした。
当院ではこうした方には、まず「食事記録」をとって頂きます。どのようなものを毎日食べているかを、詳細にチェックします。何が良い、何が悪いではなく、まずは現状を知り、その過不足をともに考えます。またある一定の考えに固着した食養生法をとることもありません。不調をとる方法を、一緒に考えていきます。「身体は知っている」という立場です。
これによりAさんは、肉類をはじめとしたタンパク質の摂取が極めて少ないことが分かりました。タンパク摂取が少なければ、血液検査においても白血球(とりわけリンパ球)が減少してしまうことは広く知られています。そして、タンパクが少なければ、当然、糖質過多もあるわけです。これは東洋医学的にも「湿」を増大させ、五臓で言うところの「脾」に負担をかけてしまいます。
一般に肉類を以前からあまり食べ慣れていない方にとっては、タンパク質をとれ、といってもなかなか急には摂取できないのが現状です。
しかし、そうした方でも、卵や魚などは、比較的摂取しやすいようです。なかでもアミノ酸スコアを考慮すると、卵はかなり有効です。1日に2〜3個いけるとかなり体調改善が実感されてきます(オムレツなどが食べやすいようですが、あまり頑張りすぎると気持ち悪くなるので要注意です)。
それでも十分なタンパク摂取は難しいという方も少なくありません。こうした場合、液体でのプロテイン摂取をおすすめします。いわゆる「プロテイン」です。最近は、かなり味のバリエーションも多く、各社特徴が様々あるのですが、基本的には、いくつか試してみて、飲めそうなものを選択してもらうというのが良いようです。これには当然、人工甘味料など「からだに良くないもの」も含まれますが、経験的にも低たんぱく状態をスムーズに脱することができ、元気を取り戻しやすいというメリットがあります。つまり「良い悪い」を一元的には決めにくいという良い例なのです。時と場合によっての「使いよう」というわけです。
Aさんもそうですが、無理に食べていたご飯(糖質)の量を少し減らしてでも、タンパク質摂取を心掛けると、体調はめきめき改善することは少なくありません。
プロテインで慣れてきたら、卵などの食品でのタンパク摂取にも抵抗がなくなるようです。そこまでの「橋渡し」として考えても良いでしょう。
また、これと同時に、ビタミン・ミネラルの摂取も必要です。当院では十分なサプリメントの摂取も併せておすすめします。これまでの食事内容から、エネルギー代謝に不可欠なビタミンB群の不足が多く認められ、これが十分でないとせっかく摂取したタンパクも有効利用できないわけです。
こうした栄養の補給で、これまでの化学療法などの治療の続行を躊躇っていた方でも、前向きに治療続行が可能になってきます。A さんも、力がついてきたということで、現代医療との併用に、日々前向きに取り組まれています。
一般に「がんの統合医療」というと、免疫療法や点滴療法などの高額な治療が良く知られていますが、個々の身体の状況に合わせて戦略的に栄養を駆使するという地味な方法は忘れられがちです。また「栄養は大事です」という説明だけで、具体的な説明がないまま、高額なサプリをその意味も解らないまま摂取している方も少なくありません。
まずは自分の身体の状況を知り、何故、その栄養素が重要なのかを理解してから納得の上で、十分な栄養を摂取することがなにより重要であると思います。
人は苦しい状況下では、どうしても派手な治療に引き込まれやすくなります。しかし、そうした中で地に足の着いた「栄養」を、一人でも多くのがん治療中の方と語りながら、ともに考えていきたい思います。それこそが「免疫力」の源であると考えます。そうした確固たる基盤が出来れば、現状の化学療法などの標準治療のみならず、免疫療法などの補完的治療もより有効性が高まっていくのです。
乳がん発症前から、あまり「肉類」は食べなかったとのことで、ごはん・野菜を中心とした食事だったようです。術後も、肉は体に悪いのではないかと思い、避けていたということでした。
化学療法による体調の不良と、現状に対しての不安や医療への不信など、精神的ストレスを強く抱えている状態で受診されました。
それでも一時期は相当のストレスだったようで、心理カウンセリングにてかなり改善の方向には進んでいるようでしたが、とにかく心身ともにエネルギーが不足しているといった印象でした。
当院ではこうした方には、まず「食事記録」をとって頂きます。どのようなものを毎日食べているかを、詳細にチェックします。何が良い、何が悪いではなく、まずは現状を知り、その過不足をともに考えます。またある一定の考えに固着した食養生法をとることもありません。不調をとる方法を、一緒に考えていきます。「身体は知っている」という立場です。
これによりAさんは、肉類をはじめとしたタンパク質の摂取が極めて少ないことが分かりました。タンパク摂取が少なければ、血液検査においても白血球(とりわけリンパ球)が減少してしまうことは広く知られています。そして、タンパクが少なければ、当然、糖質過多もあるわけです。これは東洋医学的にも「湿」を増大させ、五臓で言うところの「脾」に負担をかけてしまいます。
一般に肉類を以前からあまり食べ慣れていない方にとっては、タンパク質をとれ、といってもなかなか急には摂取できないのが現状です。
しかし、そうした方でも、卵や魚などは、比較的摂取しやすいようです。なかでもアミノ酸スコアを考慮すると、卵はかなり有効です。1日に2〜3個いけるとかなり体調改善が実感されてきます(オムレツなどが食べやすいようですが、あまり頑張りすぎると気持ち悪くなるので要注意です)。
それでも十分なタンパク摂取は難しいという方も少なくありません。こうした場合、液体でのプロテイン摂取をおすすめします。いわゆる「プロテイン」です。最近は、かなり味のバリエーションも多く、各社特徴が様々あるのですが、基本的には、いくつか試してみて、飲めそうなものを選択してもらうというのが良いようです。これには当然、人工甘味料など「からだに良くないもの」も含まれますが、経験的にも低たんぱく状態をスムーズに脱することができ、元気を取り戻しやすいというメリットがあります。つまり「良い悪い」を一元的には決めにくいという良い例なのです。時と場合によっての「使いよう」というわけです。
Aさんもそうですが、無理に食べていたご飯(糖質)の量を少し減らしてでも、タンパク質摂取を心掛けると、体調はめきめき改善することは少なくありません。
プロテインで慣れてきたら、卵などの食品でのタンパク摂取にも抵抗がなくなるようです。そこまでの「橋渡し」として考えても良いでしょう。
また、これと同時に、ビタミン・ミネラルの摂取も必要です。当院では十分なサプリメントの摂取も併せておすすめします。これまでの食事内容から、エネルギー代謝に不可欠なビタミンB群の不足が多く認められ、これが十分でないとせっかく摂取したタンパクも有効利用できないわけです。
こうした栄養の補給で、これまでの化学療法などの治療の続行を躊躇っていた方でも、前向きに治療続行が可能になってきます。A さんも、力がついてきたということで、現代医療との併用に、日々前向きに取り組まれています。
一般に「がんの統合医療」というと、免疫療法や点滴療法などの高額な治療が良く知られていますが、個々の身体の状況に合わせて戦略的に栄養を駆使するという地味な方法は忘れられがちです。また「栄養は大事です」という説明だけで、具体的な説明がないまま、高額なサプリをその意味も解らないまま摂取している方も少なくありません。
まずは自分の身体の状況を知り、何故、その栄養素が重要なのかを理解してから納得の上で、十分な栄養を摂取することがなにより重要であると思います。
人は苦しい状況下では、どうしても派手な治療に引き込まれやすくなります。しかし、そうした中で地に足の着いた「栄養」を、一人でも多くのがん治療中の方と語りながら、ともに考えていきたい思います。それこそが「免疫力」の源であると考えます。そうした確固たる基盤が出来れば、現状の化学療法などの標準治療のみならず、免疫療法などの補完的治療もより有効性が高まっていくのです。
tougouiryo at 2021年02月12日00:00|この記事のURL│Comments(0)
小さな診療所から(1)改:良導絡・横隔膜マッサージ
統合医療の実際の様子をお伝えすることは、本ブログの重要な役割と考え少しずつ書いていましたが、診療の意義や解釈、類似症例からのエピソードを加筆して<改>として述べていきます。
