インテグラルライフのススメ

プラグマティズムと「できねば無意味」

 最近の気づきに関してのメモですので、関心ない方はスルーを。

 まずはプラグマティズムについて。哲学の大学院に行っていたころ、よくこのプラグマティズムについて「そうした浅はかな西洋思想とは東洋思想とは違う」といっていた研究者がいらっしゃったのですが、巷間言われるように、成功すれば正義、というようなきわめてアメリカ的思想と考えればそうなのですが、実際にこの思想に触れると、そうした通俗的な印象とはまた異なった印象を持つものです。

 私の尊敬するブロガーの意見でも、ことこのプラグマティズムに関しては、結果重視の浅はかな思想、こうした考えにより科学がおかしな方向に進んだという認識があるようです。特にデューイが批判にさらされるようです。確かに、プラグマティズム自体がその起源が2つあり、微妙に内容が異なることがこうした混乱に拍車をかけているように思います。(私自身は旗色は悪いのですが、ジェイムズのプラグマティズムを支持しています)
 しかし甲野善紀先生のいう「出来ねば無意味」なども、その厳しさも含めて、やはりプラグマティズム的といってよいですし、結果を考慮に入れない思想は、その理論があらぬ方向に進展してしまうというのもまた事実です。
 こうした誤作動を防ぐ意味でも、やはり現実を受け入れる「プラグマティズム」が必須になってくるように思います。

 では、浅はかなアメリカ的もしくはIT社長の成功哲学的な論法に陥ることなく、どのようにこの思想を扱っていけばよいのでしょうか。
 そこで必要になるのが、ケン・ウィルバーの4象限(もしくは8領域)の考え方です。これ自体、彼のインテグラルなスピリチュアリティの思想展開に多用されるので、当たり前といえば当たり前なのですが、この多元主義的なベースを導入することで、悪しきプラグマティズムへのある種の誤解が却下できると考えます。(かつて京大の藤井教授がプラグマティズム理解にはモラルがある種の必要だということを著作で述べておられましたが、その一般系として4象限は役立つと考えます)

 悪しき結果論的説明に陥ることなく、現実を受け入れるというある種の柔軟性が求められる一面がプラグマティズムにはあると思います。そして、その柔軟性(ある種の曖昧さ)が、認識に大きな可能性を与えるようにも思います。
 この辺りは天外伺朗のいう「無分別知」や、郡司ペギオ幸夫のいう自由意志・決定論・局在性のトリレンマなどとも関連してくると思うのですがそれはまた後日。

tougouiryo at 2020年11月12日08:33|この記事のURLComments(0)

ケン・ウィルバーの新訳書

 だんだんと涼しくなってきました。強烈な暑さを感じることがなくなった分、少し、身体を動かしやすくなったように感じます。身体だけでなく、精神的にもいろいろなワークに取り組みやすい季節到来、といったところでしょうか。
 
 こうした時期におススメの書籍です。以前、「実践インテグラルライフ」として出版されていたケン・ウィルバーのインテグラル理論の文字通りの実践書が、やっと、新訳が出ました。私は、かなりの高値で古本をアマゾンで購入していたのですが、これで値段も下がり、内容も読みやすいものとなったので、おススメします。↓ ↓ ↓ 

INTEGRAL LIFE PRACTICE 私たちの可能性を最大限に引き出す自己成長のメタ・モデル
マーコ・モレリ
日本能率協会マネジメントセンター
2020-08-29




 この本は、特にウィルバーのインテグラル理論についての専門的に詳しいことが分からなくても、この本の内容を追うだけで、具体的なワークに取り組むことが可能な内容だと思います。
 当然、理論の理解があればよりよいでしょうが、まずはやりやすいところから実践することで、次第にインテグラル理論になじんでいくという面もあるように思います。
 我々の考えとの根本的な共通点としての多元性が、ここでいう「インテグラル」であるということを実感できる具体的方法論が、いろいろと書かれているわけです。

 この実践書の特徴はインテグラルなワークを「ボディ」「マインド」「スピリット」そして「シャドー」の四つに分けて実践法を述べているところです。
 当然、相互の関連は強いのですが、具体的な内容の盛りだくさんさからすると「ボディ」「マインド」です。呼吸法・気功的な動きから、ウィルバーの四象限の考え方がメインになるといえそうです。スピリットに関しても、インテグラル理論による複眼的なスピリチュアリティの実践法がしめされていますので、内容理解すればついて行けそうです。ただしシャドーに関しては、もう少し他の書籍などでの追加情報があるとベターなのではないでしょうか。特に、日本人になじみがある形でシャドーの考えを展開している河合隼雄先生の書籍などは参考になると思います。慣れてくると、日常の不快な出来事やおかしな夢を見て起きた朝などに、洞察が深まるように思います。

影の現象学 (講談社学術文庫)
河合 隼雄
講談社
1987-12-10









 とりあえず、ボディからでも読み返し(新訳はやはり読みやすいですね)、グロス・サトル・コーザルを意識しながら、なまった身体を動かしてみたいと思います。
 このブログでも、今後、定期的にワークについても書いていきたいと思います。(お城コラムの九州・沖縄編が落ち着いたので)
 

tougouiryo at 2020年09月18日08:32|この記事のURLComments(0)