なお、具体的なケースに関しては、年齢性別など複数のエピソードを融合させた典型例ですので、特定の個人のエピソードを示すものではないことをm、改めてお断りさせていただきます。
60代女性の血液疾患の方です。
当院の受診歴は2年ほどで、大学病院での診療を受けながらの統合医療併用を希望されて来院されました。化学療法と併用する形で、栄養補充のサプリメントと漢方処方に加えて、体調管理を目的とした鍼灸治療を行っていました。
化学療法の進展や、健康状態の変化に伴い、様々なアプローチを行ってきましたが、最近は、白血球、血小板の大幅な低下を伴う汎血球減少により、鍼灸などの侵襲的な治療が行えずにいました。ご自分でも何か健康に良いことを、ということで、食べ物などの工夫に加え、腰腹を中心とした身体の温めを丁寧に行っておりました。
そうした中でも、化学療法との併用、並びに原疾患による体調の変動が激しく、お自分で行っているセルフケアの方法に不安を抱えるようになってきました。当院でも非侵襲的な治療を中心に行っていたので、何か、現状を肯定する方法はないものかと思い、良導絡を奥から引っ張り出してきました。良道絡は、治療法としても有効ですが、この時はもっぱら診断用として使っておりました、(後日、良導絡による通電治療も開始しますが、この時は経絡(良導絡)の様子を知る方法として用いました)
ファッシアの研究や勉強をするようになって、さらにこの良導絡の意味するところが明確になっていたので、理論的に再評価していたところでもありました。厳密に「ファッシア」ということであればば、良導点は角質に存在しているされるので、深層にあるファッシアをみているわけではないのですが、そこから発生された電気を何らかの形で体表面で診ているということになります。これは、体表面において角質を除去することで良導点が消失するという事実に基づいています。しかし、良導絡への通電は、表面ではなくファッシアや筋層に刺入していることから、必ずしもその走行は角質内に限定したものと考えなくても良いことになります。(この辺りは今後臨床経験を積み上げる必要があると考えています)
良導点を計測すると、肝経(F2) 胃経(F6)の高値と、腎経の低値ならびに左右の乖離、が測定されました。腹診においても胃部と胸脇部が固く触れる所見で、良導絡の測定結果を示すものとして捉えるができます。ちなみにこうした所見は、腹部への物理的刺激「腹部打鍼」により、刺入することなく金属の接触と共鳴で改善することができます。
ご家庭で常に温めている部位を中心にお灸などで温め、瘀血が疑われる領域に軽めのカッピングをかけるなどの非侵襲的なアプローチを行い、施術後に再度、測定を行いました。
これにより、施術前の値が落ち着き、データの左右差の改善も認められ、セルフケアにおける腎への温めの効果も肯定的にとらえることができ、大変喜んでおられました。
加筆しておくと、この方と別の方ですが、いわゆる肝経の高まりにより胸脇苦満の所見がある方に、肋骨弓を自分でつかみあげるようしてもらい、ゆっくりと深呼吸させる「横隔膜マッサージ」を指導し、さらに同部位が軟らかくなる結果を得ており、胸脇苦満へのより有効な方法であることを確認しております。なおこの効果は他覚的所見の改善のみならず、睡眠の質向上など自覚的にも確認されいるのでセルフケアの方法として、より多くの可能性を秘めていると考えています。
いろいろな検査機器はありますが、こうしたセルフケアをサポートする役割としてもとても大切なものです。当然こうした電気的な変化は、病態把握にとっても重要な情報ですが、こうした器機を用いずとも「身体智」を用いるキネシオロジーを駆使することも可能です。身体智を用いる方法に関しては、また稿ををあらためてご紹介してみたいと思います。
なお、具体的なケースに関しては、年齢性別など複数のエピソードを融合させた典型例ですので、特定の個人のエピソードを示すものではないことをm、改めてお断りさせていただきます。
60代女性の血液疾患の方です。
当院の受診歴は2年ほどで、大学病院での診療を受けながらの統合医療併用を希望されて来院されました。化学療法と併用する形で、栄養補充のサプリメントと漢方処方に加えて、体調管理を目的とした鍼灸治療を行っていました。
化学療法の進展や、健康状態の変化に伴い、様々なアプローチを行ってきましたが、最近は、白血球、血小板の大幅な低下を伴う汎血球減少により、鍼灸などの侵襲的な治療が行えずにいました。ご自分でも何か健康に良いことを、ということで、食べ物などの工夫に加え、腰腹を中心とした身体の温めを丁寧に行っておりました。
そうした中でも、化学療法との併用、並びに原疾患による体調の変動が激しく、お自分で行っているセルフケアの方法に不安を抱えるようになってきました。当院でも非侵襲的な治療を中心に行っていたので、何か、現状を肯定する方法はないものかと思い、良導絡を奥から引っ張り出してきました。良道絡は、治療法としても有効ですが、この時はもっぱら診断用として使っておりました、(後日、良導絡による通電治療も開始しますが、この時は経絡(良導絡)の様子を知る方法として用いました)
ファッシアの研究や勉強をするようになって、さらにこの良導絡の意味するところが明確になっていたので、理論的に再評価していたところでもありました。厳密に「ファッシア」ということであればば、良導点は角質に存在しているされるので、深層にあるファッシアをみているわけではないのですが、そこから発生された電気を何らかの形で体表面で診ているということになります。これは、体表面において角質を除去することで良導点が消失するという事実に基づいています。しかし、良導絡への通電は、表面ではなくファッシアや筋層に刺入していることから、必ずしもその走行は角質内に限定したものと考えなくても良いことになります。(この辺りは今後臨床経験を積み上げる必要があると考えています)
良導点を計測すると、肝経(F2) 胃経(F6)の高値と、腎経の低値ならびに左右の乖離、が測定されました。腹診においても胃部と胸脇部が固く触れる所見で、良導絡の測定結果を示すものとして捉えるができます。ちなみにこうした所見は、腹部への物理的刺激「腹部打鍼」により、刺入することなく金属の接触と共鳴で改善することができます。
ご家庭で常に温めている部位を中心にお灸などで温め、瘀血が疑われる領域に軽めのカッピングをかけるなどの非侵襲的なアプローチを行い、施術後に再度、測定を行いました。
これにより、施術前の値が落ち着き、データの左右差の改善も認められ、セルフケアにおける腎への温めの効果も肯定的にとらえることができ、大変喜んでおられました。
加筆しておくと、この方と別の方ですが、いわゆる肝経の高まりにより胸脇苦満の所見がある方に、肋骨弓を自分でつかみあげるようしてもらい、ゆっくりと深呼吸させる「横隔膜マッサージ」を指導し、さらに同部位が軟らかくなる結果を得ており、胸脇苦満へのより有効な方法であることを確認しております。なおこの効果は他覚的所見の改善のみならず、睡眠の質向上など自覚的にも確認されいるのでセルフケアの方法として、より多くの可能性を秘めていると考えています。
いろいろな検査機器はありますが、こうしたセルフケアをサポートする役割としてもとても大切なものです。当然こうした電気的な変化は、病態把握にとっても重要な情報ですが、こうした器機を用いずとも「身体智」を用いるキネシオロジーを駆使することも可能です。身体智を用いる方法に関しては、また稿ををあらためてご紹介してみたいと思います。
tougouiryo at 2021年02月11日09:26|この記事のURL│Comments(0)
小さな診療所から(10)
10代女性のHさん、数年前から漠然とした不安感が強くなり、家に閉じこもりがちでした。いくつかの心療内科やカウンセリングに行くものの、あまり相性が良くなかったのか継続することがありませんでした。当然、処方薬も気が進まず、服用すると気分が悪くなるので、継続的に服用することもありませんでした。
そうした状況が続く中、母が知人を通して紹介されたブレインシンメトリーを用いた「ニューロフィードバック」を知り、試してみようと思い、施術開始。Hさんの気性とフィットしたのか、今度は継続することができました。そしてニューロフィードバックが進み、数か月もすると漠然とした不安が改善し、少しずつですが外出が出来るようになってきました。
日本脳機能トレーニングセンター
この辺りから、精神的には活動を欲しているものの、身体の疲労感と、咽喉頭部の違和感、後鼻漏、等の症状が前面に現れるようになりました。外出はできるようになったのですが、今度はこうした諸症状がずっと治らないのではないか、という不安にさいなまれるようになり、さらに症状の増悪を招いているようでした。
そこで、ニューロフィードバックのセラピストが、上咽頭擦過療法(EAT)についての知識があったため、慢性上咽頭炎の関与を疑い、当院紹介となりました。
来院時に食事などを詳細に問診したところ、タンパクや鉄分の不足が示唆されたため、血液検査を施行し、その結果に基づいて栄養指導を行いました。併せて、症状からも慢性上咽頭炎が疑われたため、綿棒にて上咽頭を擦過したところ、両側から出血を認めたので慢性上咽頭炎と診断しました。
以後、2週間に一度のペースで上咽頭擦過療法(EAT)を施行したところ、後鼻漏などの不快症状は軽快、ご自身でも自宅にて上咽頭の洗浄などをこまめに継続していきました。それにより4か月経過頃には症状軽快、時折ある喉のあたりの違和感については漢方処方と併用して、症状に対しての不安感、恐怖感が軽減されていきました。
器質的な症状の改善に伴い、女性としての自立に不安を抱えていることが判明してきたため、ハーブやアロマを用いる植物療法の女性セラピストに紹介し、同性の立場からセルフケアの指導を開始することになりました。
自然療法サロン テノヒラ
現在は、バイオフィードバックのセラピストから行動分析的な介入によりサポートされつつ、植物療法によるセルフケアを学び、大人の女性として、新生活への一歩を踏み出しています。
そうした状況が続く中、母が知人を通して紹介されたブレインシンメトリーを用いた「ニューロフィードバック」を知り、試してみようと思い、施術開始。Hさんの気性とフィットしたのか、今度は継続することができました。そしてニューロフィードバックが進み、数か月もすると漠然とした不安が改善し、少しずつですが外出が出来るようになってきました。
日本脳機能トレーニングセンター
この辺りから、精神的には活動を欲しているものの、身体の疲労感と、咽喉頭部の違和感、後鼻漏、等の症状が前面に現れるようになりました。外出はできるようになったのですが、今度はこうした諸症状がずっと治らないのではないか、という不安にさいなまれるようになり、さらに症状の増悪を招いているようでした。
そこで、ニューロフィードバックのセラピストが、上咽頭擦過療法(EAT)についての知識があったため、慢性上咽頭炎の関与を疑い、当院紹介となりました。
来院時に食事などを詳細に問診したところ、タンパクや鉄分の不足が示唆されたため、血液検査を施行し、その結果に基づいて栄養指導を行いました。併せて、症状からも慢性上咽頭炎が疑われたため、綿棒にて上咽頭を擦過したところ、両側から出血を認めたので慢性上咽頭炎と診断しました。
以後、2週間に一度のペースで上咽頭擦過療法(EAT)を施行したところ、後鼻漏などの不快症状は軽快、ご自身でも自宅にて上咽頭の洗浄などをこまめに継続していきました。それにより4か月経過頃には症状軽快、時折ある喉のあたりの違和感については漢方処方と併用して、症状に対しての不安感、恐怖感が軽減されていきました。
器質的な症状の改善に伴い、女性としての自立に不安を抱えていることが判明してきたため、ハーブやアロマを用いる植物療法の女性セラピストに紹介し、同性の立場からセルフケアの指導を開始することになりました。
自然療法サロン テノヒラ
現在は、バイオフィードバックのセラピストから行動分析的な介入によりサポートされつつ、植物療法によるセルフケアを学び、大人の女性として、新生活への一歩を踏み出しています。
tougouiryo at 2020年10月26日05:00|この記事のURL│Comments(0)
小さな診療所から(9)
10代女性Gさん。アトピー性皮膚炎にて皮膚科受診していたが、著名な改善や増悪のないまま、ステロイド剤を塗り続けていました。
次第に皮膚が、厚く黒っぽくなってきたので、脱ステをしたいと考えていますが、かつて自己判断で脱ステしたところ、症状の増悪を認めたことから、なかなか怖くて踏み切れません。そこで、インターネット検索したところ、「アトピー整体」を見つけ、相談に訪れました。
アトピー整体 英気治療院
アトピー整体では、日常生活の様式を聞き取り、セルフケアのアドバイスをもらいましたが、顔面を中心にした赤味が強く、痒みも持続するため、当院での漢方処方と刺絡療法を併用することを勧められて来院されました。
受診時の問診から、糖質の過剰摂取が症状を増悪させていることが推測され、糖質制限の食事指導を行い、採血検査から、不足が目立つ栄養素をサプリメントで補充する方針としました。
また顔面の強い皮疹に対しては、石膏を強めた漢方の処方を行い、消炎を計りました。併せて、首から肩への強い瘀血が認められたため、刺絡療法も併用。生活習慣などが一変し、初めはGさんも大変そうでしたが、3か月ほどして症状が治まってくると、しだいに自分でもセルフケアのコツが掴めるようになり、治療にもきわめて前向きに取り組まれるようになりました。
刺絡での瘀血解消が功を奏し、さらにはアトピー整体でのアイロン療法など多彩な取り組みが身についてきたこともあり、ステロイドは漸減、現在ではほとんど使わない段階にまで改善してきました。
ただ、これまでのアトピー性皮膚炎の鎮静後も、皮膚のごわごわ感や、スキンケア、女性特有の悩みなど細かな相談も増えてきたため、女性セラピストによる「アトピーカウンセリング」へ紹介。現在は入浴法や、心理的な相談にものりながら、ステロイドを使用せず、スキンケアを継続しています。
アトピーカウンセリング
次第に皮膚が、厚く黒っぽくなってきたので、脱ステをしたいと考えていますが、かつて自己判断で脱ステしたところ、症状の増悪を認めたことから、なかなか怖くて踏み切れません。そこで、インターネット検索したところ、「アトピー整体」を見つけ、相談に訪れました。
アトピー整体 英気治療院
アトピー整体では、日常生活の様式を聞き取り、セルフケアのアドバイスをもらいましたが、顔面を中心にした赤味が強く、痒みも持続するため、当院での漢方処方と刺絡療法を併用することを勧められて来院されました。
受診時の問診から、糖質の過剰摂取が症状を増悪させていることが推測され、糖質制限の食事指導を行い、採血検査から、不足が目立つ栄養素をサプリメントで補充する方針としました。
また顔面の強い皮疹に対しては、石膏を強めた漢方の処方を行い、消炎を計りました。併せて、首から肩への強い瘀血が認められたため、刺絡療法も併用。生活習慣などが一変し、初めはGさんも大変そうでしたが、3か月ほどして症状が治まってくると、しだいに自分でもセルフケアのコツが掴めるようになり、治療にもきわめて前向きに取り組まれるようになりました。
刺絡での瘀血解消が功を奏し、さらにはアトピー整体でのアイロン療法など多彩な取り組みが身についてきたこともあり、ステロイドは漸減、現在ではほとんど使わない段階にまで改善してきました。
ただ、これまでのアトピー性皮膚炎の鎮静後も、皮膚のごわごわ感や、スキンケア、女性特有の悩みなど細かな相談も増えてきたため、女性セラピストによる「アトピーカウンセリング」へ紹介。現在は入浴法や、心理的な相談にものりながら、ステロイドを使用せず、スキンケアを継続しています。
アトピーカウンセリング
tougouiryo at 2020年10月19日09:23|この記事のURL│Comments(0)
小さな診療所から(8)
60代女性Fさん、そもそもは腰痛にて受診されましたが、その後、体調管理、健康増進目的にて定期的に鍼灸(刺絡)治療をされている患者さんです。
以前は、更年期障害から継続する形で続いていた動悸などの不調が多々ありました。そこでこの諸症状に対して、マルチビタミン・ミネラルをベースに、コエンザイムQ10やリポゾーマルビタミンC、マグネシウム等の栄養補給を行い、結果、動悸をはじめとした胸部不快症状や易疲労も改善しました。よりよい健康状態を取り戻し、朝晩1時間のウォーキングも行えるようになり、ご本人も大変満足されていました。
そうして体調の改善とともにウォーキングの歩行距離もだんだんと延長する中、今度は、足の裏の痛みを自覚するようになってきました。
治療により症状は改善するのですが、それによりまたたくさん歩行するとまた再発という状況になってしまいました。
そのため、足のコリや痛みを直接もみほぐしながら、体の不調改善にも活かす目的で、当院に隣接する「身心工房リボン」において、毎週金曜日に施術している足のリフレクソロジーをお試しして頂きました。
足裏の専門のセラピストからの詳細な日常のアドバイスと足の念入りなケアにより、日ごろの歩行がよりスムースに行えるようになり、大変満足されておりました。ご自分でも、これまでの歩き方を少し改良し、足のことも考えながらの歩行習慣が取り入れられたようでした。
身心工房リボンでの足のリフレクソロジーはこちら ↓ ↓ ↓
アシガル屋
さらに、先月より身心工房リボンでは、専門のシューフィッターによるご自身の靴の調整、さらには自分の足に合わせた靴の調整販売も開始したので、こちらもご紹介したところ、足への関心が高まって靴に対しての不満が出始めていたようで、さっそく靴の調整もしてみたいとのことでした。
歩行を専門家から観察した結果、インソールを用いたこれまでの靴の調整と、歩行に最適のローリングシューズを調整に上、購入されました。
こうした靴への新たなアプローチにより、Fさんは軽快にウォーキングが出来るようになり、更なる健康を満喫されています。
身心工房リボンでの靴調整・販売はこちら ↓ ↓ ↓
靴のファミリー
靴や足の問題は、日常生活でかなり大きな問題ではありますが、あまり医療の問題として取り上げられることの少ない問題でもあります。いわゆる「すき間」の領域をフォローしていく当院のような医療では、こうした領域に特に力を入れていきたいと考えております。
ご興味ある方は「身心工房リボン」までご一報くだされば、予約時間や料金などご案内いたします。コンシェルジュを通じた相談からの開始もおススメです。
本ブログにおける具体的なケース紹介に関しては、年齢や性別など複数のエピソードを融合させた典型例としての例示ですので、特定の個人のエピソードを示すものではないことをお断りさせていただきます。
また、治療法や具体的方策の詳細などの実施に当たっては、専門家ならびに専門の医療機関等のもとで行って下さい。
以前は、更年期障害から継続する形で続いていた動悸などの不調が多々ありました。そこでこの諸症状に対して、マルチビタミン・ミネラルをベースに、コエンザイムQ10やリポゾーマルビタミンC、マグネシウム等の栄養補給を行い、結果、動悸をはじめとした胸部不快症状や易疲労も改善しました。よりよい健康状態を取り戻し、朝晩1時間のウォーキングも行えるようになり、ご本人も大変満足されていました。
そうして体調の改善とともにウォーキングの歩行距離もだんだんと延長する中、今度は、足の裏の痛みを自覚するようになってきました。
治療により症状は改善するのですが、それによりまたたくさん歩行するとまた再発という状況になってしまいました。
そのため、足のコリや痛みを直接もみほぐしながら、体の不調改善にも活かす目的で、当院に隣接する「身心工房リボン」において、毎週金曜日に施術している足のリフレクソロジーをお試しして頂きました。
足裏の専門のセラピストからの詳細な日常のアドバイスと足の念入りなケアにより、日ごろの歩行がよりスムースに行えるようになり、大変満足されておりました。ご自分でも、これまでの歩き方を少し改良し、足のことも考えながらの歩行習慣が取り入れられたようでした。
身心工房リボンでの足のリフレクソロジーはこちら ↓ ↓ ↓
アシガル屋
さらに、先月より身心工房リボンでは、専門のシューフィッターによるご自身の靴の調整、さらには自分の足に合わせた靴の調整販売も開始したので、こちらもご紹介したところ、足への関心が高まって靴に対しての不満が出始めていたようで、さっそく靴の調整もしてみたいとのことでした。
歩行を専門家から観察した結果、インソールを用いたこれまでの靴の調整と、歩行に最適のローリングシューズを調整に上、購入されました。
こうした靴への新たなアプローチにより、Fさんは軽快にウォーキングが出来るようになり、更なる健康を満喫されています。
身心工房リボンでの靴調整・販売はこちら ↓ ↓ ↓
靴のファミリー
靴や足の問題は、日常生活でかなり大きな問題ではありますが、あまり医療の問題として取り上げられることの少ない問題でもあります。いわゆる「すき間」の領域をフォローしていく当院のような医療では、こうした領域に特に力を入れていきたいと考えております。
ご興味ある方は「身心工房リボン」までご一報くだされば、予約時間や料金などご案内いたします。コンシェルジュを通じた相談からの開始もおススメです。
本ブログにおける具体的なケース紹介に関しては、年齢や性別など複数のエピソードを融合させた典型例としての例示ですので、特定の個人のエピソードを示すものではないことをお断りさせていただきます。
また、治療法や具体的方策の詳細などの実施に当たっては、専門家ならびに専門の医療機関等のもとで行って下さい。
tougouiryo at 2020年10月13日05:00|この記事のURL│Comments(0)
小さな診療所から(7)
40代女性Eさん、10年前から脳内の巨大動脈瘤を指摘されているものの手術適応ではないと主治医から言われています。
てんかん発作予防のための時折、大学病院を受診するのみで、一定期間で交代してしまう主治医とはあまりコミュニケーションが取れていない状況でした。こうした状況から医療不信が続いており、あまり現状の健康状態について相談することもありませんでした。
そうした中で、われわれのグループである「日本統合医療センター」のホームページを見つけましたが、やはりクリニックの受診は精神的なハードルが高く、しばし逡巡していました。
そこでホームページに記載されていたコンシェルジュ制度(相談外来)を知り、まずは、医師でなない女性相談員であるコンシェルジュに現状を相談してから、クリニックの受診を決めることができるのであれば、と思い相談に訪れました。
コンシェルジュと十分な時間をとって、病気のことからプライベートな話までする中で、次第に医療への不信や不安がとれ、良好な関係を築くことが出来ました。
こうしたコンシェルジュとの良好な関係の下、クリニックへの受診にも関心をもつようになり、現在は定期的に受診されるようになりました。
また、この関係を基盤に、大学病院へも情報提供として連絡を密にすることで、主治医と相談者(受診者)との関係改善にも一役買うこともできました。主治医との関係改善により、処方薬も納得して定期的に服用し、今後の大学病院でのフォローアップの方針も明確にすることができました。
大病院とのコミュニケーションの良好な媒介のためにも、小さな診療所の意義は大きいと考えさせられたケースでした。
当センターのコンシェルジュは、こうした医療不信の方々に対しての心のフォローとともに、医療への良好な橋渡しをするために活動しております。ご興味ある方は、お電話にてお問い合わせ、ご予約を承っております。
また通常の心理カウンセリングとしても、活動しており、とりわけ「アトピージプシー」としてさまようアトピー性皮膚炎患者さんの様々な相談に専門的に取り組んでいます。
こんな問題でクリニック受診していいのだろうか? というような「迷い」「ためらい」のある方には、まずはコンシェルジュによるカウンセリングをお試しされることをお勧めいたします。
ご興味ある方こちら ↓ ↓ ↓
アトピーカウンセリング
てんかん発作予防のための時折、大学病院を受診するのみで、一定期間で交代してしまう主治医とはあまりコミュニケーションが取れていない状況でした。こうした状況から医療不信が続いており、あまり現状の健康状態について相談することもありませんでした。
そうした中で、われわれのグループである「日本統合医療センター」のホームページを見つけましたが、やはりクリニックの受診は精神的なハードルが高く、しばし逡巡していました。
そこでホームページに記載されていたコンシェルジュ制度(相談外来)を知り、まずは、医師でなない女性相談員であるコンシェルジュに現状を相談してから、クリニックの受診を決めることができるのであれば、と思い相談に訪れました。
コンシェルジュと十分な時間をとって、病気のことからプライベートな話までする中で、次第に医療への不信や不安がとれ、良好な関係を築くことが出来ました。
こうしたコンシェルジュとの良好な関係の下、クリニックへの受診にも関心をもつようになり、現在は定期的に受診されるようになりました。
また、この関係を基盤に、大学病院へも情報提供として連絡を密にすることで、主治医と相談者(受診者)との関係改善にも一役買うこともできました。主治医との関係改善により、処方薬も納得して定期的に服用し、今後の大学病院でのフォローアップの方針も明確にすることができました。
大病院とのコミュニケーションの良好な媒介のためにも、小さな診療所の意義は大きいと考えさせられたケースでした。
当センターのコンシェルジュは、こうした医療不信の方々に対しての心のフォローとともに、医療への良好な橋渡しをするために活動しております。ご興味ある方は、お電話にてお問い合わせ、ご予約を承っております。
また通常の心理カウンセリングとしても、活動しており、とりわけ「アトピージプシー」としてさまようアトピー性皮膚炎患者さんの様々な相談に専門的に取り組んでいます。
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tougouiryo at 2020年10月05日05:00|この記事のURL│Comments(0)
小さな診療所から(6)
50代女性Dさん、冷えのぼせ、動悸、不眠、イライラ感、などの更年期障害を主訴に来院されました。当院受診前も、同症状にて漢方専門クリニックにて漢方処方(加味逍遙散・当帰芍薬散・抑肝散・酸棗仁湯等)、ならびに鍼灸院にて鍼灸治療を継続していたが、症状の改善が認められないため、当院を来院されました。
まずは栄養状態のチェック希望でしたので、食事内容の記録表に加え、採血検査にてビタミン・ミネラルの栄養チェックを行いました。
結果から、鉄・亜鉛・ビタミンD等の栄養素が少なく、主訴との関連も強く示唆されたため、サプリメントにて補充をおすすめしました。
時に困っていた動悸に関しては、循環器専門の他院にて既に精査されていましたが、特に問題なしとのことでしたので、コエンザイムQ10(還元型)を通常量より増量して処方しました。
さらに食事内容でも、タンパク質の摂取が少なかったので、改善するよう指導しましたが、なかなか増量できないということでしたので、プロテインでの摂取をおすすめしました。
これらの栄養補充、さらには食事内容の改善に積極的に取り組まれたことにより、冷えのぼせ、動悸、イライラ感が改善され、自覚的にかなり元気も出てきたようでした。とくに動悸に関しては、心臓の病気ではないかと精査してからも心配が続いていたことから、コエンザイムをはじめとした栄養が原因だったこともわかり、たいへんよろこばれていました。
しかし、数回の診療のなかで問診を進めていくと、家庭内、とくに夫への不満が強くあるようで、それによる機嫌の悪さから、症状の悪化が始まったようでした。従来、エアロビなど体を激しく動かす運動が好きで、これによりストレスの発散を行っていましたが、コロナ禍において、発散も十分にできなかったことが今回の症状悪化の主な原因と推測されました。
こうしたベースがあることから、再度、増悪してしまうことも考えられ、加えて、睡眠状態の改善は今一つだったこともあり、ホメオパシーをおすすめしたところ、大変興味あるということだったので、レメディを試してみることになりました。
問診内容と症状の経過などから、レパートリゼーションを施行し、ヨーロッパコウイカ由来のSepia30Cを選択し、1日1粒3日間、連続投与しました。
これにより、毎日の気持ちがとても楽になり、家族への対応もイライラせずにできるようになり、体調全部が良くなったような感じと表現されていました。また睡眠状態も著明に改善し、中途覚醒、早朝覚醒がなくなり、熟眠感を得られるようになったとのことでした。
更年期女性の諸症状に対しては、漢方や鍼灸といった東洋医学的な方法論が一般的ですが、この例にもあるように栄養(とくに蛋白やミネラル)の不足が、実は大きな原因となっていることも少なくありません。
また、治療者側の東洋医学への愛着が、かえってサプリメントなどの栄養補充アプローチへのアクセスに待ったをかけてしまっているケースも、現代の日本では少なくないように感じます。(実は統合医療における現状の大きな問題の一つと考えています)
漢方に関しては20年ほど前に、私が漢方外来を開始した時に感じたような、医師による漢方や東洋医学への偏見などはほぼ消失しているように思いますが、その他の代替医療(例えばホメオパシーなど)に対してはまだまだの状況です。
とりわけ欧米諸国でのホメオパシーの復権にもかかわらず、わが国では医師の偏見と無理解はまだまだ強いと言わざるを得ません。
本例をはじめとしていわゆる不定愁訴に対しては、ホメオパシーの著効する例も稀ではないので、そうしたケースも今後、またここでご紹介していきたいと思います。
まずは栄養状態のチェック希望でしたので、食事内容の記録表に加え、採血検査にてビタミン・ミネラルの栄養チェックを行いました。
結果から、鉄・亜鉛・ビタミンD等の栄養素が少なく、主訴との関連も強く示唆されたため、サプリメントにて補充をおすすめしました。
時に困っていた動悸に関しては、循環器専門の他院にて既に精査されていましたが、特に問題なしとのことでしたので、コエンザイムQ10(還元型)を通常量より増量して処方しました。
さらに食事内容でも、タンパク質の摂取が少なかったので、改善するよう指導しましたが、なかなか増量できないということでしたので、プロテインでの摂取をおすすめしました。
これらの栄養補充、さらには食事内容の改善に積極的に取り組まれたことにより、冷えのぼせ、動悸、イライラ感が改善され、自覚的にかなり元気も出てきたようでした。とくに動悸に関しては、心臓の病気ではないかと精査してからも心配が続いていたことから、コエンザイムをはじめとした栄養が原因だったこともわかり、たいへんよろこばれていました。
しかし、数回の診療のなかで問診を進めていくと、家庭内、とくに夫への不満が強くあるようで、それによる機嫌の悪さから、症状の悪化が始まったようでした。従来、エアロビなど体を激しく動かす運動が好きで、これによりストレスの発散を行っていましたが、コロナ禍において、発散も十分にできなかったことが今回の症状悪化の主な原因と推測されました。
こうしたベースがあることから、再度、増悪してしまうことも考えられ、加えて、睡眠状態の改善は今一つだったこともあり、ホメオパシーをおすすめしたところ、大変興味あるということだったので、レメディを試してみることになりました。
問診内容と症状の経過などから、レパートリゼーションを施行し、ヨーロッパコウイカ由来のSepia30Cを選択し、1日1粒3日間、連続投与しました。
これにより、毎日の気持ちがとても楽になり、家族への対応もイライラせずにできるようになり、体調全部が良くなったような感じと表現されていました。また睡眠状態も著明に改善し、中途覚醒、早朝覚醒がなくなり、熟眠感を得られるようになったとのことでした。
更年期女性の諸症状に対しては、漢方や鍼灸といった東洋医学的な方法論が一般的ですが、この例にもあるように栄養(とくに蛋白やミネラル)の不足が、実は大きな原因となっていることも少なくありません。
また、治療者側の東洋医学への愛着が、かえってサプリメントなどの栄養補充アプローチへのアクセスに待ったをかけてしまっているケースも、現代の日本では少なくないように感じます。(実は統合医療における現状の大きな問題の一つと考えています)
漢方に関しては20年ほど前に、私が漢方外来を開始した時に感じたような、医師による漢方や東洋医学への偏見などはほぼ消失しているように思いますが、その他の代替医療(例えばホメオパシーなど)に対してはまだまだの状況です。
とりわけ欧米諸国でのホメオパシーの復権にもかかわらず、わが国では医師の偏見と無理解はまだまだ強いと言わざるを得ません。
本例をはじめとしていわゆる不定愁訴に対しては、ホメオパシーの著効する例も稀ではないので、そうしたケースも今後、またここでご紹介していきたいと思います。
tougouiryo at 2020年09月28日05:00|この記事のURL│Comments(0)
小さな診療所から(5)
だんだんと涼しくなる中で、なんとなくメランコリックな季節になってきましたね。気分的に、そこ指落ち込んで、夜も深く眠ることが出来ないなんて方もちらほら。季節的なものだから、とか、気合で何とか乗り切る、とか、ヒトそれぞれの対応があるようですが、暑かった夏の終わりと共にくる栄養の不足は、やはり十分な補充が欠かせないように思います。
近年は、分子栄養学的な知見から書かれた分かり易い書籍も増えてきていますし、ネットにおいてもそうした情報はあふれていますので、うまく活用できる人は、こうした状況でもうまく乗り切ることができるでしょう。しかし、色々な方法があるからこそ、また迷うことにもなってしまうわけです。
急速な気分の落ち込みと、眠りの浅さからくる易疲労とで、日ごろの仕事がつらくなり、現在、休職も考えている40代男性Cさん。
東洋医学が体に優しいのではないかと思い、漢方専門薬局で「酸棗仁湯」の処方をもらったものの、あまり効果を感じられず、困っていたところ職場の同僚に勧められて来院されました。
Cさんは、甘いものが好きで、食事もご飯などの主食が中心。脂っこいものや肉などは体に悪いと考え、なるべく野菜を多く食べるような食事内容(とくに根菜類を強く勧められていました)でした。お酒も好きで、特に日本酒を好んでいました。
そこで現状を把握するための血液検査では、たんぱく質の摂取が極めて少なく、糖質過多のため、脂肪肝など内臓脂肪の蓄積を示す結果となりました。
食事記録用紙をもとに、タンパク質を多めに摂取するような食事内容に変更し、代わりに、糖質の制限を心掛けるようにしました。
加えて、ビタミンB群、亜鉛などを強化してマルチビタミンと合わせて摂取していただきました。主訴である「睡眠」に関しては、牛乳を飲むことに加え、メラトニンを処方し、就前に時折服用していた「補中益気湯」などの補剤を夜間は中止していただきました(朝の服用に変更しました)。
これにより、夜中に3,4回は起きていたのが、1回に減り、熟眠感を得るとともに、朝の目覚めの心地よさを実感するようになってきました。さらに1週間ほどすると体力的にも気分的にも充実した感じが得られ、当初の主訴は1か月もするとほとんどなくなって、以前のように元気に仕事をすることが出来るようになりました。
睡眠障害のパターンはひとそれぞれ。絶対の良い方法というよりは、各人の不眠の状態に基づいた対処法で、栄養摂取の状況と合わせて修正していくことがベストです。
大きな疾患に発展する前に、気が付いた不調からビタミン・ミネラルにより丁寧に体を修正していくという視点が大切です。
本ブログにおける具体的なケース紹介に関しては、年齢や性別など複数のエピソードを融合させた典型例としての例示ですので、特定の個人のエピソードを示すものではないことをお断りさせていただきます。
また、治療法や具体的方策の詳細などの実施に当たっては、専門家ならびに専門の医療機関等のもとで行って下さい。
近年は、分子栄養学的な知見から書かれた分かり易い書籍も増えてきていますし、ネットにおいてもそうした情報はあふれていますので、うまく活用できる人は、こうした状況でもうまく乗り切ることができるでしょう。しかし、色々な方法があるからこそ、また迷うことにもなってしまうわけです。
急速な気分の落ち込みと、眠りの浅さからくる易疲労とで、日ごろの仕事がつらくなり、現在、休職も考えている40代男性Cさん。
東洋医学が体に優しいのではないかと思い、漢方専門薬局で「酸棗仁湯」の処方をもらったものの、あまり効果を感じられず、困っていたところ職場の同僚に勧められて来院されました。
Cさんは、甘いものが好きで、食事もご飯などの主食が中心。脂っこいものや肉などは体に悪いと考え、なるべく野菜を多く食べるような食事内容(とくに根菜類を強く勧められていました)でした。お酒も好きで、特に日本酒を好んでいました。
そこで現状を把握するための血液検査では、たんぱく質の摂取が極めて少なく、糖質過多のため、脂肪肝など内臓脂肪の蓄積を示す結果となりました。
食事記録用紙をもとに、タンパク質を多めに摂取するような食事内容に変更し、代わりに、糖質の制限を心掛けるようにしました。
加えて、ビタミンB群、亜鉛などを強化してマルチビタミンと合わせて摂取していただきました。主訴である「睡眠」に関しては、牛乳を飲むことに加え、メラトニンを処方し、就前に時折服用していた「補中益気湯」などの補剤を夜間は中止していただきました(朝の服用に変更しました)。
これにより、夜中に3,4回は起きていたのが、1回に減り、熟眠感を得るとともに、朝の目覚めの心地よさを実感するようになってきました。さらに1週間ほどすると体力的にも気分的にも充実した感じが得られ、当初の主訴は1か月もするとほとんどなくなって、以前のように元気に仕事をすることが出来るようになりました。
睡眠障害のパターンはひとそれぞれ。絶対の良い方法というよりは、各人の不眠の状態に基づいた対処法で、栄養摂取の状況と合わせて修正していくことがベストです。
大きな疾患に発展する前に、気が付いた不調からビタミン・ミネラルにより丁寧に体を修正していくという視点が大切です。
本ブログにおける具体的なケース紹介に関しては、年齢や性別など複数のエピソードを融合させた典型例としての例示ですので、特定の個人のエピソードを示すものではないことをお断りさせていただきます。
また、治療法や具体的方策の詳細などの実施に当たっては、専門家ならびに専門の医療機関等のもとで行って下さい。
tougouiryo at 2020年09月21日05:00|この記事のURL│Comments(0)
小さな診療所から(4)
暑さも少しずつ収まってきて、だんだんと過ごしやすくなってきました。今年は、暑さもきつい上に換気もしなければならず、さらにはマスクの着用も重なり、うつ熱する機会も多く、体力が奪われてしまった方も多いようです。これから夏バテがきつくなる人も多いのではないでしょうか。
こうした暑さを背景にして、突発性難聴が発症した人も多いように感じます。そこで、30代女性Bさんの症例をご紹介します。
数日前、突然の耳の聞こえの悪さを自覚し、耳鼻科を受診したところ「突発性難聴」の診断を受けました。聴力検査などの検査を行い、ATP製剤、ビタミンB12、循環改善薬などが処方されましたが、完全に回復という感じではありませんでした。
経過観察での聴力検査において、低音域の若干の改善を認めるものの、「片耳が覆いかぶさったような感じ」が続き、聞こえにくさを強く自覚する状態でした。以前、後鼻漏がひどかったので、当院にて上咽頭治療をしていたことから、なんとか改善しないものかと受診されました。
左耳の強い耳鳴りと、「何かがかぶさったような」聞こえにくさの訴えに対して、全身の緊張を解く目的での鍼を施術してから、左耳に対して、耳介周囲への刺絡と、直接灸を施行。折からの頭頸部のむくみも強くあったことから、排出される瘀血の量も多く、施術中においても自覚症状の耳鳴りはみるみる改善を認めました。
さらに灸を加えた後には、聞こえ方も著明に改善。大きく変化したことを喜ばれて施術を終えました。ただこれだけでは、元の状態に戻りかねないので、既に処方されている薬剤の増強を目的として、ビタミンB群を多めにしたマルチビタミンと、ATPの更なる増産をはかってコエンザイムQ10(電子伝達系の最終段階でATP産生を促進します)を飲んでいただくことにしました。
また眠りの浅さから易疲労もあったので、メラトニンも加え睡眠状態の改善も図りました。
4日後の再診時には、聞こえの悪さ等の自覚はかなり改善され、耳鼻科での検査でも改善を認める結果が出ていたこともあり、大変喜ばれておられました。
以後、1週間後に再度加療し、耳鳴りや聞こえの悪さは全くなく、発症前と何ら変わらない、とのことでしたので終診となりました。
また睡眠に関しても、メラトニンにより中途覚醒が劇的に減少し、起床時の熟眠感を得られ、とても喜ばれておりました。
Bさんのように、夏の暑さのためか、ビタミンB群の劇的な減少と知らずに進行した脱水を背景として突発性難聴の方がこの時期、増えているようです。また睡眠時の発汗により脱水が生じ、起床時に腰痛などの身体の痛みが出たり、易疲労に限らず、色々な不調が発症してきます。
大きな症状の発症の前に、ビタミン摂取を含めた十分な栄養と、充実した睡眠時間の確保に心掛けたいものです。
本ブログにおける具体的なケース紹介に関しては、年齢や性別など複数のエピソードを融合させた典型例としての例示ですので、特定の個人のエピソードを示すものではないことをお断りさせていただきます。
また、治療法や具体的方策の詳細などの実施に当たっては、専門家ならびに専門の医療機関等のもとで行って下さい。
こうした暑さを背景にして、突発性難聴が発症した人も多いように感じます。そこで、30代女性Bさんの症例をご紹介します。
数日前、突然の耳の聞こえの悪さを自覚し、耳鼻科を受診したところ「突発性難聴」の診断を受けました。聴力検査などの検査を行い、ATP製剤、ビタミンB12、循環改善薬などが処方されましたが、完全に回復という感じではありませんでした。
経過観察での聴力検査において、低音域の若干の改善を認めるものの、「片耳が覆いかぶさったような感じ」が続き、聞こえにくさを強く自覚する状態でした。以前、後鼻漏がひどかったので、当院にて上咽頭治療をしていたことから、なんとか改善しないものかと受診されました。
左耳の強い耳鳴りと、「何かがかぶさったような」聞こえにくさの訴えに対して、全身の緊張を解く目的での鍼を施術してから、左耳に対して、耳介周囲への刺絡と、直接灸を施行。折からの頭頸部のむくみも強くあったことから、排出される瘀血の量も多く、施術中においても自覚症状の耳鳴りはみるみる改善を認めました。
さらに灸を加えた後には、聞こえ方も著明に改善。大きく変化したことを喜ばれて施術を終えました。ただこれだけでは、元の状態に戻りかねないので、既に処方されている薬剤の増強を目的として、ビタミンB群を多めにしたマルチビタミンと、ATPの更なる増産をはかってコエンザイムQ10(電子伝達系の最終段階でATP産生を促進します)を飲んでいただくことにしました。
また眠りの浅さから易疲労もあったので、メラトニンも加え睡眠状態の改善も図りました。
4日後の再診時には、聞こえの悪さ等の自覚はかなり改善され、耳鼻科での検査でも改善を認める結果が出ていたこともあり、大変喜ばれておられました。
以後、1週間後に再度加療し、耳鳴りや聞こえの悪さは全くなく、発症前と何ら変わらない、とのことでしたので終診となりました。
また睡眠に関しても、メラトニンにより中途覚醒が劇的に減少し、起床時の熟眠感を得られ、とても喜ばれておりました。
Bさんのように、夏の暑さのためか、ビタミンB群の劇的な減少と知らずに進行した脱水を背景として突発性難聴の方がこの時期、増えているようです。また睡眠時の発汗により脱水が生じ、起床時に腰痛などの身体の痛みが出たり、易疲労に限らず、色々な不調が発症してきます。
大きな症状の発症の前に、ビタミン摂取を含めた十分な栄養と、充実した睡眠時間の確保に心掛けたいものです。
本ブログにおける具体的なケース紹介に関しては、年齢や性別など複数のエピソードを融合させた典型例としての例示ですので、特定の個人のエピソードを示すものではないことをお断りさせていただきます。
また、治療法や具体的方策の詳細などの実施に当たっては、専門家ならびに専門の医療機関等のもとで行って下さい。
tougouiryo at 2020年09月14日05:00|この記事のURL│Comments(0)
小さな診療所から(3)
前回のAさんの続きです。タンパク質の意図的な増量による、栄養状態の改善により、抑うつ気分が解消され、現状の治療に対しても前向きに取り組めるようになってきました。
表現しがたい全身の不快感や、落ち込みの解消により、今度は、具体的な体の不調が現れます。頸や肩の痛み・コリ、背中の痛み、腰痛など、局所的な症状です。身体としては、言葉で表現することができない状態から、はっきりと表現できる状況へと変化していったとみることができるでしょう。
こうした症状の時には、当院ではまず鍼灸をお勧めします。特に、当院の特徴としては「刺絡」を用いるというところです。出血を伴う手技ですので、行われているところも少ない技法で、強い治療と思われて敬遠されている面もありますが、実際はそうではありません。出血量も、いわゆる通常の採血量よりも少ないですし、治療の強さを加減することで、幅広い不調に対応することもできます。また、この治療の適応でない状態であれば、通常の細い針による鍼灸や、皮膚を刺すことのない「てい鍼」なども併用します。腹部の調整としては、このてい鍼を用いた腹部打鍼を通常、行っています。
Aさんに対しても、栄養状態の十分な改善を確認してから、痛みやコリの場所に加え、「カッサ」を用いて瘀血のある場所(痧点)をあぶりだして(こすりだして)それらに少量の刺絡を施術します。
これによりコリや痛みの改善のみならず、脊椎近傍の静脈(バトソン静脈叢)の血流改善をはかることで、腹部内臓に出入りする交感神経の異常な刺激を調節することができると考えています。またそうした神経の走行を伴っての、ファッシア(膜)の異常な緊張も緩和できるので、内臓に良い影響を与えられるという治療です。
こうした治療により、Aさんの首や背部の痛みは改善され、自覚症状が改善されるだけではなく、内臓の状態、ひいては全身の免疫状態をも、改善に導くことも可能になると考えます。
また刺絡は主に背部を中心に治療をしていますが、腹部へのアプローチとしては、てい鍼を用いて調整を行い、身体の前面と後面の両面から、内臓を含めた全身へと栄養を及ぼす治療を行っています。
Aさんは現在も、栄養状態の改善に引き続き、こうした刺絡療法を中心とした鍼灸治療を継続しておられ、化学療法の併用と再発防止に努めていらっしゃいます。
本ブログにおける具体的なケース紹介に関しては、年齢や性別など複数のエピソードを融合させた典型例としての例示ですので、特定の個人のエピソードを示すものではないことをお断りさせていただきます。
また、治療法や具体的方策の詳細などの実施に当たっては、専門家ならびに専門の医療機関等のもとで行って下さい。
表現しがたい全身の不快感や、落ち込みの解消により、今度は、具体的な体の不調が現れます。頸や肩の痛み・コリ、背中の痛み、腰痛など、局所的な症状です。身体としては、言葉で表現することができない状態から、はっきりと表現できる状況へと変化していったとみることができるでしょう。
こうした症状の時には、当院ではまず鍼灸をお勧めします。特に、当院の特徴としては「刺絡」を用いるというところです。出血を伴う手技ですので、行われているところも少ない技法で、強い治療と思われて敬遠されている面もありますが、実際はそうではありません。出血量も、いわゆる通常の採血量よりも少ないですし、治療の強さを加減することで、幅広い不調に対応することもできます。また、この治療の適応でない状態であれば、通常の細い針による鍼灸や、皮膚を刺すことのない「てい鍼」なども併用します。腹部の調整としては、このてい鍼を用いた腹部打鍼を通常、行っています。
Aさんに対しても、栄養状態の十分な改善を確認してから、痛みやコリの場所に加え、「カッサ」を用いて瘀血のある場所(痧点)をあぶりだして(こすりだして)それらに少量の刺絡を施術します。
これによりコリや痛みの改善のみならず、脊椎近傍の静脈(バトソン静脈叢)の血流改善をはかることで、腹部内臓に出入りする交感神経の異常な刺激を調節することができると考えています。またそうした神経の走行を伴っての、ファッシア(膜)の異常な緊張も緩和できるので、内臓に良い影響を与えられるという治療です。
こうした治療により、Aさんの首や背部の痛みは改善され、自覚症状が改善されるだけではなく、内臓の状態、ひいては全身の免疫状態をも、改善に導くことも可能になると考えます。
また刺絡は主に背部を中心に治療をしていますが、腹部へのアプローチとしては、てい鍼を用いて調整を行い、身体の前面と後面の両面から、内臓を含めた全身へと栄養を及ぼす治療を行っています。
Aさんは現在も、栄養状態の改善に引き続き、こうした刺絡療法を中心とした鍼灸治療を継続しておられ、化学療法の併用と再発防止に努めていらっしゃいます。
本ブログにおける具体的なケース紹介に関しては、年齢や性別など複数のエピソードを融合させた典型例としての例示ですので、特定の個人のエピソードを示すものではないことをお断りさせていただきます。
また、治療法や具体的方策の詳細などの実施に当たっては、専門家ならびに専門の医療機関等のもとで行って下さい。
tougouiryo at 2020年09月07日05:00|この記事のURL│Comments(0)
小さな診療所から(2)
前回は検査機器によるセルフケアの後押し的なお話を書きましたが、今回は、いわゆるがん再発防止や化学療法後の栄養に関するエピソードです。
60代女性、乳がんの術後で化学療法中のAさんです。発症前からあまり「肉類」は食べなかったとのことで、ごはん・野菜を中心とした食事だったようです。術後も、肉は体に悪いのではないかと思い、避けていたということでした。
化学療法による体調の不良と、現状に対しての不安や医療への不信など、精神的ストレスを強く抱えている状態で受診されました。それでも一時期は相当のストレスだったようで、心理カウンセリングにてかなり改善の方向には進んでいるようでしたが、とにかく心身ともにエネルギーが不足しているといった印象でした。
こうした方には、まず「食事記録」をとって頂きます。どのようなものを毎日食べているかを、詳細にチェックします。これによりAさんは、肉類をはじめとしたタンパク質の摂取が極めて少ないことが分かりました。であれば、当然、糖質過多もあるわけです。
一般に肉類を以前からあまり食べ慣れていない方にとっては、タンパク質をとれといってもなかなか急には摂取できないのが現状です。
しかし、そうした方でも、卵や魚などは、比較的摂取しやすいようです。なかでもアミノ酸スコアを考慮すると、卵はかなり有効です。1日に2〜3個いけるとかなり体調改善が実感されてきます(オムレツなどが食べやすいようです)。
それでも十分なタンパク摂取は難しいという方も少なくありません。こうした場合、液体でのプロテイン摂取をおすすめします。いわゆる「プロテイン」です。最近は、かなり味のバリエーションも多く、各社特徴が様々あるのですが、基本的には、いくつか試してみて、飲めそうなものを選択してもらうというのが良いようです。
無理に食べていたご飯(糖質)の量を少し減らしてでも、タンパク質摂取を心掛けると、体調はめきめき改善することは少なくありません。プロテインで慣れてきたら、卵などの食品でのタンパク摂取にも抵抗がなくなるようです。
また、これと同時に、ビタミン・ミネラルの摂取も必要です。当院では十分なサプリメントの摂取も併せておすすめします。これまでの食事内容から、エネルギー代謝に不可欠なビタミンB群の不足が多く認められ、これが十分でないとせっかく摂取したタンパクも有効利用できないわけです。
こうした栄養の補給で、これまでの化学療法などの治療の続行を躊躇っていた方でも、前向きに治療続行が可能になってきます。A さんも、力がついてきたということで、現代医療との併用に、日々前向きに取り組まれています。
本ブログにおける具体的なケース紹介に関しては、年齢や性別など複数のエピソードを融合させた典型例としての例示ですので、特定の個人のエピソードを示すものではないことをお断りさせていただきます。
また、治療法や具体的方策の詳細などの実施に当たっては、専門家ならびに専門の医療機関等のもとで行って下さい。
tougouiryo at 2020年08月31日05:00|この記事のURL│Comments(0)
小さな診療所から(1)
これまで診療の具体的なお話を書いてこなかったのですが、統合医療の実際の様子をお伝えすることも、本ブログの重要な役割と考え少しずつ書いていきたいと思います。
なお、具体的なケースに関しては、年齢性別など複数のエピソードを融合させた典型例ですので、特定の個人のエピソードを示すものではないことをお断りさせていただきます。
先日、60代女性の血液疾患の方を診させていただきました。
当院の受診歴は2年ほどで、大学病院での診療を受けながらの統合医療併用を希望されて来院されました。化学療法と併用する形で、栄養補充のサプリメントと漢方処方に加えて、体調管理を目的とした鍼灸治療を行っていました。
化学療法の進展や、健康状態の変化に伴い、様々なアプローチを行ってきましたが、最近は、白血球、血小板の大幅な低下を伴う汎血球減少により、鍼灸などの侵襲的な治療が行えずにいました。ご自分でも何か健康に良いことを、ということで、食べ物などの工夫に加え、腰腹を中心とした身体の温めを丁寧に行っておりました。
そうした中でも、化学療法との併用、並びに原疾患による体調の変動が激しく、お自分で行っているセルフケアの方法に不安を抱えるようになってきました。当院でも非侵襲的な治療を中心に行っていたので、何か、現状を肯定する方法はないものかと思い、久しぶりに良導絡を奥から引っ張り出してきました。治療法としても有効ですが、経絡(良導絡)の様子を知るには簡便で、とても良い方法です。
ファッシアの研究や勉強をするようになって、さらにこの良導絡の意味するところが明確になっていたので、理論的に再評価していたところでもありました。(まあ厳密にファッシアということであれば他にもっと良い計測方法はあるのでしょうが、昭和の定番「良導絡」はやはり不滅です)
計測すると肝経(F2) 胃経(F6)の高値と、腎経の低値ならびに左右の乖離が測定されました。腹診においても胃部と胸脇部が固く触れる所見で、刺さない鍼である打鍼により軟化するものの、良導絡の測定結果を示すものとして捉えるができます。
ご家庭で常に温めているところを中心にお灸などで温め、瘀血が疑われところに軽めのカッピングをかけるなどの非侵襲的なアプローチを行い、施術後に再度、測定を行いました。
これにより、施術前の値が落ち着きデータの左右差の改善も認められ、セルフケアにおける腎への温めの効果も肯定的にとらえることができ、大変喜んでおられました。
いろいろな検査機器はありますが、こうしたセルフケアをサポートする役割もとても大切なものです。当然こうした電気的な変化は病態把握にとっても重要な情報ですが、日々の治療やセルフケアの再評価としても、見直す良い機会にもなりました。
なお、具体的なケースに関しては、年齢性別など複数のエピソードを融合させた典型例ですので、特定の個人のエピソードを示すものではないことをお断りさせていただきます。
先日、60代女性の血液疾患の方を診させていただきました。
当院の受診歴は2年ほどで、大学病院での診療を受けながらの統合医療併用を希望されて来院されました。化学療法と併用する形で、栄養補充のサプリメントと漢方処方に加えて、体調管理を目的とした鍼灸治療を行っていました。
化学療法の進展や、健康状態の変化に伴い、様々なアプローチを行ってきましたが、最近は、白血球、血小板の大幅な低下を伴う汎血球減少により、鍼灸などの侵襲的な治療が行えずにいました。ご自分でも何か健康に良いことを、ということで、食べ物などの工夫に加え、腰腹を中心とした身体の温めを丁寧に行っておりました。
そうした中でも、化学療法との併用、並びに原疾患による体調の変動が激しく、お自分で行っているセルフケアの方法に不安を抱えるようになってきました。当院でも非侵襲的な治療を中心に行っていたので、何か、現状を肯定する方法はないものかと思い、久しぶりに良導絡を奥から引っ張り出してきました。治療法としても有効ですが、経絡(良導絡)の様子を知るには簡便で、とても良い方法です。
ファッシアの研究や勉強をするようになって、さらにこの良導絡の意味するところが明確になっていたので、理論的に再評価していたところでもありました。(まあ厳密にファッシアということであれば他にもっと良い計測方法はあるのでしょうが、昭和の定番「良導絡」はやはり不滅です)
計測すると肝経(F2) 胃経(F6)の高値と、腎経の低値ならびに左右の乖離が測定されました。腹診においても胃部と胸脇部が固く触れる所見で、刺さない鍼である打鍼により軟化するものの、良導絡の測定結果を示すものとして捉えるができます。
ご家庭で常に温めているところを中心にお灸などで温め、瘀血が疑われところに軽めのカッピングをかけるなどの非侵襲的なアプローチを行い、施術後に再度、測定を行いました。
これにより、施術前の値が落ち着きデータの左右差の改善も認められ、セルフケアにおける腎への温めの効果も肯定的にとらえることができ、大変喜んでおられました。
いろいろな検査機器はありますが、こうしたセルフケアをサポートする役割もとても大切なものです。当然こうした電気的な変化は病態把握にとっても重要な情報ですが、日々の治療やセルフケアの再評価としても、見直す良い機会にもなりました。
tougouiryo at 2020年08月24日05:00|この記事のURL│Comments(0)